僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~ 作:魔女っ子アルト姫
「りゅっ龍牙は、大丈夫なのか!?生きているのか早く答えろぉ!!!」
「お、落ち着いてくださいギャングオルカ!?取り合えず手を放してください!?」
「答えんかぁ!!」
「落ち着きんしゃいオルカ!!アンタその姿を龍牙が見たらなんて思うのか考えんかい!!」
蛇腔病院とはまた別のヒーローを専門として見る病院へと運び込まれた龍牙、既に意識など無く今にも鼓動を止めてしまいそうな程に弱っている心臓。強い風が吹けば消えてしまいそうな程に弱まった灯のようだったと医師として勤務するスカウティングヒーロー・スカウターは答えた。緊急にスイーツァとリカバリーガールに来て貰わなければ確実に龍牙は死んでいた事は確実だろう。
「いえお二人の力を借りたとしても死なないようにするが精一杯です、寧ろ何故生きているのかと思う程の状態です……」
「オルカ、アンタは知ってるね。龍牙はダメージを追い過ぎると鱗で身体を補強する事を」
「今、その鱗が全身を覆っちまってるんだわさ。その鱗があるからあの子は身体という入れ物を維持出来ている、本当にギリギリ、首皮一枚で現世に留まっているような状態よ」
「りゅっ龍牙っ……」
応援としてヴェノムが連れてきたのはエンデヴァーだけではなく、ギャングオルカにリューキュウ、ミルコに戦兎などといったトップヒーローばかりだった。その多くは現場の見聞や多方面に散って調査を行っているが、その場に残っている者はあのギャングオルカが茫然自失、弱弱しい声で身体を震わせている姿に言葉を失う。それは彼自身が龍牙に厳しく接している事を知っているからだろうか、それとも本当の父親のように彼の事を愛しているからだろうか。
「落ち着けオルカ、リカバリーガール。龍牙君の容態は」
「……」
「リ、リカバリーガール……あの子は、龍牙は!?」
エンデヴァーの問いに答えてくれないリカバリーガールにリューキュウが声を出した、縋るような声と事実を恐れながらも望んでいる言葉が来ることを祈っている姿は酷く痛々しい。オペに同行しその身体を見てしまったスイーツァですら何も言わない、何も言えない程に残酷な現実がそこにあったのだ。
「……生きてはいるよ、だけど……余りにもダメージが深刻過ぎる……」
「呼吸器官の7割破損、胃は当然として内蔵が複数機能不全に陥ってた」
『っ……!?』
余りにもエグすぎる重傷だった、オールマイトが嘗てオール・フォー・ワンと戦った際に受けた傷。それを越えてしまう程の傷を受けていた、だがそれでも尚生きている事に驚きを隠せない。普通なら死んでいても可笑しくない筈なのに龍牙は生き続けていた。
「ヴェノムが処置してくれたから肉体的な欠損は治せたのよ、ヴェノムにはそう言う力がある。だからそっちは心配ないわさ」
「良かったっ……」
「それでも未だ瀕死の重体よ、何時急変しても可笑しくはないし急変したら……7割以上の確率であの子は死ぬ」
それでも状況は最悪である事に変わりはなかった。幾らヴェノムでもそれだけの損傷をした臓器を完璧に復元出来るわけではなく、ある程度の形まで治して後は何とか自己治癒どうにか出来る所までしか持って行けなかった。これだけの手を尽くして確実な死を遠ざけて、確率な敵な死にするのが精いっぱいな状態。
「……こういう言い方はしない方が良いのでしょうが、彼を楽にしてあげる事も考えなければいけない。こうしている間も彼は苦しみ続けている、いえすいませんなんでもありません」
その言葉はいけないと分かっていた、だが医者としてこれ以上ての施しようも無く個性による回復も難しく生き延びさせようとするほどに苦しめてしまうのであれば……安楽死を考えるべきではないかというその言葉は理解出来ていたが故に誰も彼を責めなかった。沈黙の中でスカウターは去っていく、そしてエンデヴァーが口火を切る。
「龍牙の事も気になるが、それ以上の事がある。彼をここまで追い込む存在だ、オール・フォー・ワンの複製……まさかそのような者が現れるなど……」
「俺が見つけ出す、龍牙の仇は俺が取る……!!」
「付き合うぜ……姉ちゃんがぜってぇ仇取ってやっから今は、休んでろよ龍牙」
これ以上対処出来ない事ならば対処出来る事をする方が良い、それは誰もが分かっている事。分かっているからこそ意識してそちらに歩いて行くしかない。戦兎とミルコはそれを率先して行おうと殺意と怒りに満ちた瞳を作っていた、ギャングオルカを除いた中で一番親密な関係を築いていたのはこの両者、一方は兄として、一方は姉として過ごしてきた。それだけではない。
「おいヴェノム、そいつは―――本当に俺のドライバーとトリガーを使ってやがったのか」
「……ああ、間違いない。そう言ってたからな……」
エビルブラッド、それが使っていたのは何方も戦兎が開発した物。開発者としてそのケジメをつけない訳には行かない、自分の全てを擲ってでも倒さなければならない相手。
「私も手伝うわ、私は別に龍牙のお姉さんって訳でもないけれども……それでも私はあの子の事が好きよ。力になってあげたいから、私にも……」
「ああ頼むぜ、一人でも多くの力を借りてぇ」
インターンの受け入れをしているリューキュウもそれに賛同する、彼女の場合のそれは好意云々ではなく純粋に人として好いているという事。サイドキックとしてだけではなく導くと決めつつも支えてあげたいと思っている。そんな彼の事を此処まで追い詰めた相手を倒す作戦には参加するに決まっている。
「オルカさん、アンタも当然参加するよな」
「……」
「おい、おいなんか言え―――」
「寝言をほざくな―――奴は俺が討つ」
そこにあったのは
「やぁっ皆、集まってるね」
「校長先生!?」
そこへ一つの影が現れた、それはもう一つの父親である根津であった。普段から明るい表情をしている彼ですら、今は暗いそれを作りながらも無理をして声を高くしている。
「話は聞いた、龍牙は……本当に頑張ってくれたんだね……本当にっ……」
「それはヴェノムが持っていたもので確定ですよ、あいつは……病院の内部を完璧に調べ上げた」
「褒めてあげないとね……頑張った息子は精一杯褒めてあげないと……」
「龍牙君、遅いなぁ……メールで頑張ってねって送ろうかな」