僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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素直に話す黒龍

「あっお帰り龍牙君」

「嗚呼っただいま……いやいやいやなんで俺の部屋にいるの」

 

本家からの呼び出しから漸く雄英へと戻った龍牙、重たい足取りのまま部屋へとたどり着くとそこでは部屋でホットミルクを飲みながら自分を待っていたかのように座り込んでいた葉隠の姿があった。家族のように自分の帰りを出迎えてくれた彼女の言葉に思わず問いを返すと悪戯が成功したような笑みを浮かべながらその手に鍵を出した。それは自分も持っている部屋の鍵だった。

 

「根津校長がくれたの、恋人の私には必要だろうって♪」

「何やってんだ父さん……」

「私なら変な風には使わないだろうって信頼して渡してくれたの、最近龍牙君公欠多いから大変なんだと思ってお菓子作って来たんだよ、ジャジャジャジャ~ン!!」

 

テーブルの上に出したのはやや黒目の茶色をしたお菓子の山、それを勿論龍牙も知っている。色々と苦労している故か、それとも同じ料理が出来る故か、砂藤が差し入れと称して様々なお菓子をくれる。共にお菓子を作ったりしたりする中にそのお菓子もあった、初心者にも作りやすいお菓子として始まるならこれがおすすめだと勧められた。

 

「ブラウニー、私もいっぱい食べたいからこれにしてみたの」

「結構な量作ったね、それじゃあ有難くいただくよ」

 

一つ手に取って口へ、程よいチョコの甘さと生地の塩っ気が混ざり合ってしつこくない。そこへ暖かなホットミルクを入れてやると濃厚さとまろやかがちょうどいい旋律を作る。戦兎ならきっとこういう事だろう。

 

「―――これは美味しい方程式だ」

「良かった、作った甲斐があった♪」

 

此処に戻ってくるまでに色んな事を考えてしまう事があった、だがこの素朴だが暖かみのある甘みはそれらを溶かして平常心を誘ってくれる。非常に安心できる類の物で龍牙の心は彼が思っている以上に安らいでいる。

 

「ああ、落ち着く……」

「良かった♪」

 

声に出しながら様々な物を見せながら隣に座り直した彼女は愛しの彼の方に凭れ掛るようにしながらその感触と温かさを味わう。ミルクを含みながら不意に顔の傷に触れながら天井を見上げてみる。思えば自分は―――本当に雄英に入学してから様々な事を体験しながら此処にいるんだと思い知る。隣にいる彼女も雄英に足を踏み入れたからこそ出会えた存在、自分を変えてくれた人。

 

「有難う葉隠さん」

「っ?いきなり如何したの龍牙君」

「いや、何となくさ……言いたくなったんだよね」

 

あの時、彼女に声を掛けて貰えなかった自分はきっと今も影を作りながらその中で生き続けていた事だろう。そして……もしかしたら自分はオール・フォー・ワンなどの誘惑に揺らいでしまったかもしれない。それ程までに龍牙にとって葉隠の存在は重い。単純な親の愛情を受けていなかった、いや受けられていたが何処かで歪んでしまった彼は完全に真っ直ぐにならなかったのをたった一人の少女が正したというべきだろう。

 

「今回の公欠はちょっと本家に行ってきたんだ」

「本家?」

「ああ、元々の鏡家っていうのもある家の分家らしくてね。今回其処、まあ簡単に言えばお爺ちゃんの家に行ってきた」

「龍牙君の御爺ちゃんかぁ……どんな人なんだろう」

 

何と表現するべきなのだろうか、間違いなく初見の人からしたらおっかなく恐ろしい人である事は間違いない事だろう。良い人である事は間違いないだろうが……それと彼女の事を知っているという事は何れ紹介する必要もあるのだろう……故に話さなければならないだろう、自分と交際している彼女には。

 

「葉隠さん、えっとその……俺が新しい家を持つ事になったって言ったらどうする?」

「えっどういう事?」

 

突然の告白に瞳を白黒させながらも彼女は龍牙の言葉の全ての一つ一つを確りと聞いた。本家、神使の家にて一体何があってどんな話をしたのかも包み隠さず全てを告白した。様々な話のそれに表情をコロコロと変えていく彼女は全てを聞き終えると新しく入れ直したホットミルクを飲んでホッと一息を吐くと……頬を欠きながら苦笑いを作ってしまった。

 

「龍牙君って本当に凄いよね、本当に。だって百ちゃんみたいなお金持ちの家の主になるって事でしょ?」

「まあ噛み砕いて言えば……実際はそんな簡単な物じゃないけど」

「それでも凄いと思うよ私」

 

照れ隠しのようにブラウニーを頬張りながらもホットミルクでそれを流し込んでいく。

 

「それで、さ……えっと」

「私はずっと龍牙君の隣から離れる気なんてないよ」

 

言い切るようにも先に彼女は後ろから抱き付くようにしながら言葉を遮って思いを伝えた。きっと龍牙は言いたかったのはこうだろう。これから自分といえばきっと苦しい事も辛い事もずっと多くなっていくだろう、だからそれが嫌ならば、それに近い事だろう。きっとそうに決まっている、それ程までに龍牙が優しい事を彼女は知っている、そんな彼を愛している。

 

「たとえどんなに辛くても、苦しくても一緒にいるよ。私龍牙君と一緒にいる時が一番幸せなんだよ?触れている時が幸せ、喋ってる時が嬉しい、一緒に入れるだけで満足、だから……その先の言葉は絶対に言わないでね……」

「……ごめん、野暮な事を言う所だったよ」

「言ってたら許さなかったよ」

「ごめん」

「刺してたねきっと」

「ごめ―――え"っ」

「冗談だよ♪」

 

声色的にそれが嘘だとは思えないのだが……とは言いだせない龍牙は取り敢えずある事を誓う―――彼女を怒らせることはやめようと。

 

そして―――龍牙は翁に電話で黒鏡家の事を承諾する意思を伝えるのであった。

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