僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~ 作:魔女っ子アルト姫
「耳郎ちゃんそっちはどう?」
「良い感じぃ、ヤオモモそっちは?」
「問題ありませんわ、すいません砂藤さんこのような事を態々……」
「いいって事よ、俺も毎年毎年頼られてたからな。俺も作る側の方が楽しくていいからさ」
月は既に2月、間もなくに迫って聖バレンタインの日に備えて女子たちは準備を進めていた。思い人の為、仲の良い友達の為に腕を振るって作り出す甘い甘い味わいを作る為に力を尽くす。本来其方に立つ側ではないがお菓子作りならば頼りになりまくる砂藤もスペシャルアドバイザーとしてサポートに当たっていた。彼自身も作る側だった為か急な頼みだったがそれを快諾し指導に当たっている。
「ああ葉隠、そのチョコの温度はもうちょっと下げて良いぜ。上げ過ぎるとダメだから気を配ってくれ」
「う、うん……お菓子作りって大変なんだね……」
「お菓子作りは料理じゃなくて科学なんて言われるぐらいだからなぁ、料理が出来てもお菓子作りは出来ないって人がいても可笑しくはないんだぜ。グラム単位で材料配分間違えて失敗なんてよくある話だからな」
その話を聞いてもなお、葉隠はより闘志を燃やしながら気を入れてチャレンジを続ける。
「ケロケロ、気合入ってるわね透ちゃん」
「うん。こんな風にみんなで集まってチョコ作るなんて初めてで楽しいもん!」
「そうね、皆協力して何かをするなんて楽しい物ね」
梅雨ちゃんの言葉を肯定しながらも本音は別の所にある、皆が分かっているような事だが敢えて追及はせずにそれを見守る。今回のそれに合わせてきっと葉隠は龍牙に告白をするっと皆が思っているからだろうか、だからこそ野暮な邪魔はせずに自分の作業に集中する。実際は既に付き合ってるどころか将来一緒になる約束までしてしまっている訳だが。
「ふうっ……」
一息を吐く。砂藤のお墨付きを既に貰っており十二分においしいそれなら出来るようになっている、だがそれでは不十分なのだ、もっと完璧な物を求める。もっと素人なりに美味しく、いや素人なんて考えが及ばないまでの美味しさを、アマチュアプロではなくもっとその先へ、プロ顔負けの物を作ろうと努力している。
―――いや分かっている、きっとこの段階の物でも
「(―――だから、これは私の
誰にも掴まれない、存在しないゴースト、目指すべきはそれだ。透明というものの本質は何処にでもいてどこもいない事。だけど―――そんな私が唯一居られる場所があの人の隣だ……だから主張したかった、もっと誇りたかった、残したかった。今やだれもが認めるヒーローとなり、次代を担うとすら言われる人に自分の
蛇腔病院から酷く離れた山の中―――そこは激しい戦場へと変わり果てていた、地面は激しく抉れ黒炎によって地面は所々赤く溶けている。一撃一撃によって巻き起こる爆風によって吹き飛ばされている木々の山、そこが本当に自然豊かな山々の一部であったのかと疑問に抱かせる程に荒廃しきっている。それは同時にそこで行われている戦いの激しさを物語る。
「フムッ……矢張り素晴らしいね君の力は、まだまだ底がしれない」
その中央部に立つ戦士、赤黒い外套を纏いながらも各部に施された龍にも蛇にも見える装飾が施された装甲を纏った戦士は身体を焼く黒炎を払うと力の凄まじさに驚きながらも称賛する。それは何方への物だろうか、分からないまま―――そこへ視線を上へと上げるとあるもう一つの山から迫ってくる黒龍の戦士、それは肥大化させて龍の剛腕を叩きつけながらも叫ぶ。
