僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~ 作:魔女っ子アルト姫
「―――こいつだ」
異能解放戦線。龍牙も読んだ事がある本、根津がストックしている蔵書の中の一つとして存在していた本。ヴィランの思想や心理を学ぶ対敵学の一つとして納められていた本。そこにあったのはヴィラン、というよりも解放を願う正義感に準じたもの近い内容。
曰く、個性とは人間に与えられた行使する事を許された権利である。故にその制限を行うのは許されざることである、故に―――個性、異能は解放されるべきものである。
要約するのであれば個性は人間が歩いたり物を見たりするのと同じ機能であり、それらへの制限を行うのは間違っているという事が書かれてあった。当時の龍牙はそれに対する共感は酷く希薄だった、何故ならば彼は個性によって親に捨てられたから個性を開放するべきだと言われても何故開放するのか理解出来なかった。何方かといったら―――無個性に慣れると言われた方が魅力的に映った事だろう。
「まさかホークスさんから布教と称して貰う事になるとは思わなかったけどな……」
自室の本棚に収められているそれを手に取りながら改めて読んでみる事にする、これは緑谷がインターン先であるエンデヴァーの事務所に赴いた際に偶然出会ったホークスから是非お勧めだから他にと言われた布教用の一冊、自己責任で完結する社会で時代に合っているとの事。
「解放か……」
その言葉が
「"限られた者のみに自由を与えれば与えられなかった者に行く"……今を予見してるとも言える、これをあれらが読む……感化されているのか?」
改めて読み返してみるとこれが今ブームに乗っているのも分からなくもない気がする、今の個性社会の問題点を指摘している。そして本当の意味での自由を求める人々がこれを求めて傾倒していくのも理解出来るが完全な理解は出来ない。分からなくも無いがそれを理解する程ではない。
「白鳥、俺だ。本家への呼び出し―――俺が行く事は可能か」
『えっお兄ちゃん行く気あるの!?そりゃまあ、行けるとは思うけど……』
「多少なりとも行く気はある、気になる事もある。」
結果的に見れば自分が源流になっているのかもしれない、それは誤りであるかもしれないが原因の一つである事は間違いない。自分がある種の特異点となって何かを狂わせているのも確か、だったら自分がすべきことは一つしかないかもしれない。
『お爺ちゃんがどんな人なのかとか?』
「それもあるが……どうにも引っかかる事が多くてな」
『ふぅ~ん……それじゃあ呼び出しの日に一緒に行こうか、お父さん達と一緒に行く気ないというか私は行かないつもりだったんだけどね』
「別にいいぞ気を遣わなくて」
『まあまあ堅い事言わずに兄妹何だから』
と電話の向こうでニヤついている白鳥の顔が思い浮かぶ、彼女としては兄との時間を共有出来るならば喜んで馳せ参じる。なんだかんだでお兄ちゃん大好きっ子な白鳥にとって兄に酷い事をした両親よりも龍牙は優先順位が高い、それはそれで如何かと思うが……。
『それじゃあそれについては私の方で本家にも伝えておくよ、多分お爺ちゃんも喜ぶと思う』
「俺としてはどんな人なのかの予想もつかないから何とも言えないな……まあそういう訳で頼む」
『ハイハ~イ、それじゃあこのまま少し待ってね。軽く連絡してみるから』
そう言って電話は切られて携帯を放り投げだしながら様々な思いを巡らせながら解放戦線の本を見つめながら、本棚へと戻していく。こういった物が流行るのもオール・フォー・ワンが倒されたことに起因するのだろう。生憎自分にはよさが分からないのだが……。そう思っていると再度白鳥からの連絡が来る。
『お待たせ~全然OKだって、寧ろお兄ちゃんにも話を聞きたいから来てくれるのはありがたいって』
「そうか、それで結局呼び出しって何が起こるんだ?」
『何とも言えないけど……単純なお説教ってだけではないと思うよ、ハッキリ言ってやってる事自体やばいからね。最悪……ヒーロー稼業を引退させられるかもしれないって焦ってるみたい』
鏡家と本家の関連性については龍牙はいまいち把握しきれていないがそれ程までの力の差があるという事なのだろう。あの両親がそこまで恐れるというのも、力の差なのか権力の差なのか分からないが。
「本家って、何をやってるところなんだ?」
『私も詳しく知ってる訳じゃないけど……ヒーロー公安委員会から直接の依頼を受けたり、超危険なヴィラン相手に出動する実働部隊って聞いたことある』
「実働部隊……なんかやばい響きがするの俺だけか」
『お爺ちゃん見たらその予感が正解だって分かるよ、最初に言っておくけど……私的にギャングオルカさんよりずっとコワイ』
「師匠より怖いってどんな魑魅魍魎だよ」
そんなやり取りもありながら龍牙の本家への参上が決定づけられた。両親が纏う謎と勢いを増して行く謎の勢力、それらに関連性があるとしたら……今回の一件は単純な物で済む事はあり得ないだろう。