僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~ 作:魔女っ子アルト姫
「くっ黒鏡少年本当に大丈夫なの!?君、ついちょっと前まで意識不明で……」
「大丈夫、とは言えませんね……ミルコ姉さんの頭突きが鳩尾、戦兎兄さんの腕が肋骨、とどめの師匠の腕が俺にCRITICAL STRIKEしましたから……超いてぇ……」
「安心していいよ龍牙、あの馬鹿達なら今別室でリカバリーガールとスイーツァに説教されてるから」
漸く目覚めた龍牙にとって三人のそれはありがたくありながらも強烈な一撃であった事は確実だった。絶叫と共に悶絶して意識を喪失、大慌てのナースコールによって何とか再び瀕死になる事は食い止められたのだが……それを行った根津曰く馬鹿達はお説教中である。あの根津が馬鹿と呼ぶ当たり割かしマジでキレている模様。同席しているのはオールマイトこと八木 俊典、彼も彼で龍牙とは話をしなければいけない身にある。
「しかしよくも無事でいてくれた……ヴェノムが居てくれたとはいえ君は今の私以上の傷を負ったと聞いて、正直血の気が引いたよ。例え生きていたとしても君はヒーロー活動所か日常生活すらまともに遅れ無くなる所だった……ヴェノム君への感謝を忘れてはいけないよ」
「分かって、ますっというかもう言いました。そしたら最高級のスイスチョコを10キロで手を打つって言ってましたよ。幾らすると思ってるんだか……まあもう発注しました」
「流石手が早いねっというか凄いお金あるのね」
「まあ、色々ありましたから」
何の取り留めもない会話を見つめる根津は普段通りの顔で見つめるが、それが堪らなく嬉しかった。目覚めるどころか生きてくれるかさえも分からない状態だった息子がこうして元気……うん、元気でいてくれる事だけでもう神に感謝したくなるような気分になっている。取り敢えず後で3人への説教は自分も参加しようと決意する。
「それでその……起きて早々で申し訳ないんだけど……」
「ええ解ってますよオールマイト、エビルブラッド……いやオール・フォー・ワンについて俺の知る限りの事を話します」
当然、オールマイトの目的はそれしかない。彼の宿敵であった存在、それの復活に等しい事態。しかもその力は全盛期のそれに匹敵する、それに対抗できるヒーロー何で世界を探しても現時点で存在しない。ワン・フォー・オールを継承した緑谷ですらフルでそれをつかいこなせるわけではなく、現状でも多く見積もっても5~6割が精々だろうか。それ程度ではオール・フォー・ワンには太刀打ちも出来ないのが現実。
「それに加えて奴は戦兎君のドライバーをも手にしている……SHIT!!自分の無力さが腹立たしい……!!」
「しょうがないさオールマイト、これに関しては彼方が上手だったと認めるしかない。僕だってまさかこんな事になるなんて予想もしなかったからね、敗北した場合の案、それが死柄木だと思っていたのがまずかった。だとしてもまさか人間の中に自分の複製体を仕込むなんて普通考え付かないけどね」
それもきっと龍牙だからこそ成立した奇跡のような荒業、他の人間ではそんな物を仕込んだとたんに破裂してしまう筈なのにドラグブラッカーを抜き取った龍牙には器の余りがあったのだろう、それは龍牙が残ったそれを鍛える程に大きく強くなっていった。だから黒龍を戻すと共にそれを埋め込む事に成功したのだろう。
「俺も怪我が完治し次第加わります、今度は仕留めます」
「っ!?いやいやいや黒鏡少年君自分がどんな事になったか分かってるの!?君瀕死だったんだよ!?ギャングオルカがガチ絶望するぐらいに瀕死に重体、なんですぐに動こうと思うの!?」
「オールマイトだけには言われたくない台詞っすね……」
「うん、それに関しては僕も同意なのさ!!」
「グフッ……!!」
オール・フォー・ワンを一度倒した直後、壮絶な怪我を負っているのにも拘らず活動をしようとしていたオールマイト。周囲から必死に止められていたのに人々の笑顔と安心の為に戦おうとした彼にだけは言われたくはない、確かに事実だろう。
「でも僕もオールマイトの言葉には賛成さ、オールマイトの全盛期とタメを張る相手と戦うのは無茶だ」
「猶更です、それが事実なら今この世界に居るヒーローに勝てる奴なんていない。勝つにはヒーローを犠牲にする事を前提した戦術を考えるしかないけどそれは出来ない。だったら一度戦っている俺が適している、この身にはあいつの攻撃が刻まれた―――何よりあいつは俺が成長させてしまった怪物、俺が狩るのが道理です」
その瞳を見て根津はそれ以上の反論を言う事を控えた、なんて澄んだ瞳をするんだろうと思わせた。あれだけの目に遭いながら、生死の境を彷徨い、いつ死んでも可笑しくない状態に陥ったのにも拘らず尚戦う意志を見せ続けている息子に根津は何も言えなくなった。そしてその瞳はオールマイトと同質の物でありながらも確かな炎が宿っていた。
「勝算があるのかい?」
「皮肉な話ですよ、あいつは俺に個性を埋め込んでやがった。それは俺に進化を齎す、ビヨンド・ザ・リュウガもその恩恵を受けてたんです。正義は常に悪より生まれ出ずるとはよく言ったもんですよねオールマイト」
「……君はその個性を受け込まれて何ともないのかい?」
「ええ、如何やら俺の肉体は言うなれば脳無の素体としても超極上品らしいですよ。まあそれも師匠の鍛錬の結果でしょうけど」
「オルカのやりすぎ鍛錬がまさかの効果を齎すとはねぇ……これはおいそれとやめろと言いにくくなっちゃったよ」
良くも悪くも龍牙を育てたのはオルカの鍛錬の数々だった。翁すら眉を顰める鍛錬の数々が今の龍牙を生かす糧となっていた。一つでもかけたら今此処に龍牙はいなかったのが事実、根津もやめて欲しいと言いたかったが……これでは本当に言えなくなってしまう。
「兎に角俺は戦いますよ、それが俺です。次代を担うとか以前に一人のヒーローを志す者として、そうありたいんですよ」
「……僕としてはもう無茶をしてほしくはない、親としてあんな姿を見てしまった以上もう戦って欲しくないと思ってしまった。でも僕は君の意志を強制するつもりはない―――思いっきりやりなさい龍牙、但し絶対に帰ってくる事、でないと……葉隠ちゃんに全部バラすよ」
「そ、それだけはご勘弁を……!!」
「葉隠少女……?」