僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~ 作:魔女っ子アルト姫
「はぁはぁっ……何だ、今の……!?」
激痛から目を覚ますかのように我に返る、だがそこにあった景色が変貌し自分の、自分から『何か大切なもの』がなくなっていくのを感じてしまった。まるで内臓の一つが抜き取られたような感覚に等しい。それに対する痛みこそないが強い喪失感が胸へと襲ってくる。いない、自分の身体の中にいた筈の存在を感じない。
「ドラグブラッカー……が居ない……い、やそれ、だけじゃ、ない……!?」
「龍牙っ!?まさかアナザーウォッチで龍牙の個性を……!」
駆け寄ったジオウ、そこから映り込んでいる龍牙の顔色は酷く悪い。青を通り過ごして灰色へとなっている、唯単にライダーがアナザーウォッチによってライダーとしての力を奪われたのとはわけが違う。個性は生まれてからずっと共にあったもの、それが抜き取られた。それによるショックはソウゴには推し量る事も出来ない、唯々呆然と胸の辺りを抑え続けている龍牙を庇いながらアナザーウォッチを見続けている敵に向かい直る。
「これもそいつの個性が仮面ライダーに極めて近い性質を持っていたからだな、感謝しなければ……俺の力で安定させればこれはアナザーウォッチとして機能する、そしてそいつは自力でサバイブにまで至っていた―――素晴らしい」
サバイブ、「生き残る」という意味の名の通り、そのライダーの力を、他のライダー達を圧倒するほどまでに強化する力を持つ。それは龍騎ともう一人のライダーのナイトが所有していた力だが、その力自体は他のライダーから齎された物であり自力で決して至れない領域。だが龍牙はそこへと自らの力で踏み入れた、様々な助けを借りながらも努力し続けた結果として黒龍と一つになる事で更に一つ上の次元へと手を掛けた。その力がそのウォッチに宿っている。
「さあ始めようか―――!」
ウォッチを起動させながらそれを自らに埋め込むかのように押し付けていく、爆炎のような黒い炎が巻き起こりそれらが鎧となってアナザーリュウガよりも遥かに禍々しく恐ろしい怪物であるアナザーリュウガサバイブとなって顕現してしまった。それに対してソウゴは龍牙の背中をさすった後、彼を庇う様に前へと出ながらあるウォッチを取り出す。
それは表と裏に分かれるウォッチ、過去と未来、それらを統べるウォッチ。それは魔王たるジオウの力の一端を開放する大いなる時を刻む物。
「龍牙の力を好きになんてさせない。それは龍牙が今まで努力して手に入れた力だ、お前が好き勝手に使っていいものじゃない。だから―――お前を倒す、変身!!」
表と裏が備えられた、それによって巻き起こる二つの時を刻む時計の出現。それらは魔王の呼び声と共に金色に輝きながら荘厳な鐘の音色を奏でながらジオウを新たな次元へと押し上げていく。
姿を合したジオウは現在だけではなく未来と過去を刻む為のようの針を複数持っている、ジオウよりも遥か先へと進む力を持つそれは魔王として光と闇を全てを受け入れた姿。彼が言う最高最善の魔王として、己の善も悪も全てを受け止めた末に辿り着いた姿、その名も仮面ライダージオウⅡ。嘗てアナザーリュウガを撃破した力こそがこのジオウなのである。
「フッ!!」
「ザァァァ!!!」
互いに走り出したジオウⅡとリュウガサバイブ、龍牙のように右腕に龍頭と左手には剣が握られている。鋭くも重々しい剣の一撃は嘗てのアナザーリュウガよりも遥かに洗練されているように思え、防御した腕が痺れるような感触がするがジオウはそれを受け止めきりながらカウンターでパンチを入れる。が、直後に右腕が異常なまでに肥大化した。
「ドラゴン・スマッシャー!!」
「はぁぁぁっっ!!」
肥大化したそれを向けられたジオウ、一歩後ろに引きながらその手にジオウⅡの剣を握る。その名もサイキョウギレード、時計の針を模した剣にはジオウの顔面が備え付けられている。それを握りしめながら迷う事無くトリガーを引き必殺技を発動させる。
必殺の斬撃と必殺の一撃が炸裂しあう、アナザーリュウガすら反射しきれない一撃を放つジオウだがその一撃とリュウガサバイブが放った一撃は完全に互角。対消滅するように互いを打ち消し合って消滅してしまった、それにソウゴは内心で汗をかいた。それほどまでに龍牙の力が凄まじい事の証明であり同時にこのアナザーライダーの厄介さを物語っている。
「まだまだぁ!!」
「フンッ!!」
