僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~ 作:魔女っ子アルト姫
異能解放軍。その名前にピンときたのは龍牙や白鳥だけではなく、戦兎も同じくだった。まだ個性が異能と呼ばれた時代に異能の自由行使は人間として当然の権利と謳った解放主義者達によって結成された過激派組織が異能解放軍、法の整備を進める国との数年にも及ぶ対立の末に敗北。指導者であったデストロを含めた多くのメンバーが逮捕され、デストロ自身も獄中で活動を記した自伝である『異能解放戦線』を出版した後に自決したため解体されたとされている……。
「其方らがそれらとの関りを持っている、既に潰えた集は再び力を付け新たな光へと成ろうとしている」
「そのヴィランみたいな連中と関りを持ってると言うのですか……!?」
「それはヒーローである私達への侮辱です……!」
既に潰えた筈の過激派組織、それに関係を持っていると疑われた獣助と乱は不服であると言いたげな瞳を翁へと向けるが当主である翁はそれらを鼻で笑う。既にヒーローである事を自ら投げ捨てているに等しい行いをした者たちが良く言う物だと言いたげに。
「我が何も知らぬと思っているのならばそれは大いなる過ち」
懐から紙の束のような物を放るとそれは床に散らばりながらもまるで狙っていたかのように龍牙たちの前にも広がってその内容が見えるようになっている。そこには鏡家の資金の流れに出会った人物のリスト、そしてそれが裏で繋がっている人間などの全てが記されていた。
「うわっ何これ!?うちの経済事情が丸わかり!?ってなんで新しいトレーニング機材がこんなに購入されてるの!?もう事務所にも家にも十分あるのに馬鹿なの!?」
「いやそこじゃないだろ白鳥ちゃん……分からなくもねぇけどさ……」
「いやでもこれ凄い……どこでお金が使われたのかや何処から何処へ送金されているのかも丸裸……ヒーロー情報学でもこの手の授業受けたけどかなり大変って話だったのに……」
ヒーローの仕事は単純なヴィランの確保だけに留まらず、それらが引き起こした犯罪ネットワークの洗い出しや資金の流れに人物との繋がりまで徹底的に探る事までしていく、死穢八斎會の一件でそれらを担当した事がある龍牙からすればこれだけの情報を探る事の大変さが分かる。だがそれに対して他愛無しと言わんばかりに息を漏らしながら翁は言う。
「この程度の事など雑作なし。我ら神使は古き時代より神の僕として動く、生み出された網は汝が思うよりも遥かに強大ながら精密成―――そして龍牙、その中に見覚えのある名がある筈だ」
年季が違う、その一言で済ませてしまう翁に格の違いを感じる龍牙だが言われてあげられた名前のリストの中を探ってみるとつい最近……二人と会談をしていた名前の中に知っている名前が存在していた。それは自分も知っている名、最近聞いた名であり……自らが手を合わせた人間の名があった。
「悪士 善魔……!!!」
「嘗て異能解放軍の幹部にクロケルという者があり、それの子こそがその名だ」
「じゃああいつは」
「解放軍の一員、そして―――奴こそがこの愚か者を引きずり込んだ根源なり」
「「違うっ!!!」」
強い声で否定が放たれた、そこには個性を発動させ全身に獣の強い部分を集結させた最強形態であるタイラントとなったビーストマンと全身を鏡のような鎧を身に纏ったミラー・レイディがそこにいた。どちらも個性を極めた末に体得した最強の技、それを使う事の意味を理解していない訳ではないだろうに、使っている。
「あの人は俺達に教えてくれただけだ、本当の意味で―――自由になる為の!!」
「そう、全てを解放させた先に望んだ答えがある、それを教えてくれた人を悪く言わないでくださいお義父様!!」
「汝らの言葉など既に我が耳に届きはせぬ、そして既に理解している筈。汝らが剣を我に向ける事即ち、死を告げる事となる事を」