「お前が、戦兎兄さんの力を使うな下種がぁ!!!」
「ヌフフフフ……言ってくれるな、これでも僕はオリジナルに迫れる程度の力はあるんだけどね」
刹那、一撃を防御していた腕が瞬時に肥大化する。まるで龍牙のそれに対抗するかのような幼稚な反骨心、だがそれすらそれにとっては楽しさを生む、そしてそれを龍牙の腹部へと放つ。
「がっ……!!?」
「―――うんそうだね、この組み合わせは楽しい」
『空気を押し出す』+『筋骨発条化』+『瞬発力×4』+『膂力増強×3』。神野事件においてもそれが好んで使ったとされる個性のコラボ、だがそれはその時のそれを上回っている。身に纏う
「僕の中にもそれはある、それがあるから僕は僕足り得る。自らの存在を証明するそれを持つ、君もそうだろう龍牙君。だからこそ君はドラゴンライダー足り得る―――オール・フォー・ワン、それが僕の個性だ」
他者から個性を「奪い」、自分の物にして使える。またそれを他者に与えることも任意にできる個性。それを用いる事は単純に相手の個性を封じるだけではなく自らの戦闘力を何倍にも増幅させる事も可能、だからこそオールマイトをあそこまで追い込む事が出来た。
「―――ガァッ!!」
抉るような空気を弾きながら迫る黒龍は鞭のような一撃が炸裂する、身動ぎさせながらも身体を浮かび上がらせる。同時に解放される黒龍の轟哮は黒炎と共に放たれる。だが再度発射される空気によって炎は抉られて消えてしまった、それでも前に進み続ける黒龍は側頭部を挟み込む拳を振るう。
「―――っ!!!!」
渾身の力、だがそれを防御するように挟まれる腕。肘の裏へと差し込まれるような腕が道を阻む。直後にその腕が無数の鞭のように別れると全身を縛るようにしながら纏わりつきながら激しい閃光を纏う雷電が黒龍の身体を焼く。
「がぁぁぁぁっっ!!!!」
『こいつ……一体幾つの個性をもってやがる!?ンの野郎ォ!!!!』
共に歩みながら戦うヴェノムが力を込める、同時に龍牙の身体が膨れ上がり強引に蛇の拘束を緩めると瞬時に肉体のサイズを元に戻すと脱出して地面へと降りながら右腕から黒糸を伸ばし、それを掴みジャイアントスイングで投げ飛ばして距離を取る。
『おい龍牙なんだあいつ!?一人デタラメ個性の万国ビックリショーか!?』
「それが、オール・フォー・ワンだ……そうやって人から個性を奪い、自らの物にしながらも誰かにそれを与えて支配する……それを繰り返してきた怪物だ……」
『ゾッとしねぇぜ……』
ヴェノムすら戦慄する絶対的に根源的な破滅を齎す元凶の悪、平和の象徴がどれほどまでに苦しい戦いの末にあれを倒した事か……自分はその戦いを体験した訳ではないがその時の波動は感じた、目の前のそれからも似たような背筋が凍り付くような感覚がする。
「フム……」
叩きつけられた
「蛇腕、雷電。何方も上々だ、矢張り君という存在は僕を作り上げるのに適した環境だったようだ、感謝するよ龍牙君」
「誰が受け取るか」
「ツレないねぇ……それでも構わないけどこれでも僕は僕で感謝しているんだよ―――それを受け取って貰おう」
今度は腕が赤い血管のような模様が刻まれた黒く鋭利な触手へと変化しながらそれを一気に龍牙へと襲い掛からせていく、一本一本に悪意の意志が宿ったそれは身体を抉らんと迫ってくる。
『まだまだ来るぞ龍牙ァ!!』
「ッそがぁっ!!」
途中、その触手は龍の頭へと変化し咆哮を上げながら無数の炎を吐き出してくる。その中へと飛び込んでいきながらも喉元へと喰らい付かんとする龍牙、苛烈さを増して行く戦場、戦いの鐘は鳴りやまない。全てが終わった時、何方が立っているのだろうか。