僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~ 作:魔女っ子アルト姫
「……セイ、ヤッ、ハッ!!」
深い深呼吸の後に一気に身体を動かす。空気を震わすような震脚の崩拳、そして肘打ち。漸く動かせた身体に脈動するのが分かるのが全身全てが歓喜している事に頬が緩む自分を自覚しながらももう完璧に身体が完治した事を把握する。確かにあれだけの瀕死の重傷だったのにも拘らずこれ程までに完全回復する自分の身体というのは相当にやばいらしい、これも全て龍を宿す故だろう。
「もういいみたいね、本当に良かったわ。貴方の元気な姿を見れて、お姉さん嬉しいわ」
「ご心配おかけしました、でももうパーペキに元気ですよ。ちょっと身体が鈍っちゃってる感じがしますけどそれはおいおい解していきますよ」
少しばかり涙ぐんでしまっているリューキュウを前にしても未だに身体を解している龍牙、今日は念願の退院の日。回復は少し前にしていたのだが余りにも回復が早過ぎるので入念な検査が行われたので今日にずれ込んでしまった。
「それにしても龍牙の回復力って凄いわねぇ……私も他のヒーローに比べて回復力は強い方ではあるんだけど……龍牙ほどではないわね」
「ドラゴン系の個性ってそう言う方面も強いんですかね」
「そんな話は聞くわね、実際大型動物とかの個性を持ってる人の回復力とかは強い傾向にあるらしいわ。ギャングオルカもそうだった筈だからその延長で考えればそうなのかもしれないわね」
そんな会話をしつつも車に乗り込んで病院から去っていく、このまま事務所に戻ってもいいのだが……流石にそんな事はさせない。向かうのは当然雄英。
「あっそう言えば俺、入院中完全に授業とかみんなに連絡とか一切入れてなかったんだった……やばい、如何しよう……」
「大丈夫よ、その辺りの言い訳はこっちで作ってあるから。貴方の能力を見込んだヒーローからの協力要請とか戦兎の実験に付き合ってたって事になってるわ」
だとしても異例中の異例のような物だが、そこは龍牙の特殊能力について相澤がどれだけ調査に貢献する能力なのかを説明を入れてくれたおかげで皆納得してくれたらしい。それでも一部の生徒は何処か懐疑的な視線を作っていたが……そこは自分が上手くやるしかないだろう。
「でも本当に良かったわ……龍牙が元気になって。私、あの時あなたを行かせたことを本気で後悔しちゃってたから……あそこで止めていたら貴方は大怪我をする事も無かったって」
「それはないですよリューキュウ、ヒーローを志す限り怪我とは切っても切れない間柄ですし今回の事であの存在を知れた事はとんでもなく大きい事です。あれが奇襲しただけで対応しきれずに全てが終わります、今回の事はそれを含めて本当に意味と意義があった事です」
何の淀みも震えも無く、隙間も入れる事も無く応える龍牙。彼の中に恐怖なんて感情は欠片も無い、欠如している訳ではない。本気であれが意味がある事だと信じて疑っておらずそれを次へと繋げるつもりしかないのだと分かる、客観的に見れば確かにそうだろう。
「……本気でそう言える人間なんてそうはいないわよ、瀕死になってたのに。オールマイト位なんじゃないかしら、そんな事言えるのは」
「オールマイトほどじゃないですよ、あの人は傷ついたのままで戦い続けたんですから足元にも及びません。俺は俺なりに戦うだけですよ」
「……そう、それじゃあ私も応援させて貰うわね」
気付けばもう雄英に到着していた、荷物を下ろしながら身体を伸ばす龍牙を見つめるリューキュウの顔は姉……というよりも何処か母親のような温かさと慈愛に溢れていた。ヤンチャ盛りで元気が有り余っているような息子を応援し見守るような優しい瞳、そんな彼女は龍牙を軽く呼ぶと綺麗な包みで覆われた物をポンと胸に押し付けるように渡した。
「あのこれは……?」
「あらっ気付いてなかったのかしら、今日は2月14日―――バレンタインデーよ♡私からの贈り物よ」
「あっそっか……もうそんな……すいません俺準備できてないです……」
「こらこら、此処は女の子に華を持たせるのがマナーよ。貴方の贈り物はホワイトデーに期待させて貰うわよ♪」
「はい、必ずいい物を」
と受け取った時、リューキュウは龍牙を胸に抱き寄せて優しく頭を撫でた、伏せられた瞳は優しさに溢れている。
「リュッ……リューキュウさん……!?」
「貴方はこれから、きっと大変な道を歩むのね……それはきっとあなたを傷だらけにするし瀕死の重傷だって負わせるものかもしれない。だけどきっと止まらず走り切るのね……だから私にはこんな事しか出来ないの、健闘と無事を祈る事……それだけかもしれないけどもしも疲れたら……何時でも休みに来なさい、私は待ってるから」
そう言われて想起するのは過去の情景。まだ幸せだったころの子供時代、母であった乱に同じような事をされたような気がする……最早朧気で思い出せるような状態ではないだが……母の温もり、そう言ってもよいかもしれない物に包まれている……非常に心地よい。
「……有難う御座います……」
「いいの、頑張ってね龍牙」
そう言って額に軽い口づけをすると彼女は車に乗り込んでそのまま去っていった。その車を見送りながら改めて感じた事を思わず口にしてしまった。
「俺は本当にいい大人に恵まれたな……」
次回―――葉隠さんとのお部屋デート。