その手には、既に異常な得物が握られていた。巨大な剣、黒い鉄いや鉄に闇が刻め付けられ、色となっているかのような剣があった。武骨だが恐ろしく、恐ろしいが何処か慈愛を纏う一太刀をその手に握りながら眼前の両名を見据えた。
「何も理解していないのは、アンタの方だ……!!唯政府の言いなりになって世界を変える気概も無いまま、平和を守るなんてぬかすな!!」
「―――戯けが」
刹那、翁の姿が掻き消えた。隣にいた龍牙に白鳥、そして戦兎すらその動きを捉える事が出来なかった。そして無数の致命的な罅が入るような音と共に翁の姿が出現した。剣を携えながらビーストマンとミラー・レイディの背後に立っている。
「―――回りっ!!」「―――込まれた!!」
刹那の反応、腐ってもトップヒーローだと言わんばかりの反応速度。だが其処に翁はいない、その姿は―――動く前と同じ孫の間にありながら剣を床へと立たせるように置きながら佇んでいる。
「世界に新たな光は不要、必要なのは光の座標、照らし方。光と闇、双方は表裏一体それらを無くす事は出来ぬ。故に闇に対する備えが必要となる、それの道を選びし者達こそ我ら神使なり」
「世界を照らす光は既に天にありし物、新たな光など無用な闇を、より深き悪を育むだけの事」
「自ら愚者と成りし違えた光よ、汝らが照らす大地など無い。幽谷の淵へと堕ちるが良い」
「「―――っ……!!」」
言葉を発する事も無く、両名はゆっくりと倒れ伏した。同時に全身に纏っていたそれぞれの力は砕け散りながら光の粒子となって室内の影へと飲まれていく。平和を影から守り続けた家の中へと飲まれていく、その光景に思わず龍牙たちは呆然と見続ける事しか出来なかった。まだ生きているのか少し身体が動いている二人を唯々見つめる事しか出来なかった。
「な、なにが……!?」
「案ずるな愛する孫らよ、お主らを汚らわし血にて汚す気など皆無。故に加減をし瀕死へと貶めた、暫しの間そのまま自らの罪を悔いるが良い」
「い、いや何が起こったんだよ……!?」
「孫の問に答えるのも吝かではないが……どうやら無作法な客の出迎えが必要のようだな」
その言葉と共に廊下へと歩み出て行く翁、その後に続いていく。晴天の空にポツンと何かが浮かんでいる、何か翼を持った何かが此方を見つめている。それはゆっくりと龍牙には見覚えがあったそれ、悪士 善魔。
「あ、あいつ……!!」
「奴との合流を我との会談の後に企んでいたのだろう、そして解放軍の一員として動く。だが我が瀕死へとした事によって回収に来たのであろう」
「いやはや、まさかこのような場に遭遇するとは……私もつくづく運命に魅了されている。またお会いしましたね龍牙様」
「もう会いたくなかったけどな……!!」
その言葉の直後、善魔の姿が膨れ上がっていく。如何やら既にあの二人に個性を施していたらしい、しかもそのダメージによって自らを強化している。その最中に翁は剣を消しながら天に浮かぶそれを見据えながら言った。
「龍牙、そして戦兎よ。汝らにてあれを打倒せよ」
「あ、あのお爺ちゃん私は!?」
「其方は我と共に此処にいるが良い、汝では足を引っ張るだけだ」
「ハッキリ言うなぁお爺ちゃんはぁ!!!」
と若干凹みながらも白鳥もそれは分かっていた、今の善魔から感じる威圧感のそれはヴィラン時代のヴェノムのそれを上回っている。確実に自分はあの時の両親の二の舞になる事も理解しているが此処までハッキリ言われると来る物がある……まあそれも祖父なりの優しさなのだろうが……言い方を考えて欲しい。
「如何する龍牙、俺の助けいるか?」
「……素直に欲しいですかね、多分俺だけじゃ手に負えません」
「うっしそれじゃ―――最っ初全開で行ってやろうじゃねぇか」
装着されるビルドドライバー、それと同時に取り出されるのは赤いトリガーだった。まるで危険物のようにカバーが成された奥にあるボタンを押し込みながらドライバーへと接続する。そして続けて取り出されるボトルというには酷く長いそれ、それを振るうと何かが飛び跳ねるような音が響き渡り……それをドライバーへとセットする。
「「―――変身!!」」