僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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当主たる祖父と会う黒龍

「でっかっ……」

 

到着した龍牙が開口一番に呟いた言葉がそれだった。車を走らせていくと次第に車の数が減っていく、そして志田に全く車が見えなくなってくる頃に見えてきたのは酷く大きな日本家屋。時代劇などに出てくる奉行所よりにもはるかに大きいだろうか、自分は行った事ないが豪邸だという八百万の家ともきっといい勝負をする程の巨大さに圧倒される。車が止まると共に外に出るのだが、荘厳な出で立ちの壁が家を囲むようにしており、家というよりは砦のような印象すら受けてしまう。

 

「お帰りなさいませ桐生様、この度は突然お出迎えを頼んでしまい申し訳御座いません」

「良いって事よ、結構長い仲だし。龍牙とも俺は気心しれてるし」

「では其方が……」

「おう、龍牙ちょっとこっち来いよ」

 

戦兎に呼ばれて初老の老人の前に立たされる。執事服に身を纏っている老人はそれなりの御年である筈だが背筋がピンと真っ直ぐ、髪も白髪は一本も無く寧ろ若々しい印象を持つ。そんな相手へと立たされると老人は静かに涙を流しながら言葉を漏らす。

 

「おおっ……貴方が龍牙様ですね……私は執事長をしております陣と申します……お会い出来ました光栄の極み……!!」

「え、ええっと……黒鏡 龍牙です……宜しくお願いします陣さん……」

 

取り敢えず握手をするのだが何故泣くのか全く理解出来ずに混乱したままの龍牙、そんな陣を宥めながらも屋敷の中へと通して貰うように戦兎が話して漸く中へと入れて貰える。中も中々に荘厳且つ豪華な内装なので緊張が絶えない龍牙と久しぶりに来るなぁとマイペースな白鳥。そんな二人を見て対照的な兄妹だと思う戦兎、そんな三人が通された部屋からは……途轍もない威圧感が漏れていた。

 

「っ……!!!」

「待て龍牙落ち着け、おい陣さんまさか……

「はい、今ご当主様と本家の恥さらしが会談中に御座います」

「やっぱりお爺ちゃんか……相変わらず鳥肌が立っちゃう……」

 

龍牙が戦闘態勢を取ろうとしてしまう程の重苦しい雰囲気に溢れているそれは当主たる祖父があれらとの話をしているから出ている物らしい。並のヴィランでも出せない、そんな威圧感を放つ存在がこの先にいると思うと中々言葉が出てこない。師匠のそれとはまた違う物、圧倒的な存在感なのは同質だが……本質が極めて異なっている。

 

「師匠のそれとは全く違う……何だこれ……」

「ちょっと待った方が良いか?」

「いえ、到着したらのならばすぐに通して欲しいとお言葉を預かっております。龍牙様、気を楽にしてくださいませ」

「いえ無理です」

「だよねぇ……」

 

面識がある白鳥ですらこの感覚は未だになれない、しかもこの感じからして祖父はガチで怒っている。それを向けられているあの夫婦は一体どんな事になっているのだろうか、もうストレス性急性胃潰瘍にでもなっているのではないだろうか。

 

「旦那様、黒鏡 龍牙様がご到着なされました」

『―――ウム、入るが良い』

 

重く威厳に溢れた声がする、地の底から響くかのようなそれは相手に威圧と恐怖を与える。そんな声に導かれるように開けられた扉の奥へと導かれていく。そこは広間になっており中心部にて自らの肉親を見下ろすように見つめながら対面している一人の男が居た。体格はほぼ現役時代のオールマイトと同じだろうか、浅黒い肌に相反するような純白の長い髪、そしてその奥からは死神と言わんばかりの鋭い蒼い炎のような瞳が灯っている。

 

「お爺ちゃん来たよ~」

「よくぞ来た愛しき孫よ、そしてまた一つ英雄としての段を登ったと聞く。見事な活躍に我も誉れ高い」

 

隣に座り込む白鳥に声を掛けつつも頭を撫でる姿は正しく祖父、低く唸るような物だがその言葉は孫を愛する祖父その物。その圧倒的な存在感に飲まれそうになる龍牙の肩を叩く戦兎、それで我に返ったのか前を見る。

 

「戦兎よ、其方にも面倒をかける。本来であるならば我らの恥、我らが行うべき役目の一端を担わせるなど愚の一言」

「別に俺としては弟分を迎えに行っただけですよ、言われなくても龍牙が来てるって言われたら確実に迎えに行ってましたし」

「其方のよう言った所は正しく美徳、感謝の意を……そして―――」

 

戦兎の隣へと視線を移す、そこにあるのは愛おしき愛を注がれるべきであった運命から外れてしまった孫。苦難と苦しみ、悲しみの果てにありながらも決して前に進む事を諦めずに歩み続けた男として成長した姿に口角を上げた。

 

「―――よくぞ来てくれた……其方には如何様な言葉を尽くそうが何も返す物が無い、既に過去となりえたそれを変える事は出来ぬ……故に今この時より宣言させてほしい、此方に来てくれぬか我が孫よ」

 

不器用な言葉ながらもそこにある確かな物を受け取る、そして一歩一歩踏みしめるように、微動だにせず固まっている両親など気にも留める事も無く隣を通り過ぎて目の前まで移動して座る。

 

「……俺はこの場合どんな言葉を口に出せば良いのか分かりません、貴方が祖父だという事は妹より話を聞きました。ですが今日此処に来たのは俺自身の意志です、そして……お逢いできて嬉しいですえっと……お爺ちゃん」

「嗚呼、よくぞ来てくれた我が孫(龍牙)よ、奇妙な感覚かもしれぬがこの時より祖父と孫という関係をとなろう。遠慮する事なく寛ぎ、存分に祖父を頼るが良い。持てる全てをもって其方を守ろう」

 

その言葉は、まるでギャングオルカや根津の言葉のそれのように暖かく優しさに溢れていたからか、自然と龍牙は笑みを作っていた。

 

「そして―――我が家を、神使の家の恥たる鏡の当主らよ……貴様らに問おう―――汝らは何者だ」

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