僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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番外編、もしも龍牙がヴィランだったら編。

尚、ヒロインはトガちゃん。


ヴィランパート:闇の黒龍編 その1

世界総人口の八割が"個性"と呼ばれる不思議な特殊能力である力を持つ超人社会。ある時、中国で光り輝く赤ん坊が生まれ、世界は新しい流れに呑まれていく。不可思議な能力、のちに個性と改められる力を持った人間たち。『超常黎明期』とも呼ばれたその時代の中で徐々に個性という力は超常というカテゴリーから常識というカテゴリーに変化していった歴史を持った世界が存在する。その世界では個性は当たり前、常識であり強い個性で在れば憧れを持たれたり将来への道を開けるという事もある。

 

―――だが、逆に力が強すぎる影響で大きな傷を負ってしまった者もいる。

 

「リュウ君、リュウ君起きてください」

「……ぁぁっ……」

「大丈夫ですか、魘されてましたよ」

 

響くように頭痛が脳裏を揺るがしている、悪夢の中に無理矢理付け込まれて強引に身体を染められたかのような不快感が身体にべったりと張り付いて気色悪い。理性を鈍らせる眠気を無理矢理頭を振るって消し去ると目の前で不安と心配が入り混じった表情を作っている連れが此方を見つめている、如何やら長い時間魘されていたらしい。

 

「悪い心配かけたか」

「少しだけ……だからずっと手を握ってました、握ったらリュウ君の顔が少しだけ安らかになってたので」

「……悪いな」

 

 

―――ヒィッ!!?なんだこれは……悪魔、いや怪物!?

 

 

―――ヴィ、ヴィランだ、ヴィランが龍牙をっ……!!

 

 

―――ヴィランだ早く通報しろ!!

 

 

自分の中にある中で最低最悪の悪夢、幻でありながらもそれは未だに身体を蝕み続ける幻肢痛となって激痛を与え続けてくる。解放されたはずなのにいまだに囚われた自分がいる事にため息が出てしまう、そんな自分を助けるように寄り添う一人の少女の気遣いがそれを癒してくれていた。途中から悪夢が一転して彼女との出会いに変わった、そんな彼女が自分を救ったのだろう、あの悪夢から。

 

「いいんです、私はリュウ君と一緒に居れるだけで幸せなんです♡リュウ君大好きですから、でもリュウ君が辛そうなのは嫌ですからそれから救います」

「もう救われたんだよ俺は」

「いえ今だけでも……忘れさせてあげますから」

 

そう言って彼女が覆い被さって来た、手首を抑えつけるかのようにベットに押し付けるようにしてマウントを取ってくる。そして同時に彼女の瞳の中にあるのはある種の狂気的な愛情だけである事に気付くとこれはもう何をしても無駄だという事に肩を落としながらも下手に抵抗する事はしなかった。

 

「一応言っておくけど……朝飯遅くなるぞ」

「いいんです朝ごはんはリュウ君の後で♪」

「はぁっ……まあいいか、おいで―――トガちゃん」

「はいリュウ君♡」

 

そんな事を言われた彼女、トガちゃんこと渡我 被身子(トガ ヒミコ)は理性を投げ捨てながら押し倒した彼の唇に自分のそれを強く押し付ける。それを受けたリュウ君、 龍牙は受け止めながらもそっと彼女の口内へと舌を入れながら彼女の愛に応えていきながら食欲よりも愛欲を優先させた。

 

 

『―――やぁっ調子は如何だい、慣らしは上々かい?』

「アンタか……ああまあまあって所だ、黒龍と一体化したアンタが言う所のサバイブの力は既にものにした」

『流石だね……僕が認めた次代の僕の器なだけはある』

「そりゃ弔に言ってやれよ、喜ぶぜ。俺はあいつの右腕なだけだ」

 

結局朝食は昼食に化けてしまった、全身に不快感こそなくなったのだが代わりに疲労感が纏わりついている。同時に幸福感もあるから何とも言えないのだが……その後に丁度昨日漁港で買い付けてきた海鮮を使った特製チャーハンを共に食べていると携帯が鳴り響いた。彼女にも聞こえるようにスピーカーをONにしてテーブルの上に置く。

