僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~ 作:魔女っ子アルト姫
「お兄ちゃんこっちこっち~」
「悪い、待たせたな」
その日がやって来た。ついにやって来た本家へと向かう日、不思議と緊張感と高揚感を感じつつも待ち合わせをしていた白鳥と合流した龍牙、初めての事で中々に緊張している兄の手を引いて電車を乗り継いで新幹線に乗って本家へと向かって行く。本家があるのは長野県でそれなりに時間がかかる。
「一応手土産持って来たが……」
「そんなのいらないと思うよ、でも甘いのにしたのは正解だと思うよ。お爺ちゃんは静かにお茶を啜りながら風とかの音とかを楽しむのが好きだったし。何なら子供の私が膝で昼寝してても許してくれたぐらいだよ?」
「そりゃ小さい子供の頃だからだろ……」
溜息混じりに隣の座席に座っている白鳥にため息を漏らす、何故か楽しそうにしながらお茶を飲んでいる。自分からすれば緊張の一時が続くのだが妹からすれば普通に祖父の家に遊びに行くような感覚が強いという事なのだろうか。生憎自分はそんな感覚なんて味わった事なんてない、分かるとしたら師匠に連れられた行く修行場に行くまでの感覚だろうか。
「まあまあだとしても大丈夫でしょ、妙な事なんて起きないって」
「だと良いけどな」
「―――んでこの有様か……ったく白鳥、お前フラグメイカーか」
「アハハハッ……ごめんなさい……」
到着直後に駅前広場にてヴィランによる騒ぎが発生。それはMt.レディのような巨大化の個性を持っているヴィランが二人とそれの周りを飛び回る飛行個性持ちによるチーム犯罪だった、それに地元のプロヒーロー達もお手上げに近いような状況……だったのだがそこに対巨大ヴィラン訓練を豊富に積んでいるリュウガが突撃、周囲の飛行ヴィランは白鳥とブラッカーが共に次々に撃墜していった。最終的に巨大ヴィランを二人纏めて地に伏せらせる事に成功した龍牙は喉を潤しながら妹に呆れの視線をやるのであった。
「それにしてもお兄ちゃんよくもまああんなおっきいヴィランに正面突撃出来るね……」
「師匠に比べたら怖くも無いわあんなの、レディさんみたいな凄味も感じない。唯身体がでかい事を利用してただけのヴィランだな」
「いやいやいや……身体がでかい事自体普通に凄い事だから……」
空中に飛び出した龍牙を狙った一撃、それに対するかのようにドラゴン・ストライクを発動させて相手の衝撃を完全に殺しつつ逆に押し戻すなんて普通出来ない。質量絶対正義論という物があると聞いたのだが、それは何処に行ったのだろうか。
「取り敢えず後始末についてとかは現場の警察とかヒーローさんたちが請け負ってくれるそうです」
「そりゃよかった、だけどこりゃ……暫くバスとか動けないだろう」
予定ではここからバスに乗って最寄りの停留所にて本家の人と待ち合わせという事になっていたのだが……ヴィラン達の影響で道路が完全に歪んでしまって通行できない。連絡を入れて遅れる事を伝えなければならないだろう。
「う~ん……凄い時間取られちゃったね……」
「よし、走るか」
「いやいやいやなんでそうなるの!?目的地まで大体15キロあるよ!?」
「何だ近いな」
「近くは無い!!」
力強く否定される龍牙は思わずキョトンとする。15キロなんて重量にしろ距離にしろ小さなものではないのかと素直に思う龍牙。自らの持久力を最大の武器として活かせるように訓練された龍牙にとってマラソンやらは年中行事に等しく毎日やっていた事、15キロなんて近いというのも本気でそう言っている。
「えっ何お前走れないの?みたいな顔しないでもらえる!?いや走れない事は無いけど知覚は無いでしょ15キロ!?」
「20キロの重りで15キロダッシュ、やらないのか」
「普通やらないよ!!」
此処でも炸裂ギャングオルカ指導の弊害。そんなボケをかましていると準備運動をしている龍牙の前に一人の男性が現れる。それは龍牙が良く知っている人物だったので寧ろその登場に驚いてしまった。
「如何やら迎えに来て正解だったみてぇだな」
「―――えっ戦兎兄さん!?」
「よっ龍牙、ヴィラン暴れてるって聞いて迎えに来てやったぜ。取り敢えず車に乗った乗った、一応連絡しておいてやったけど出来るだけ時間は取り戻した方が良いだろうからな」
警察やヒーローに挨拶をしてから手招きをする戦兎に続くように乗って来た車へと乗り込むと早速車を走られていく戦兎に白鳥は思わず話をする。
「あ、あの桐生博士。なんでお兄ちゃんに兄さんって……もしかして……!?」
「いやねぇから、単純に俺が龍牙の兄貴分ってだけでそう呼んで貰ってるだけだから。白鳥ちゃんも俺の事は気楽に戦兎で良いからさ、俺としてはお前達の本家さんには結構世話になってんだよ」
「えっそうなんですか?」
曰く、スポンサーとしてかなりの出資をして貰っているらしい。その見返りとして特殊なヒーロースーツの制作や技術開発を請け負っている。完全に音を消してしまう素材に個性に反応する素材やら……様々な発明品を提供している関係にあるとの事。
「いやまさかあそこが龍牙の爺ちゃん家とか全然知らんかったわ……俺も今回偶然新作を持って行ったらお前らが来るって聞いてさ、折角だから出迎えに立候補したんだよ。なんか今回は何時も以上に慌ただしくてさ、素直に有難いって言われちまってさ。なんかあんのか今日」
「あ~……お兄ちゃん、戦兎さんって何処まで知ってるのウチの事情」
「ぶっちゃけ全部、俺が前にクラス対抗の時俺いなかったろ」
「ああ、物間君が凄い煩かったあの時。お兄ちゃん対策に色々考えたのにそれが無駄になったけど君達の戦力半減って事だよねぇ!!って余計な事言ってくれたおかげでA組に火付けちゃってもうボロボロ」
ある意味物間らしいとも言える事だが、口は禍の元とは良く出来た言葉である。主にキレたのは爆豪なのだが、意外にも轟や常闇もカチンと来ていたのかとんでもない力を発揮していた。特に常闇はまるで夜中に活動しているのかと思わせる程に個性の出力を高めながらも完璧な制御で策を全て薙ぎ払ってしまった。
「その時にあれらと戦ったんだけどその時に戦兎兄さんもいたんだよ。だから全部知ってる」
「わぁ……なんかすいませんでした……」
「ンまぁ俺も事情知ってるから気にするんな」
「それより兄さん、ミルコ姉さんとはどうなりました?」
「―――聞くなよ馬鹿……ニヘッ」
「クシャってますよ顔」
恥ずかしそうにしているがその顔はあからさまな程ににやけている、如何やら大きな話題にもなっているラビルドの再結成。その肝心要な二人の関係は酷く良好らしい。
「えっまさか戦兎さんとミルコさんって恋人同士ぃ!?何それ聞きたい聞きたい聞きたいィ~!!!」
「いうなよ龍牙ハズイから……♪」
「良いですけどせめてクシャクシャになって喜ぶのやめたらどうですか?」