僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~ 作:魔女っ子アルト姫
正しく悪魔のような本性をむき出しにした天使、といった形相だろうか。その姿に怯む事も無く龍牙はそのまま構えを取り続けていた。善魔は翼を畳むようにしながら地へと足を付けると腕を振るう、瞬時にして腕へと影のような刃が纏うと鋭利な爪となって、それを剣のように胸に携えながら一気に突進しながら振るって来る。
「ぐっ!!」
押し込まれるっ必死に踏ん張っているというのにも拘らずに黒龍化した龍牙の怪力を押し込めながらそのまま押し込み続ける。大地を割るかのように脚を力を込めて漸く止まるが押し返す事が全く出来ない事実に顔をしかめながらグリップエンドへと手を伸ばす。
『SPECIAL TUNE!!
「ッッシャアオラァァァアアア!!!!」
片腕が持って行かれそうになるが、渾身の力で対抗しながら黒炎が更に燃え上がりながら金色のエネルギーが螺旋状に織り込まれていくかのように融合していく。それらが反応して一気に膨れ上がっていく力で善魔の攻撃を弾き飛ばす。
「なんと!」
「デェェイヤァァッッ!!!!」
大きく弾かれた事でがら空きになった身体、そこへ向かって一閃。咄嗟に尻尾が間に入って緩衝材のように防御されるがそれすらごと吹き飛ばすような一撃を放つ。膨大なエネルギーの爆発を受けながら後退りながら自らの腕を見て悪魔の爪がボロボロになっている事に感心するような仕草をすると、埃を払うかのように影を払い元の腕に戻した。
「私の惨劇の爪を此処まで砕くとは……ではこれは如何でしょうか、天使の慈悲・抱擁の翼!!」
畳まれていた翼が再度広げられる、そして翼の一本一本から光の矢が放たれてくる。銃弾の嵐にも見えるそれを龍牙が一切回避しない、いや影の中から飛びだしたドラグブラッカーが黒炎を纏いながら身体でそれらを砕きながら蜷局を巻いて龍牙を守った。それをまるで予期していたかのように、知っていたかのような、白々しくも拍手を送りながら礼をしながら称賛を送る。
「素晴らしい、これ程とは……この悪士 善魔、心より称賛を送らせて頂きます」
「白々しい嘘を吐くな、この程度予想していただろう」
「これはこれは……誠に失礼を致しました、ですが称賛は心よりで御座います」
「こいつっ……」
毒づきながらも龍牙は思わず内心で汗を流していた、こいつの力は尋常なものではない。素直に強いと思ってしまう程の強さ、そしてあの紳士ぶった態度……何処までが本気で本性なのか全く見透かせない不気味さも相まって実力のそこを推し量る事が出来ない。少なくとも―――自分が殺す気で戦わなければ倒す事なんて出来ない相手である事は確実。
「私は20年以上もの間鍛錬をし続けてきました。失礼ながら年季が違います」
「ッ……ああそうかい」
そしてこれだ、自分の心を見透かすような洞察力。経験による洞察もあるだろうがそれ以上に善魔の知性も異常なレベルで優れている事だろう。卓越した頭脳と鍛え続けられた力と経験、それを持ちながら慢心もせずに自分と互角以上に張り合うパワーを発揮する相手……ハイエンド脳無以上に厄介だと言わざるを得ない。
「アンタが強いのは分かった、ならこっからは俺も全力で行かせて貰うまでだ」
「ほうっでは噂に名が高き
「何がだ」
「いえ私は構いませんが……此処で戦っていてはあちらのプロヒーローの二人が放置による悪化で死亡しますよ」
そう言われて思わず心臓を鷲掴みにされたかのような感覚になった。自らの攻撃によって人を殺した、そのような事になりえてしまうという現実が重く重くのしかかってくる、この悪魔は織り込み済み筈―――つまり、それを脅迫の材料にして選択を迫る事が出来る。このまま殺人を覚悟した上で自分と戦うか、交渉を受けるかという事になる……。
「なので一つ提案です、この辺りで今回はお開きに致しましょう」
「―――なんだと?」
「受け入れてくださりますのならば私の異能にて彼らを治療した上で本日の全ては無かった事とさせて頂き、素直に引き上げる事をお約束いたします」
「……」
「受け入れてくださるようで何よりです」
そっとビートクローザーをボトルに戻しながら変身を解除する龍牙を見て笑みを零しながら善魔も戦闘形態を解除しながら、ゆっくりと龍牙によって重傷を負わされたループとスラッガーへと歩み寄ると自らの個性の応用で二人の傷を治癒させていく。単純な攻撃や防御ではなく治療まで行える……相当鍛えこまれている個性に龍牙は改めてその危険を実感させられてしまった。そして、思わず問いかけた。
「何がしたい、あのまま続けていたとしても悪くは無かったと思う。それにお前はきっとそいつらを使って俺を無理やり連れていく事も出来た筈だし取る事もした筈」
戦闘中止の理由を尋ねてしまった、素直に答える訳もないのにと思っていたのに善魔は快く応えた。
「いえいえ、龍牙様には是非とも貴方の意志で来ていただきたいのです。あのまま続けていたとしても私は負けなかったでしょうが相応の重傷でお連れする事も満足に出来ない、加えてこの二人を失うのは些か惜しいですから。そして何より―――貴方が突然姿を消して貴方の師がこの情報を手に入れたとしたら、どれだけ怒り狂う事か。その場合オールマイト以上の脅威になりかねません」
思わず納得してしまう理由だった。事実としてギャングオルカは一時的ではあるが、嘗てオールマイトと激闘を繰り広げたオール・フォー・ワンを圧倒してしまう程。それも龍牙の為にそれだけの力を発揮する、それを踏まえると龍牙を強引に連れていくメリットが薄くなる程のリスクが濃くなると判断したのだろう。そして治癒が終わったのか善魔は尻尾で二人を絡めとって持ち上げると改めて龍牙へと丁寧に深々と頭を下げて言う。
「それでは本日は失礼させて頂きます、次の機会には有意義なお話を出来る事を期待おります」
「絶対ないから二度と来るな」
「フフフッ……いえまた来ますよ、それでは―――」
瞬時に善魔の姿が掻き消えた、気配そのものがなくなって察知が完璧に出来なくなった。益々不気味さを増して行く謎の存在に龍牙は重々しい溜息を吐き出してから素直な感想を零してしまう。
「はぁっ~……しんどっ……」