僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~ 作:魔女っ子アルト姫
「どけぇっ邪魔ぁ!!」
酷く長い瞳で辺りを睨みつけるようにしながらその手に持った短刀を握りしめながらそれを力任せに振り回している、がその延長線上には赤い稲妻のようなエネルギーのような物が飛んでおり、それらがそこいらじゅうの物を片っ端から切り裂いていた。ビルを切り裂き、地面を引き裂く、自動車を割るという圧倒的な切れ味を誇りながらエネルギーが伸びる限り何処までも望む物を斬れると言ったことを強調しながらソウゴたちが追っていたヴィラン、アナザー電王。
「そこまでだヴィラン!!」
「大人しくするんだ!!」
そこへ近くをパトロールしていたヒーロー達が確保の為に駆けてくる、だがそれらの存在を無視するように歩みを止める事は無い。それにプロとしてのプライドを刺激されたのか二人のプロヒーローはアナザー電王へと向かって攻撃を開始してしまう。真っ向勝負を得意とするヒーロー―――だがその拳と蹴りは確かにアナザー電王の背中へと炸裂するのだが、それは歩みを止めるだけで全く身動ぎ一つしなかった。
「ば、馬鹿!?」
「手応えはあるのになんで……!?」
「ぁ"ぁ"ぁ"……?」
その攻撃に苛立ちを更に募らせたのか荒々しさに拍車をかけたのような唸り声を上げるアナザー電王、そしてチンピラのように鎌首をもたげながらゆっくりと振り返った。それが纏う威圧感に二人は飲まれ掛けてしまうが必死に耐えて真正面からそれを見据えるのだが、それが怒りを増長させる。
「邪魔を、するなぁああああああ!!!」
不気味な雄叫びにも似た声が響き渡ると握りしめていた短刀が禍々しい光を放っていた、すると刀身が一気に伸びて行き大太刀の程の物へと変化するとそれが一気に飛び出していく。
「ゼリャアアアアアアアアアアアア!!!!!」
混濁した声と共に振るわれてしまう邪悪な一太刀は二人のヒーローを容易く天高く打ち上げてしまう、が直後にそのヒーロー達の身体が変化していく。まるで一瞬で何億年という月日が経過したかのように身体が劣化するように崩壊していき、まるで砂のようになり風にさらわれてそのまま消失してしまったのである。それを見たアナザー電王は愉快そうに声を上げると次なる獲物を探すかのように練り歩いていく―――そしてその僅かな後に、自らを痛めつけてくれたソウゴ達を遭遇する。
「見つけたっ!!」
「アナザー電王でいいのかしら……」
「奴に残っているのは既にその力のみ、ならばそういうのが正しいだろう」
「呼び名などどうでもいい、倒す相手であることに変わりはない」
その場へと到達したソウゴ達を見て歪み切った笑い声を上げながら歓喜する、矢張りあれらは自分を追いかけてきた。何れ消えるであろう
「役者が揃ったか、待っていたジオウ」
「今度こそ決着をつける、確実に!!」
「ここまで追って貰えると嬉しいねぇ……なら場所を変えるとしよう、此処は邪魔が多い―――ああそうだ、お前も付き合え」
指が鳴らされる、するとアナザー電王の背後から銀色の幕のようなものが出現した。それは徐々に速度を増していきながらアナザー電王の背後から一気に迫ってくる、そしてそれは生みだした者ごとソウゴと龍牙を飲み込むとその場からその場から姿を完全に消え去ってしまう。
「龍牙!?おい何処に行った?!」
「今のはディエンドやディケイドの力……まさかまだ残っていたというのか!?」
「こ、此処は……!?」
銀のカーテンのような物が自分達を包んだ瞬間、思わず目を閉じてしまった龍牙が漸く瞳を開くのだがそこにあった光景は全く別の物だった。何処かの山中の開けた場所、街中とは全く別の場所に転移していた。
「何だ、あいつ転移系の個性でもあるのか!?」
「今のって確か、俺やツクヨミを未来に送ったり別の場所に送ったりするディケイドの力……!!」
「ディケイドって確か世界の破壊者っていうライダーの……じゃあその力が残っていたという事か……」
「いや―――今ので最後のカーテンだ」
その言葉の力、未だ展開されて続けていた銀の垂れ幕に一気に罅が入っていく。その亀裂は全体へと広がっていきやがてそれは亀裂によって自重に耐えきれなくなったかのように崩壊し砕け散ってしまった。同時にアナザー電王は何処か苦しそうにすると身体から何かの力が抜けたように光が漏れた。それはまるで引き寄せられるかのようにソウゴへと向かって行き、彼のウォッチの一つへと吸い込まれていく。
「今のってもしかしてディケイドの力……確かこれには力の半分しかって話だし……あいつから抜けた力がウォッチに吸い寄せられたって事なの……?」
「だがこれは悪い展開じゃないぞソウゴ、さっきのカーテンで一気に逃げられる心配がない」
そう語るとアナザー電王はケタケタと気味の悪い笑いを上げながらまるで挑発するかのような手の動きをさせた後に短刀を構えた。掛かってこいと言いたげな姿に二人はやるしかないな、互いにドライバーを腰へと巻き付けた。もうここまで来たら戦うしかない、その選択肢しか存在していない。
「ソウゴ、俺は多分サポート位しか出来ないだろうからメインは頼んでもいいか」
「勿論。アナザー電王の倒し方は完璧だからね、俺に任せてよ!!」
「頼もしい限りだ」
ソウゴは己のドライバー、ジクウドライバーを装着すると一つの時計を取り出した。唯の時計ではない、彼にとってそれがライダーの証明であり彼が時を統べる時の王者と呼ばれる所以でもある。
それをドライバーへとセットする。その瞬間、彼の周囲に変化が起きる。背後に巨大な時計のようなもの出現し時を刻んでいく、過去から今へ、今から未来へと刻んでいく時計。大きな時間の流れを示しながら、隣にて黒龍の戦士が黒炎のサークルに包まれるのをまるで祝福するかのように音を立てている。そして二人の戦士は互いに叫んだ。
「「変身!!!」」
回る時間の流れのようなエネルギーに包まれるソウゴ、その流れの果てに現れるのは時空を超え、過去と未来をしろしめす時の王者。そして我こそはと名乗りを上げるように刻まれた長い歴史を受け継いだ証たるそれ、ライダーという名であり称号であり証である。
「行くよ龍牙、俺達なら行ける気がする!!!」
「ああ、行こうぜソウゴ!!」