直後、目の前に歪んだ鏡が出現しそこから自らの攻撃が反射されてくる。だがジオウはそれを冷静に回避しながら前に出続ける。素早い連撃を組み立てながら相手に反射の隙を作らせないようにしていく、リュウガサバイブもその狙いに気付いているのか反射を極力使わないようにしつつも此方に大きな隙を作らせようとするような力強い連撃を加えてくる。
「フンッ!!」
「まずい!!?」
突如、リュウガサバイブは身体の向きを変えて龍牙へと黒炎を放った。それに気づいたジオウはその間に入ってサイキョウギレードでその黒炎を打ち払う。龍牙は茫然自失になってしまっており動けるような状態ではない、そんな彼を狙ったリュウガサバイブに対して怒りがわいてくる。
「お前……!!」
「情けないな、それでヒーローを目指すなど笑わせるな。それでもお前はライダーなのか、仮にもライダーと同じ力を宿す男とは思えんな。これで貴様には何もない、唯の人間だ」
煽るような言葉を投げかけるリュウガサバイブ、確かに龍牙にとってその力は象徴そのもの。自らの人生そのものの象徴であり様々な物の起点になって来た。岐路に必ず関わってきたそれがなくなるという事は龍牙の人生の歴史を奪われたのと同意義、夢を奪われ、居場所すら無くすに等しい状態に陥った。何もない―――ただの人間……だがその言葉を受けて同時に龍牙の瞳に光が宿る。拳を握りしめ立ち上がるとそのまま駆け出し、リュウガサバイブへと殴り掛かった。
「何のつもりだ」
当然、普通の人間よりも鍛えられている拳だがリュウガサバイブにはそよ風に等しい。文字通り意味を成さない、それでも龍牙は続けて拳を振るい続けた。
「そうだ…そうだ、俺は情けない男だ。お前に今俺の全てを奪われた、でも、でも俺はそれでも前に進めるんだ!!絶望を味わって無に落ちた俺でも前に進めた!!!それは色んな人が俺の背中を押してくれたからだ!!」
リュウガ、それこそ龍牙にとって全て―――いや全てだった。良くも悪くもそれしかなかった自分だが今は違う、それがくれた出会いが自分を支えている、大切な人達が自分と繋がってくれた。その繋がりは力を、温かさをくれた。それさえあれば龍牙は前に進める、例え個性がなくとも前に進む事は出来るんだと龍牙は拳を振るう。
「お前の言う通り、俺に、ソウゴ達と同じライダーと同じような力があったのなら―――本当に、俺もそのライダーを名乗っていいのなら戦えるはずだ、世界を蝕む悪意と―――お前のような悪と戦えるはずだ!!」
「龍牙……熱っ!?」
思わずジオウは熱さを感じた、その根源は一つのライドウォッチ。それは龍騎のウォッチ、それが赤く激しい光を放っていた。まるで龍牙に共鳴しているかのように―――同時に龍牙の身体を走るように黒炎が少しずつ溢れている。
「例え、お前に個性を奪われたとしても―――俺は戦う!!愛と平和を齎す為に、平穏を望む人たちの為に……俺は―――ギャングオルカの弟子、ドラゴンライダー・リュウガだああぁっ!!!」
「馬鹿な、お前から力は奪った筈……!!」
「だああああああぁぁぁ!!!!」
その時、龍牙の全身を黒炎が走った。それは腕へと集中し龍頭を形成しリュウガサバイブを殴り飛ばした、それに動揺しまともに受けてしまう。ダメージこそないがあり得ない状況に驚きを隠せない、確かにアナザーウォッチで個性を完璧に奪った筈なのにどうして個性が使えているのか……だがそれは如何でもいい、龍牙にとってはまだ自分が戦えるという証明になりならばそれでいいと思った時だった、自分に赤いウォッチが飛んできた。
「行ける気がする、龍牙それを使ってみて!!」
「これって―――」
龍騎のライドウォッチ、それを手に取るとそこへと自らの黒炎が流れ込んでいく。残り火のようになっていた黒炎を全て吸収していくライドウォッチはそれらを受けて変質していく、そしてそれは赤い龍から黒龍へと変じていた。それは即ち―――リュウガのライドウォッチとなった。
「やっぱり―――やっぱり龍牙もライダーなんだよ、それが証明だよ。そこに個性なんて関係ない、誰かの為に戦おうとする心がライダーなんだよ。だから一緒に戦おう龍牙、そしてあいつを倒そう!!」
「ソウゴ……ああ、戦おう。借りるぞこのウォッチ!!」
「存分に使って、俺もこっからは全力で行く!!」
龍牙が黒炎を出せた訳、それはドラグブラッカーを戻される前までは投与された個性活性因子がその力を保存していた、アナザーウォッチにて個性の力も殆ど奪われてしまったが、活性因子は個性とは別の物なので、奪われずに済んだ。がそれでも大本の個性が完全に抜かれてしまったので上手く出せなかったがそれを龍牙が強い意志で引き出したので出す事が出来た。
ご都合主義と笑れば笑え!!だが、こういう展開私は大好きなのだ!!
そしてさり気に魔王様、もう相手をぼこぼこにする気満々である。