僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~ 作:魔女っ子アルト姫
「んじゃ始めるかぁ……」
「よ、宜しくお願いします!!」
「緊張すんなよ、俺は師匠みたいじゃないっつの」
あと少しで冬休みも終わってしまうという所で龍牙は緑谷と共に修行の為にギャングオルカ所有地の一角を借りていた。当然、私有地なので個性発動も当然のように許可されているので問題も無い。そして幾ら暴れても構わないという許可も貰っている、流石に山なので山火事が起きたら自分で消せとは言われたがその辺りも対処出来るので無問題。
「それで緑谷、詰まる所修行って言うのは"ワン・フォー・オール"の個性、先代方の個性のマスターって事だろ」
「うん、オールマイトとかカッちゃんとも話したんだけど次にものにする為の個性を定めたんだ」
「その時に俺も参加したかったなぁ……」
とワザとらしく愚痴ってみると緑谷は大慌てでフォローする、丁度その時の話をしていた時は年末の鍋パーティの前だったらしく自分は仕込みに入ってしまっていた為に誘えなかったとの事。だったらせめてその後に話位をしてくれてもいいのではないかと思いながらも取り敢えずそれは置いておく事にする。
「それで修得する個性は決まってるんだろ」
「うん、今一瞬だけ使えるように"黒鞭"は第五代継承者の万縄 大五郎さんの個性。それでオールマイトに次にマスターすべきだと言われたのが……オールマイトのお師匠、七代継承者―――志村 菜奈さんの個性"浮遊"」
「浮遊……」
一瞬、それを聞いて感じた思いは平和の象徴の師匠はシンプルな個性だったのかという感想だった。あの超パワーの主として一代を生き続け、最期を弟子に託した偉大な師。それを考えれば特に何も言う事は無いのだが……それは同時にオール・フォー・ワンの力も関係しているのだと思わせる言葉だった。
オール・フォー・ワン。巨悪の根源、自らの運命を大きく捻じ曲げた元凶、気に入るか強い個性を手あたり次第に我が者としていた奴からすれば"浮遊"という個性は弱い個性にしか過ぎないという事なのだろう。それは"黒鞭"にも言える事であり、それこそ"ワン・フォー・オール"が託され、託し続けたバトンなのかもしれない。そしてそれを考えてみるとその個性だとしてもシンプルかつ強力なものだと思わせる。
「カッちゃん曰く、黒鞭もそうだけどどれもこれも強い個性じゃないって言ってたけど僕はそうとは思えないんだ。オールマイトも強いとは言い切れないとは言ってたけど」
「それはある意味緑谷らしい言葉だ、それは既に個性を託されてそれをハッキリ認識しているからだ。超パワーの補助としてその個性があると考えれたらとんでもない力になるが、それ単体とは弱く見えるのはある種道理だ。"浮遊"もハッキリ言えば空中移動が自在なだけで当人の戦闘力に寄与しない、どう生かすかって個性になる」
自分達で言えば葉隠の透明の個性が当てはまるだろう。あれに超パワーがあればとんでもない事になるが、透明オンリーでは一気にやれる事は狭まり真っ向勝負なんて以ての外。当人がその個性をどう生かして戦闘に繋げていくかがカギになる。
「そして―――それを仮にマスターしたらお前は一気に強くなって、多分俺じゃ勝てなくなるな」
「えええっ!!?そ、そこまで!?」
と発言する龍牙に緑谷は驚天動地!!と顔に文字が浮かび上がる程に驚いてしまった、龍牙の強さも手合わせしている身としては理解しているのでそれが勝てなくなる程に自分が強くなんて想像もつかない。
「まあ絶対的ではないかもしれないけど……俺の勝率はそうだな……多く見積もって2~3割か?」
「そ、そんなに少なくなっちゃうの!?」
「いやだってお前さ、空中で自由自在に移動できることに関するアドバンテージ考えた事ないの。しかも翼を潰せば飛べなくなる類じゃないから余計に厄介なんだぞ」
"浮遊"という個性の活用法は考えるだけでもかなり幅が広い。攻撃された時に咄嗟に後ろに浮いて引く事でダメージの軽減と距離取り、高速移動による回避、距離を詰める、加速、偵察などなど……それらに超パワーがプラスされたら手が付けられないほどの強さを得る事になる。
「想像してみろ、空を自由に駆け抜けるオールマイト。それに勝てると思うか」
「……勝てる気がしない……」
「だろ、俺って飛べるって言ってもあれはブラッカーの背中に乗って飛んでるだけで能動的に飛べるとは訳が違う。俺自身が出来るのは跳ぶのが精々だ、後は炎を推進力にして加速してるだけ」
これが敵として考えたら相当に厄介な相手になる、飛行個性持ち相手の訓練は積んでいるがその場合は個性発動部位を狙って攻撃して飛行不能にするか罠を巡らせてそこに誘導する。だが緑谷の場合はその罠すら粉砕する超パワーとあらゆる物を掴み取る"黒鞭"があるのでそれらが適応できないのである。
「そして修行をするに当たってだけど……兎に角緑谷には空中戦をやって貰いつつそこで明確な空を飛ぶってイメージを持つ事を目標にしよう。意識しなくても歩けるのと同じように空中戦を出来るようにならなきゃ多分、浮遊なんて以ての外だな。師匠なら絶対にそう言う」
「そ、そうか龍牙君今までギャングオルカの特訓で色々仕込まれてるもんね!!僕にもオルカ流の奴をお願い!!」
「いや多分初見だとお前死ぬぞ」
「死ぬ!?」
「戦兎兄さん今日はミルコ姉さんと一緒だって言ってたもんなぁ……まあ俺流でマイルド形式で行こう。まず―――空中でドラグブラッカーと戦って貰うからな」
「う、うん!!」
そんな不穏な幕開けとなった龍牙と緑谷の修行だが、龍牙としてもいきなりギャングオルカ流の物をやる気は毛頭ない。流石にあれを未経験者にやらせたら持たない事ぐらいは予想がつく、逆に何故彼自身はその修行に疑問や拒否などを示さないのかが甚だ疑問ではあるのだが……慣れだろうか。
―――あれが黒鏡 龍牙……。その他にも少年が一人、彼は如何します。
―――チャンスを待つ、そして接触する。
―――彼は我らと共に居るべきものだ。