僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~ 作:魔女っ子アルト姫
その日、ヒーローは決して浅くはない傷を受けた。だが同時にこれ以上にない物を得た。超常解放戦線は事実上の崩壊、幹部の一部は逃げ延びる事に成功したらしいがそれでも幹部の大部分だけではなく頭目の死柄木 弔の打倒に緑谷達が成功した事で大が付くほどの成功を収めた結果となった。決して容易くも無く、苦難ばかりの勝利ではあったが明確な価値があった勝利に皆が胸を撫でおろした。
超常解放戦線への強襲、成功を収める傍らで誰にも見られる事ないままたった一人で巨悪の分身と戦い抜いた黒龍は唯々静かに身に圧し掛かる疲れと痛みに身体を委ねたまま静かに眠りについていた。だが彼は決して後悔などしないだろう、誰かに讃えられたい訳ではなく、誰かからの喝采を求めていたわけではない彼にとっては悪魔との一騎打ちを制した事だけが確かな報酬だったのだから。そして戦兎とミルコが龍牙を発見した時に彼は穏やかな笑みで眠っていたという―――が、肝心の龍牙の身体はリミッター解除などの影響でボロボロになっており、またもや入院を余儀なくされたという……結局、彼が退院したのは新学期が始まる本当に直前になったという。
「本当にお前はよぉ……よっく入院するよなぁ!!」
「人を入院マニアみてぇに言うなバカタレ、こっちは結構な重傷だったから入院してたんだ。言っとくが峰田や上鳴だと確実に死んでる傷だぞ」
『そう言う傷を負うお前に一番問題あるんじゃねぇか!!!』
「否定はしないけどな」
漸く戻って来た龍牙に皆が駆け寄った、たった一人で何処かに向かって行った彼が入院した事実は戦兎とミルコが隠し切れずに漏らしてしまった。作戦を成功させるためにどうしても抑えなければならないヴィラン、それもあのオール・フォー・ワン並に厄介なヴィランが龍牙を直々に指名しているという事なので向かったという事まで喋ってしまったのである。故に皆軽く怒っているのである。
「全く、龍牙アンタってさぁ何でもかんでも一人で抱えすぎなんだよ!!友達なんだから苦しい事なら分かち合って助けあうのが当然なんだから!!」
「響香さんの言う通りですわ!!龍牙さんには些か自重と自分が今までどれだけ危ない目に合っているのかという事を本当にご理解ください!!」
「それって師匠関連も含めて?」
『当然だ!!!!』
とクラスメイト全員からの声を浴びせ掛けられて流石の黒龍もタジタジになってしまっている。
「全く……我が親友よ、そのような戦場に行くならば何故我らを連れていなかった」
「一人で来いって指名されてたからだよ、受けなかったら逆に何をされたか分からない」
「だとしてもお前は反省しろ、暫くは単独行動禁止だ。誰かこいつに見張りに着けよう」
「お、おい焦凍それはねぇだろ……俺は子供かよ」
「プラップラして大怪我してんだからクソガキ質悪ぃだろ」
「か、勝己にそんな事を言われるなんて……屈辱だ……」
「どぉいう意味テメェゴラァ!!!!」
ライバル兼親友組にそこまで言われて流石に心に来たのか膝をついて胸を抑えるようになる龍牙、そんな龍牙に両手を爆発させながら迫って掴み掛りそうな爆豪を必死に抑える出久と切島。だが見張りを付ける云々は割かし賛成なのか、皆が誰がそれをやるかとかなり真剣に話し合っており龍牙は何処かショックを受けるのであった。
「葉隠でいいんじゃねぇか?透明だからある意味ばっちりだろ」
「いやでも龍牙って何となくだけどいるのは分かるんだろ」
「だからこそいいんじゃないかしら?それが見張られてるって事なんだし、ねっ透ちゃん♪」
「そうだね、うんっ!!これからは私が龍牙君の見張り役をやります!!」
『異議な~し!!』
「異議あり!!」
『却下!!』
物申したいらしいが即刻棄却されてしまった。今も透明のままだから葉隠も怒っている事だろう、自分はそれだけの事をしたのだと諦めて受けれるしかないのだろう……溜息混じり承諾をするのだが……ここで麗日がとあることを切り出した。
「あっそう言えばさ、ウチ気になってんやけど……出発前に龍牙君と葉隠ちゃんって抱き合っておでこくっつけとったよね?」
『あっ!!』
「あっやばっ……」
葉隠は思わず声に出してしまった、それは完全な悪手。聴力の言い耳郎にバッチリと聞き取られてしまっておりこれは何かあるとニヤニヤを全開させながら迫った。そこに芦戸の悪乗りも加わってもう止める事を知らない、葉隠は本格的に如何しよう……と困ってしまった。思わず龍牙に目をやるのだが、そこには既にああこれはもうしょうがないかと肩を竦めてしまっている姿があったのでもう暴露するしかないなと腹を括る事にしたのであった。
「さあ龍牙、白状しやがれ!!」
「天使の葉隠様とどういう関係んじゃゴラァ!!」
「将来を誓い合ってる仲」
『……ハッ?』
「りゅっ龍牙君それはサラッと言っちゃうような事じゃないよぉ!!?」
「でも事実だし―――笑ってるじゃないか」
「あっバレた?」
周囲が呆然とする中でその波を掻き分けるように透の傍へと歩み寄って頬へと手を当てるとそこには満面の笑みを浮かべている葉隠の姿がそこにあった。そんな姿に笑みを返すと彼女をお姫様抱っこしながら軽い口づけを交わす。
「えへへっそういう事です、私と龍牙君は将来結婚することを決めてまぁす!!」
「式には皆呼ぶから絶対に来てくれよな?」
『ええええええええっっっっっっっ!!!!!!!!??????』
大絶叫が木霊する、そこは雄英高校。また新しいヒーロー志望が入学を控える新学期の間際の時間の切れ目、また新しい嵐を巻き起こしながらもその渦中の二人は笑顔を浮かべたままで頭をくっつけながらその瞬間の幸せに酔い続けている。
もうちょっとだけ、続くんじゃよ。