僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~ 作:魔女っ子アルト姫
悪士 善魔との戦闘を終えて漸く帰宅の途へと着く事が出来た龍牙は忘れかけていた師匠への連絡を行った。遅れた事に関して僅かに心配されたが特に何も話さずにそのまま終えてしまった。話さなくていいのかという不安もあったがプロヒーローもいる事を考えると下手に師へと話をするよりももっと話した方が良い人物へと電話をかける。
「という事です」
『成程……今ちょっと戦兎にお願いして調べてみたんだけど確かにループとスラッガーが有休を取ってる事が分かったよ。あの所謂マイナーヒーローの部類だけど堅実な実力を持ったヒーローだった……それがなんて……有難う龍牙、これは極めて重要な情報だよ』
「後父さん……」
龍牙が連絡を取った人物は根津だった、確かにプロヒーローとも強い関りを持つが校長という職務もある為に雄英の外へとあまり出ないし会う為にも限定がされる。なので下手に情報が漏れる事も無いだろうと判断した末の選択だった。ギャングオルカからは自分から釈明するから気にしないでと言われつつも一番気になる事を尋ねた。
『悪士 善魔については全くだね……普通の高校を出て普通の大学を出て、今はヒーローとは無関係の事業を幾つか運営している実業家って事しか分からなかったよ』
「そうですか……そいつハッキリ言ってやばいです、そいつはハイエンド脳無よりも強いです。シンプルな強さだけじゃなくて頭が異様に回って経験豊富です」
『成程、オール・フォー・ワンに近いタイプか……それは厄介だね、分かったそれについても僕の方で何とか調べてみる事にするよ。龍牙はもう寮に戻ってちゃんと休むんだよ』
そう言われて通話は切れて龍牙は携帯を仕舞いこみながら寮へと入った。
「あっ龍牙君!凄いよこのガシャット達、今皆にも見て貰ってるんだよ!!」
寮へと足を踏み入れるとそこではスタッグフォンとバットショットから見る事が出来た自分の戦闘記録にやや興奮しつつも感想を物凄い勢いで述べていく、だが龍牙はそれを素通りしてしまった。
「あれ、龍牙君……?」
「わりぃ……ちょっと、考え事……」
そのまま去ってしまう龍牙を見送ってしまった緑谷は目を白黒させてしまった、あんな感じに素っ気ない龍牙は初めてみたからだった。入学してから初めて見せた姿に驚きを隠せなかった、考えられるとしたら残っていた際に言っていたオルカに顔を出した時に何か言われたのだろうか。兎に角自分は自分の出来る事をしようと部屋に戻る。そして龍牙はそのまま自らの部屋へと入るとベットに腰掛けながら膝に腕を乗せながら思わず、思考した。
「―――」
思考する、静けさの中で考え続ける。思考した、その時の言葉を
―――貴方はもっと別の物を望んでいる。貴方は心から欲している物を得ていないのですよ、虚無の中で生きたからこそ無意識なうちに封じ込めてしまった願い、無自覚な末に膨れ上がったそれを貴方を得られていない。
あれらの言葉を受けた時、不思議と心が安らいだ。不思議と、安心した。不思議と、惹かれた。意味が分からない、如何してそのような物を感じてしまったのか分からないまま時間が流れ続けていくのである。不快な事この上なかった。単純にあれは自分を惑わす為の虚言だったのか、いや、あれほどに頭が回る存在ならば虚言ならばもっと虚言らしくありながらも自分の核心を突く物へと誘導していく事だろう。何せ自分の旧姓すら知っているのだから……例えば―――鏡夫婦の絶望に塗れた表情とか。
「いや、俺が無意識的に封じ込めたものではないな……少なからず、俺はあの二人の事を想い続けていた」
方向性が如何であれ、想っていたことは事実なのだ。善魔が言う、"無意識なうちに封じ込めてしまった願い、無自覚な末に膨れ上がったそれ"というものには値しないだろう。だろう。考えれば考える程にドツボに嵌ってしまいそうになる、敵の言葉に一喜一憂するな、師にも言われたのに無駄に引きずってしまっている自分がまだまだ青く未熟である事を強く自覚すると思考をリセットしてもう考えない事にする。
「はぁっ……しんど」
―――それじゃあ、私が癒してあげるね。はいフッ~……。
唐突なミミピンポイントの生暖かい風と甘い声に振り向いてみる、するとそこにはにこやかな笑みを作っている愛しの彼女がそこにいた。
「は、葉隠さん!?」
「うん。龍牙君の葉隠ちゃんです♪」
ウィンクに頬に指を添えるような輝く笑みに胸が高鳴る。可愛すぎるだろう、声も含めて。
「というかまたなんで……」
「えへへっ……来ちゃった♪」
「それじゃあ誤魔化されません、ちゃんと言いなさい」
「えっ~ぶぅ~ノリ悪いよ龍牙君」
以前も自分と共に部屋に入って来た事もあったが、今回もそれ同じだったらしい。だけどそれを行わなくても彼女がノックすれば自分は迷う事も無く扉を開けて迎え入れた事だろう。態々彼女がこっそりと部屋に入って来た事自体が気になるのである。
「えへへっ~……大した理由は無いよ、ちょっと龍牙君をびっくりさせたいなぁと思っただけだよ」
「ホントォ?」
「ホントだよ~」
と笑っている彼女に龍牙はそれ以上問い詰める気も無かったが一応聞きかしてみる。ホントだよ~と返す彼女のそれは本心なのだろう、本当の事なのだろう―――それだけなのに。
「ピャッ!?」
唐突にそれが酷く、狂おしい程に眩しくて愛おしくなって彼女を抱き寄せてしまった。強く抱き寄せて彼女の身体が自分と繋がってしまうように密接に、望むがままに抱き寄せる。咄嗟に事に目を白黒させつつ、慌てながらも徐々にそれを受け入れたのか彼女もそっと、腕を回して精一杯抱き付いた。龍牙に比べたら頼り無い力なのに、それは誰の手にも解けない程に硬い結び目に見える。
「―――本当に可愛いな葉隠さんは……君が俺の君でよかった……」
「急に言われると照れちゃうよ……でも私はずっと貴方の私だよ、貴方だけの葉隠 透だよ。ずっとずっと一緒にいるよ……喧嘩しても一緒にいるよ、喧嘩してもっともっと仲良くなって一緒になって、それで一緒にいて……」
「うん、そうだね……我儘、言っていいかな」
「良いよ―――」
口づけを交わす、互いの唇が重なってより密接に感じる体温。僅かに開けられた瞳の窓から見える互いの顔を見つめ合い、視線が蕩けていくと自然に瞳を閉じながら一度離れてみると僅かに透明な橋が作られ、それは畳まれてまた一つになる。ただひたすらに互いを感じ合うような口づけ、幼くも深くて甘くて柔らかくて暖かい恋に二人は二人は身を沈め続けた。
「龍牙君、今日は此処で寝ても良い……?ずっと、ずっと手を繋いでいたいの……」
「良いよ……一緒にいよっ……」
「矢張り龍牙さんにはアプローチの仕方を変えますか、そうですね例えば―――フフフッ愛、なんて乙ですね。いけませんねぇ―――彼の恋路を応援しつつも私自身が壊す事を望むとは……フフフッ天使と悪魔も大変ですねぇ」
―――シテないよ。単純に一緒にベットに入って、寝ただけ。
でも、十分葉隠さんカワイイヤッター!!!