僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~ 作:魔女っ子アルト姫
「龍牙、もう随分と良いらしいな」
「だいぶ良くなってきましたよ」
病室に訪れていたのは師であるギャングオルカ、あの一件で懇懇と受けた説教から漸く訪れた見舞い。あの日からまだ3~4日程度しかたっていないが龍牙は急速な回復を見せており既に身体を起こし、院内を歩ける程度には体力も怪我の具合も良くなっている。
「復活も近いという訳か……お前のタフネスさには俺ですら呆れるな」
「それを形にしたのも師匠ですけどね、こんなにしぶとくしたのも全部師匠の鍛錬ですよ。根津父さんがまた辞めさせる口実がなくなったって嘆いてましたよ」
「むぅっ……」
「まあ俺としてはやめる気はないんですけどね」
彼とて苦痛塗れな修練であることは重々承知しているがその先に乗りこえた先の自分はまた一つ成長している事も自覚している、昨日の自分を越えていく事に何かの達成感を感じつつもそれらが自分を生かしている事も理解し、今日を越えれば明日の自分を生かす為に動いているのかもしれない。
「あと少しで完治して退院です、そしたら―――叩きに行きます。なっドラゴン」
『?』
クワァ~と欠伸をして眠り始める頭の上のドラゴン、何時もの光景だが本当にAIなのかと疑問に思いたくなる。そんな光景を見つつもオルカは身体を震わせながら龍牙に問った。
「龍牙、お前は恐ろしくは無いのか……仮にも自らを瀕死に追い込んだエビルブラッド、あのオール・フォー・ワンに何の恐怖も感じないのか」
「瀕死なら何時もの師匠にされてるじゃないですか」
「茶化すな、俺のそれとお前が味わった物は全く別物だ」
事実としてオルカのそれは酷い場合でもリカバリーガールの治癒を受けて数日すれば完治する程度の物だが、今回のそれは大手術の上にヴェノムの能力で内臓などを処置したからこそこうして生きていられるレベルの超重症。あのオールマイトの怪我すら超えるもの、それを齎した相手と再戦すると本気で龍牙は言っているのである、端的に言えば如何してそこまで言えるのか疑問が尽きない。
「また、同じような傷を……いや今度こそお前は死ぬかもしれない。俺はそれが怖い、お前が心からヒーローになりたいと願ったあの日からそうなるかもしれないという事を考えなかった日は無かったさ、だからこそそうならないように鍛錬を課してきたつもりだ。だが―――奴はそれを越えている」
実際にオール・フォー・ワンと直接組み合った身だからこそ知っている、オールマイトに一度倒され全盛期とは程遠く牙を削がれていたにも関わらずあれだけ圧倒的な力を発揮する恐ろしい存在。それと全く存在が最も強かった姿でいる、龍牙の仇を取ると勇んでいたがそれでも勝てる見込みなんて極少数であり倒したオールマイトはもう戦えないから自分達で戦おうにもどうやったら倒せるのかも分からない。
「師としては俺はお前を送り出すのが道理だろう、だが……だがな!!!俺は失格かもしれんがお前の親だ、親が我が子が確実かもしれない死地へと向かおうとするのを容認など出来るか……!!!考え直せ、奴は俺が倒す」
「らしくないですね―――父さん」
敢えて龍牙は父と呼ぶ、普段からそう呼ぶなと強く言うオルカに対してそう呼んだ。
「確かにオール・フォー・ワンを倒したオールマイトはもう戦えない、だから今を生きるヒーロー達の手であいつを倒さないといけない。だからってそれはオールマイトの代わりに戦うって事じゃないですよ、今を生きるヒーローとして唯ヴィランと戦うのと同じ。それだけです」
「だが……」
「過去は過去で割り切れ、マイナスを見続け、それだけを求めてプラスになるのか、貴方が言った言葉ですよ」
ヒーロービルボードチャートにて自分が言った言葉、未だオールマイトの背中を求め続けている全ての人間に向けて言った言葉。それを返され思わず龍牙を見るとそこには戦士の顔をした龍牙が居た。そして龍牙は拳を握りながら真っすぐと見据えてくる。
「オールマイト程ではないですけど、俺はあれとは10年以上の因縁がある。忌まわしい楔を俺に打ち込み、俺という存在を大きくさせながらも糧にしてあの形にあったエビルブラッド。もう禍根を残したくはないし―――あれを野放しにすれば超常戦線を叩く時に支障をきたす。あれは俺が食い止めます」
「龍牙、お前が責任を感じる事など無い」
「責任なんて思ってないですよ」
シンプルな答えでしかない、単純にエビルブラッドに負けたくない。そんな単純かつ幼稚な思いがある、あれは自分が大切にしている名前と同じ物を名乗った、ドラゴンライダー・エビルブラッドと名乗った。それを名乗った相手に敗北した今の自分にはその名が無いとも思っている、だから今度はその名前を奪い返し本当の意味での自分を取り戻す為に戦うつもりでいる。
「……分かった、もう何も言わん。好きにすればいいだろう」
「そうさせて貰います、まあ反対されても戦いますが」
「……お前、一度死に掛けて太々しくなったか……?」
「かもしれませんね」
そう言うと親と子は同時に噴き出して笑い合った、底抜けの笑い。病室に笑いが満たされると唐突に腕をぶつけ合いながら互いの瞳を見つめる。
「やるなら徹底的にやり抜け、だが必ず勝て。それが条件だ」
「承知しました師匠、絶対に勝ちます」