僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~ 作:魔女っ子アルト姫
不安が過る見合いも無事の終わった龍牙はそのまま帰宅の途へと就いていた。結局の所、見合いはあれで良いのかと思いつつも二人からすれば満足のいく結果であったらしいのでそれで収めておく事にする……しかしそれでも不安を抱える結果で終わりを迎える事になった。
「またあいつの影か……」
以前自分を勧誘してきた存在である悪士 善魔、あれはヴィラン連合なのかそれともあれらとは別の勢力によるものなのかは全く判断が付かない。それでも警戒する事に越した事などは無い筈だが……自分の中でよくわからないしこりのようなものが生まれているような気がしてならないのである。
「俺も気を付けておいた方が良いって事か」
―――善魔さんは私の考えは正しいと言ってくださった方なのですが……如何にも過激にも取れる事言ってまして。
―――個性はもっと自由であるべきですって、やれやれ遅い中二病かしらね。
―――……それをあなたが言いますか。
唯のそれなら可愛らしいで済むだろうが、生憎世の中には個性に対して過激な思想を持つ物は多い。自分のような異形型は異物である、排除すべしと叫ぶ者も未だに多い。愚かな考えだと自分も思うが、その傍らで思いたければ勝手に思っていればいいとさえ思う。その傍らで世界は自分達を受け入れている、世界の流れに逆らっているのはお前達だと思う。
「気分が悪いな」
理解を示す自分がいる、同調する流れを感じている、そんな自分に吐き気がする、考えもしなかった筈の答えを見据えて多少なりとも理解を示しているのは自分が成長している証だと思う。成長する為に反対の意見にも理解を示しながらそれに準じながら、意見を取り入れた思考が必要だと根津に言われた。
「―――ほろっほろになるまで煮込んだビーフシチューでも作るか、んでグラタンもセットにしよう」
気分を変える為にそんな言葉を口にする、今日の授業には完全に間に合わないだろうし明日は休みだ。だったら腕によりをかけた料理を作って、それを満腹になるまで食べてそれで爆睡するのも悪くないだろう。そこに
「白鳥か」
相手は妹からだった、久しぶりだと思いながら通話を起動させてみる。
「もしもし」
『お兄ちゃん今大丈夫、本当は雄英で話そうと思ったんだけど……何か今日は出てるって話を聞いたから』
「別にインターンしてる訳じゃない、校長の顔を立てる為の見合いだ。どうせお前にも来てるんだろ」
『アハハハッ……まぁね』
この辺りは一緒から思いつつ自販機でコーヒーを購入する、元々鏡の家は普通に名家。自分は既にそこから縁を切って黒鏡という全く別のせいを名乗っている。だが白鳥自身には名家という関係上それらは確実にやってくる。故に苦労自体は共有しているに等しい、偶に上手く断る為のコツを聞く為のメールも飛んできたりもする。最悪の場合は自分を引き合いに出しても良いと言っているが、今度の白鳥の断り文句は
「私の好みは黒鏡 龍牙さんに勝てるぐらい強い人ですね♪」
と言い出して軽く言った事を後悔している。堂々と自分を引き合いに使うなと叫びたい、これで白鳥を賭けて俺と戦え!!なんて漫画のようなシチュエーションになったらどうする気なのだろうか、既に葉隠という彼女がいる上に白鳥は血の繋がりがある妹。最悪の場合白鳥の相手がお前だと言われかねない。
『実はお父さんとお母さん、本家から呼び出し受けたらしいの』
「呼び出し……本家?」
『あっそっか、お兄ちゃんは行った事ないんだっけ御爺ちゃんのウチ』
祖父母、自分が酷く幼い頃……個性云々が出ない前に数回あった事があるような気がするが酷く希薄。朧げ以上に記憶がないのである。実際会った事があるのは本家の人間であって実際の祖父母ではない、なので龍牙は本当に祖父母と会った事が無い。
『鏡家っていうのも昔に本家から枝分けした家の一つなんだって、その本家は政府直轄の特別な家で中々行けなくて私もまだ6回位しか行った事ないの』
「それでその本家が如何してあれを呼び出すんだよ」
『あ~……それがね、お父さん達お兄ちゃんの事を巧妙に本家に隠してたらしくてね……最近本家の人たちがその情報を手にしたんだって。それで今の当主の御爺ちゃんが激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリームなんだって』
「古いぞ、どんだけ俺を捨てた事を隠してたんだよ」
根津をして徹底的に隠蔽を行っていたと言っていた事があったが、どれだけ自分との関係性が漏れる事を恐れたのだろうか……そして今になってそれがバレて大慌てという所だろうか。いい気味である。
「それで?」
『御爺ちゃんは怒ってるけどそれ以上に気付けなくてなんて情けないんだって嘆いてる、だから謝りたいんだと思うよ』
「そう言われてもなぁ……まあ確かにお爺ちゃんがどんな人なのか興味が無い訳じゃないが」
『後―――これ内緒だけどさ、最近お父さん達なんか様子が妙だからそれを問い質す意味もあると思う』
それを聞いて僅かに眉が上がる。
『何か妙~に個性について語るっていうか……本を熱心に読んでてお兄ちゃんと仲直り云々って言ってたんだよねこの前家に帰った時』
「……その本は」
『なんか最近またブームみたいになってる本で名前は確か―――異能解放戦線だったかな』
緩やかに胎動する予感、そして繋がりかけていく欠片。そしてそれは―――新たな嵐を呼ぶ。