 

スピーカーから響いてくる優し気な声色だがその奥秘めている悪性が抑えきれていないのか、トガちゃんも僅かに眉を顰めるようにしている。彼女としては龍牙にとっての恩人である彼に対して敵意を向けるつもりはないのだが本能が危機を察知して警戒せざるを得ないのかついつい構えを取ってしまっている。

 

「それで今日は態々連絡をくれたのは何か用があるって事だろ、何も用がないのにも関わらずにアンタが俺に声を掛けるなんて事は無いだろうからね」

『ンフフフ……正論だけどね、僕としては保護者としていや父親として君の声を聞きたかったというのもあるのさ』

「そりゃまた……んでどうだい、父さんだったら声だけでも俺の強さが測れるんじゃないのか?」

『随分と言うようになったじゃないか……そうだね、今の君なら……オールマイトも本気で戦わなければいけないレベルだろうね』

 

平和の象徴(オールマイト)、現代における生きる伝説(レジェンド)。文字通りの規格外、その全力の一撃は天候すら変化させるほどの莫大な力を秘めている超人社会の英雄の象徴(イコン)。彼が居る事で日本のヴィランによる犯罪発生率は他国と比べると雲泥の差、一桁に留まっている。それが本気で対処しなければいけないレベルにまで自分の力は高まっていると自分の義父にそう言わせる、自分は漸くそこまで上り詰める事が出来たのだろう。

 

だがそれは同時に今の自分ではオールマイトを倒しきれないという事の証明でもある、今の自分がいくら戦った所でオールマイトの全力を引き出す事が精々で倒しきる事は不可。分かっていた事だが些か腹立たしい事でもある。

 

『そして君には近々雄英高校に行うつもりの襲撃作戦に参加して欲しい』

「雄英高校……ってあの雄英ですか?あの超エリート校の」

『そうだよ渡我君、そこにオールマイトが教師として赴任する事になっている』

「成程……にしても随分と思い切った作戦だな」

 

ヒーローを目指す人間にとっての試練にして憧れの地、最難関のヒーロー科が存在している高校こそが雄英高校。そこは同時に多くのプロヒーローが教師として在住している場所でもありそこを襲撃するなんて愚かな事、としか言いようがないかもしれない。だが逆でもある、だからこそやる価値がある。そこを襲撃する、という事だけで大きな意味を成し、ヒーロー社会を揺るがす一石に成り得る。

 

「可能であればオールマイトの殺害、そして雄英の失墜か……無理ならば即座に退いて危機感を煽りつつ此方の名前を売るだけでも良いってか」

『そう、弔は君という右腕を得てからどんどん成長しているさ。オールマイトと互角に打ち合える脳無さえもその為の捨て石にするのもありだと考えているそうだからね、今回はあくまで此方の力を見せ付ける事が真の目的、他の事なんて何時でも出来る事さ』

「成程な……まあ弔が出るなら俺が行かない訳にも行かないだろ、んで決行日は?」

『追って知らせるさ、それまでに準備を済ませておいてくれ。じゃあまた連絡させて貰うよ』

 

直後に連絡は途切れた、遂に本格的な動きをする時が来た。今日までひっそりと影に潜みながら力を蓄え続けてきたかいがあった。間もなく始まる動乱の嵐の時代にこそ自分の力は輝きを放つ黒い太陽と化す、黒い炎を纏いながら闇を照らす黒き灯、それが照らすものこそが望む未来を見せてくれる人間の道を指し示す。

 

「トガちゃんも来るかい、俺的には君にいて欲しいんだけど」

「行くに決まってます、私はリュウ君のフィアンセで黒い太陽の隣で微笑む黒き月の女神です♡」

「聞いて見ただけだ、だからそんな顔するなって」

 

闇へと堕ちた黒龍は闇の中にてなおも輝き続ける、炎は常に光と熱を放つ。だがその光は悪を導き闇を灯す元となる。闇の黒龍は隣にて微笑み彼を愛する黒き月の女神と共に闇を照らす黒き天の星となる。それが重なり一つとなった今―――超人社会が揺るがされる大事件の引き金となる。


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