僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~ 作:魔女っ子アルト姫
「にしても本当にこれ派手だな……その内慣れるのかな……個性さえ発動させればこれじゃなくなる訳だし……こういうのが一種の流行りなのかな……」
シールド親子は久しぶりとなるオールマイトとの再会と積もる話もあるらしいので龍牙はコスチュームの手応えを掴む為にグラウンド・βの使用許可を取ってそこに立っていた。酷く派手な配色だが実際身体にこれ以上ない程にフィットしてしまっているそれに何処か肩を竦めるしか出来ないがこのコスチュームは出来るだけ身に纏っておく事に意味があるという事らしい。
究極的に言えば龍牙の個性はコスチュームに左右されない強さを誇り、コスチュームの補佐を受ける必要が無いというかコスチュームが補佐出来ない部類の個性に入ってしまうからである。個性は纏う物に左右されないが纏う物も個性に何も齎さない。故に開発されたのがナノマシン採用型、常に纏う事で龍牙のポテンシャルを常にMAX以上にするという目論見がある。
「……」
軽く頭の中でイメージを作ってみる、自分の普段の恰好とも言える雄英高校の制服。するとナノマシンがそれを検知したのが自動的に形を変えて配色なども変更されていく誰もが知る雄英高校の制服へと変貌してしまった。これこそがコスチュームの究極系だとシールド親子も豪語する、着替える必要も無く、普段纏う物に変貌する物、酷く合理的な物だと相澤も絶賛するだろう。
「すっげっ……」
一瞬、それならコスチュームで普段の生活を送ればいいのではと思うのだが……考えて欲しい、コスチュームの中には個性の事を尊重したりして出来るだけ肌などを晒す物がある。ミッドナイトの物なんて最たるもの、あれで日常生活を送れなんて最早拷問レベルである。なので正しい事だと思い至る、そしてドライバーを装着して変身しながら駆け出して行く。黒炎と共にナノマシンが身体を覆い尽くしてドラゴンライダー・リュウガとなる。
「っ―――なんだこれ、身体がクソ軽い……!!」
全身がまるで羽毛のような軽さを感じている、軽く跳躍すればあっという間にビルの上へと飛び乗ってしまう。それだけではなく網膜投影されている情報には自分が今どれだけの力を使ったのかのメーターや身体の状態が詳しく表示されている。確かにこれは形を変えたアイアンマンのスーツだ、その意味を漸く理解した。
「……これってやろうと思えばリパルサーとか出来るのかな……」
『はい出来ます』
「っ!?」
突然響いてきた声に咄嗟に戦闘態勢を取ってしまうのだが、その声はスーツ内部から聞こえてくるような気がしてきた。
『こんにちわユーザーリュウガ』
「もしもし、もしもし何方!?」
『データアップロードによる自動調整が終了しました、ビルドドライバーとの並列使用により全機能アクセスが可能となりました。これより貴方のサポートを行います。宜しくお願いします』
「ああはい、えっと……待って俺のサポート……ってもしかしてスターク社長が作ったAIとか?」
『そうです』
「OH……」
本当のあの社長は一体なんつう物を作ったのだろうか、デヴィッドもメリッサも一切教えてくれなかった事。使って自分で体験した方が早いと思ったのだろうかそれとも社長が独断と偏見で勝手に組み込んだ機能なのだろうか……もうこのコスチュームに出来ない事を探した方が早い気がしてきた……。
「えっと、まあこれから宜しくスーツのお姉さん。君名前は?」
『名称は設定されておりません、お好きなようにお呼びください』
「そっかそれじゃあ……シャナはどうかな」
『シャナ、ですか。クエレブレというドラゴンと共に居る妖精の名ですね、了解しました。名称をシャナで登録します』
AIらしくありながらも何処か物腰が柔らかな言葉遣いに本当に人間と会話しているような気分になる。あの社長は何が出来ないのだろうか、当人に出来なくても金で何とかなるのだから何もないのではないだろうか……。
「……取り敢えずシャナ、これから宜しく」
『此方こそ』
「よし、行くかっ!!」
妖精のような相棒の登場に少し驚くが、兎も角このコスチュームの感覚を早急に掴む事にする。屋上から流れるような動作で飛び降りる、が落ちるよりも早く外壁を掛けるようにしつつ速度をある程度制御しながら着地すると即座に駆け出して行く。単純に身体が軽いように感じるだけではなく本当に自分の力が底上げされている。
「スラスターッ!!」
以前、悪士 善魔との戦いで習得したバスターベントの応用編、黒炎を放射する事で推進力を確保して自由飛行を可能とした力。腰部から幾つかの噴射口が付きだすとそこから炎を噴き出して身体が浮き上がっていくがその直後に背中から翼が出現してそれを使って飛行へと切り替わっていく。
『拡張戦闘モードを起動、飛行形態へ移行』
余りにも自然だったので自分もそれを受けれてしまっていた、最早単純な個性だけではなく同調したナノマシンすら自分の一部。酷く自然に、当たり前のように扱えてしまっている。最初から翼があったかのように飛び回れている、確かにドラグブラッカーの事を菅賀れば自然かもしれないが此処までくると怖さまで覚えられてしまうレベルの充実っぷりである。
「―――これが俺の新しい……」
『龍牙、連絡が貴方の携帯に入っております』
「連絡……って誰から」
『非通知です、中継できますが如何しますか?』
「繋げてくれ―――はいっ」
恐らく出来るだろうと思ったやっぱりできた、網膜内に通信画面が表示されて視界の邪魔にならないように端に移動する。そして音声の大きさを示すグラフが揺れて声が聞こえてきた―――それは自分が戦うべき相手からだった。
『やぁっ龍牙君、退院おめでとうと言わせてくれ』
「っ―――エビルブラッド……!!!」
『フフフッ如何やら元気そうで何よりだ』
自分に通信を送って来た相手はあのオール・フォー・ワンの複製体であるエビルブラッド、それが自分の携帯に掛けてきている。その事に僅かに心拍数が上がるが、シャナが文字で切断と逆探知を試みるかと聞いてくるが、あれならそれは意味が無いと首を振りつつも極めて冷静になりながらそれに応える。
「ああ、お前のお陰で死に掛けたがもう元気いっぱいだ―――次はお前を倒す」
『言ってくれるねぇ……あれだけ僕に負けておいて』
「ああ、だが俺はもうあの時の俺じゃねぇ」
『―――ああ分かるさ、その声に込められた覚悟と思いがどれほどの物なのか……今回連絡したのは君に提案をしたいからさ』
「提案……?」
『ああっ―――決着を付けよう』
その発案に眉を顰めつつも相手も自分と同じ事を望んでいると確信する、あれも恐らく自分を消す事で漸く前に進む事が出来るのだろう。言わば、エビルブラッドにとって自分を殺す事は成人の儀式と同じ。それをこなしてこそ本当のオール・フォー・ワンの後継として前に進めるのだろう。
『ヒーロー達が超常戦線に仕掛ける時に、一騎打ちをしよう』
「態々俺が罠に乗るとでも?」
『ンフフフフッ……そうだね、じゃあ交換条件だ。ヒーロー達の作戦成功確率を高める為に―――僕が一手打って上げようじゃないか』
その見返りとして自分と戦えという事、一体何をするか分からないが―――そっちがその気ならば、乗ってやろうじゃないかと龍牙は乗った。
「良いかよく聞けよエビルブラッド―――その時に本当の意味で決着をつけてやる」
『望む所だよ、じゃあ待っているよ』
当然のように完備されるスーツのお姉さんことシャナさん。
イメージ的にはANUBISのADA。
本当あの社長に出来ない事って何だろう。