僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~ 作:魔女っ子アルト姫
葉隠が女子会にて追及を受けている中、龍牙は根津の元を訪れて親子としての対話をしていた。内容は当然、神使の家にて話した内容全て。神使の家について、鏡家を含めて分家の今後、白鳥の進路、そして―――自分が新たな分家の当主を任されたという内容全てに至るまで。
「父さんは俺の家については知っていたんですか」
「一応把握はしていたよ、それでもあの夫婦によって様々な証拠が隠蔽されていたし何より神使の家に申し出るとヒーロー社会に波及する恐れもあったからね。当時のヒーロー事情などを考えると鏡家のような分家はトップヒーローだけではなくサポート業界などにも幅広かった、今こそ他の勢力も多くあるけど当時は力が特に強かった」
「そんなに……」
「嘗てヒーローという職業が根を下ろすまで影で世界の平和を保つために奔走した一族だからこそかな、それでもオール・フォー・ワンの勢力が世界に波及しすぎないようにするのが限界だったんだけどね。オールマイトが活躍するまでの間、日本を支えてくれたんだよ」
それ程までの一族の家の役目は次第にヒーロー達へと移っていった、それで悪の帝王の勢力は凄まじかった。オールマイトの登場は正しく神使の家にとっては願い続けた平和の象徴の成就にして、平和の実現に最も近づいた瞬間でもあった。そして次第にその一族は更に影へと身を潜めていきながらも分家として、光の一部となって社会を表側も支える面も現れた。それが分家たちの存在。
だが今回その分家が光ではない事をしでかした、許容出来るそれを越える事を起こした結果―――大規模な改革に乗り出した、龍牙の当主就任もその一つ。
「黒鏡家、中々カッコいいじゃないか。息子がそこまで大きくなっていくなんてこの根津の目をもってしても見抜けなんだって奴かな。いやぁ嬉しい事だね」
「俺なんか務まりますかね……」
「大丈夫、務まるよ」
少しばかり不安そうな表情を作っている息子に向けて父はタイムラグも無く、即座に言い放った。心配する事は無いと、きっと君なら当主として立派な活躍をする事だろうと。
「まだ時間はあるし、当主として立派になるまでは補佐役の人が付いてくれるんだろう?それまではその人の手腕を習いながら成長すればいい、何なら僕が経営学から帝王学とか当主として必要なスキルを教え込んであげても良いよ。また息子相手に教鞭を取れるのはなんだか嬉しいからね」
「なんで父さんは俺に当主が務まるって思うんですか」
「じゃああえて逆に問わせて貰おう、何で務まらないと決めつけるんだい?」
ソファから降りながらゆっくりと歩んで近づきながら言葉を作る。その姿に龍牙は目を反らす事も無くまっすぐ見据えていた。
「人が何に向いているなんてそれに向かって努力して、やってみない事には分からない事だよ。昔君は言っていたね、自分の個性は怖いからヒーローには成れない。だが今は君は何だい?立派にヒーローとしての道を歩んで今は世間が認める次世代のNEW HEROだ」
個性:リュウガ。自らへの恐怖と戒め、そして前に進む為に自らの名前を付けた個性。嘗て自分は諦めて慰めの言葉を拒絶して前にさえ進めなかったが多くの人の導きと助けを経て此処まで歩んできたことは紛れもない事実だ。多くの人にヴィランだと言われるような個性でありながら、今や自分をヒーローと呼んでくれる人は数多い。
「実の両親との決別、そしてその本家とも言える祖父との関係再開、そしてその祖父から直々に家に纏わる事を任されている。親として素晴らしい事で嬉しいよ、僕はリュウガがやりたくないなら別にそれならそれでいいと思ってる、だって君の人生だから他人がどうこう言ってその道を曲げる権利はない。だけどやると決めたらサポートは確りしてあげるのが親の役目だと思ってる」
「父さん……」
歩み寄って父の手が膝に置かれた自分の手に触れた。自分と違った艶やかな毛の感触と肉球の感触、そして暖かな体温が手に伝わってくる。久しぶりに感じるそれは龍牙にとって嬉しく、実の両親のそれよりも馴染みのある感触だった。
「そして君は当主になるという道を選んだ、だったら僕が取る道は一つだけだよ。君が満足出来るような存在に成れる為の手伝いをする事さ。厳しい道である事には違いない、間違いなく苦労もする事だろう、だけどその果てに君が作る未来は素晴らしい筈だ、僕はそんな龍牙になれるように手伝うよ」
「……やっぱり父さんは優しいな、それでいて厳しい」
「これでギャングオルカに比べたら大分優しいという自負だけはあるのサ!!」
そりゃそうだ、厳しいに厳しいを足して更に厳しいで掛けるような師匠に比べたら優しさの中にある厳しさの根津は大きく違っている。今更ながらよくもまあ龍牙はギャングオルカの指導を受け続けて歪む事が無かったものだと根津は心の底から思った、龍牙の環境を考えれば個性が怖くないのも嘘で自分を潰そうとしていると解釈されても可笑しくなかったかもしれないがその辺りのフォローを確りしていたからだろうか。
「白鳥さんの進路も驚きはしたけど僕はそれに異論をはさむ気はないよ、ただそれは本当に辛い道だからそれでいいのかと問いを投げかけはする。でも君達は既にその道を進むと決めている、問う事はする、その度に意思表示をして変わらないと言い続けて行けばいいだけだ。問われる度に考えて努力を重ね続けていくんだ」
「……重ね続けるか、つまり今まで通りって事ですかね」
冗談めいたような言い方に思わず根津が笑い、それに釣られるように龍牙も笑った。
「そうだね、それじゃあ今まで通りに努力を増やし続けて行こうじゃないか!リュウガならきっと大丈夫なのさ!!」
「ちょっと無責任っぽいですけど……頑張っていきますよ、父さん」