僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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仕事を頼まれる黒龍

「調査ですか、俺が」

「ああ、是非君に依頼したい」

 

それは突然舞い込んだ話だった、リューキュウの元へのインターンで精を出している時に突然の来訪者が現れた。それは神使の家にて影から世界を守る役目を背負った者達、使徒とヒーロー公安委員会の人間であった。突然すぎる登場に龍牙は驚いた、何故ならば使徒は自分にとっての叔父にあたる人物でもあったからである。呪腕という名前を持つ使徒が連れてきた人間はある依頼を出した。

 

「病院の調査、ですか」

「これはヒーロー公安委員会からの直接の依頼です、危険も想定されますが貴方の個性の力である鏡の世界ならば現実世界からの干渉を受けないまま調査を行う事が出来る。嘗て死穢八斎會で発揮したその手腕を再びお借りしたい」

 

態々病院の調査程度の為に神使の家を経由して自分に依頼するなどあり得ない、それなら別のヒーローが使ったとしても可笑しくはない筈。それなのに自分に依頼をする、それが意味する先の答えは深い深い闇のそれと同義。深淵を除こうとしているような物。

 

「―――脳無の製造先でも見つけましたか」

「―――っ!!」

 

ある一つの可能性を予見し、それを口にすると公安委員会の役員は顔を強張らせる。使徒は態々分かりやすい反応をする事は無いだろうに……と溜息を吐く。何故そこに辿り着く事が出来たのかというと過去に自らの個性をオリジナルとする脳無と戦闘を繰り広げているから。自分という存在から生まれ出たIFという名の怪物、それらを生み出せる場所は必ずあるとは思っていた、脳無を繰り出す為に必要な要素をかけ合わせて行けば自然と思い当たる。何より―――

 

「俺は直接悪の帝王に個性を弄られてる上に会ってるんだ、分かって当然だ……舐めるな」

「……済まない」

 

そこからの話は一気に加速していく、内容は正しく驚きの連続だった。異能解放軍、正確には超常解放戦線に潜入中のホークスからの暗号、そして確保された元ヴィラン連合の死柄木の側近と思われるヴィラン、黒霧を確保した事で得られた情報などを総合していった結果として浮かび上がって来た敵の本拠地乃至は脳無を生み出す為の重要拠点だと思われる病院の特定の成功。その後詰として龍牙に調べて欲しいというのが今回の依頼だった。

 

「危険な仕事ですね、最悪の場合其処に居る脳無らが一斉に襲いかかってくる可能性もある訳か……それだけじゃないし超常戦線に確保される恐れもある……」

「龍牙殿、これはあくまで依頼です。拒否されても責める事もありませぬ、ならば我ら使徒が動くだけの事」

「そう言いつつも俺が行く事が一番だと思ってますよね叔父さん」

「……このような場では呪腕、それか使徒と」

「すいませんつい」

 

そんなやり取りをしながらも龍牙の心の内は既に決まっていると過言ではなかった、それしかない。断るなんてありえない。

 

「条件が一つ、ヴェノムを俺と同行させてください。あいつと一緒なら戦力が跳ね上がる上にあいつは俺と同化すれば一緒にミラーワールドへ入っていける」

「彼をか……分かった、リューキュウには此方か話を通しておきましょう」

「それじゃあ早速行くか」

「もう行くのですか龍牙殿」

「ええっ……これは恐らく急いだ方が良い」

 

何かが予感させている、龍牙の勘だろうかそれとも長年オール・フォー・ワンに奪われていた黒龍が叫んでいるのだろうか、この案件は早めに取り掛かった方が良いと。

 

「リューキュウ、すいません俺出てきます。野暮用が入りました」

「あらっオルカからの連絡でも来たの?」

「面倒なだけの仕事ですよ、詳しくは公安の人が話してくれます。後ヴェノムも借りますんで」

「ええいいわよ、気を付けてね」

 

ウィンクに軽めの投げキッスまでしてくるリューキュウのそれに笑顔で返しながら屋上へと昇っていく、既に日も落ちて繁華街のネオンが闇の帳を拒みながらも夜を夜ではなくしている。そんな街を見つめながら屋上のフェンスの上に足を揃えるようにしながら座っているヴェノムへと声を掛ける。

 

「よぉヴェノム、最近如何だ」

「ボチボチでんなって言えばいいのか、デブがそう言ってたが」

「ああファットガムか、間違っては無いな」

「ンで何の用だ」

 

フェンスから飛び降りながらチョコを頬張る、そんな平常運航のヴェノムへと視線を向けながら内容を語る。自分とのチームアップ要請、その内容も内容故にヴェノムも不思議そうな表情を浮かべつつもその重要性に気付きながら断る事などしなかった。

 

「良いだろう、何ならそこに脳無が居たら全員ぶっ殺してやろうぜ」

「おいおいんな事したらバレるじゃないか、今回は調査で確保じゃないんだぞ」

「前に腹をぶち抜かれたことあったろ、あの時が不服なんだよ此方とら。今度会ったら俺だけであいつをバラバラにしてやる」

 

その言葉を最後にヴェノムは一気に龍牙を飲み込んでいく、黒い塊が龍牙を乗っ取るかのように襲いかかる姿は見るものが見れば勘違いを起こすような光景だが、それらは直ぐに収まって元の龍牙の姿となる。

 

「まあそういうのは後のお楽しみに取っておこうぜ、折角お前がエンデヴァーとか師匠の影響で弱点の補強が出来たのは知ってる。お陰で俺のあれも少しはマシになるだろ」

『マシになるだけだ馬鹿、多少なりともマシになった所で弱点ある事に変わりはねぇんだよダボが』

「悪い悪い、んじゃ早速行くか……!!」

 

刹那、龍牙の身体が膨れ上がっていく。体格がヴェノムのそれとなりながら一気にを駆け抜けていく。ビルとビルを飛び移りながら駆け抜けながらも黒糸でスイングしながら摩天楼を飛び回っていく。

 

「うおおおおおっっ!?こりゃ、空を飛ぶのは全く違う感覚だな!?」

『ちゃんと握ってろよ、後糸の長さにも気を配れ。下手すりゃスイングで地面を擦る』

「そりゃごめんだな!!」

 

ヴェノムの基本的な移動方法であるそれを楽しながらも目的地へと向かう為に勢いよくミラービルのそれへと飛び込んだ。その世界に入るのは久しぶりだが、相変わらず何の音もしない静寂が支配する寂しい世界。だが此処ならば何の干渉も無く自由に速度を出す事が出来る、龍牙はブラックドラグランザーを呼び出しながらその背に跨るとMAXスピードで走らせる。

 

「目的地は―――蛇腔総合病院、その全てを調べ上げる」

『上等だ、いざって時は思いっきり暴れてやる……それだけだ』

「それは本当に最終手段だな、その時は俺も全開で暴れまくってやる」

 

この仕事に限っては何もないなんて事は絶対にありえない、何かあるに決まっている。そしてそれをこのミラーワールドから見極める、善魔の一件もある。それを含めて何かが分かるかもしれない大切な事、それは必ず平和へと繋がっていくに決まっていると不思議な直感がそれを後押しする。そんな予感と同調するかのようにヴェノムも笑い声をあげる。

 

『きっと楽しい結果になるだろうぜ、俺の勘が言ってる』

「その勘、頼りになるのか?」

『70%だ』

「うっわ、びっみょ……」

 

何処か真面目でない二人が向かって行く病院、そこに一体何が待ち受けているのか―――それは何も分からないがそこにあるのは明確な深淵。その深淵を確かめようとするのならば覚悟せよ、それを覗いた時にはお前も覗かれる。

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