僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~ 作:魔女っ子アルト姫
「ビーストマン、ミラー・レイディ~!?おっかしいな何処行っちゃったんだろう。もう直ぐお嬢さんの試合が始まるのに……もしかして激励かな」
雄英体育祭のラスト、それはトーナメント方式のガチバトル。そんなバトルの試合にてビーストマンとミラー・レイディの娘でもある鏡 白鳥の手番が迫ってきているというのに席を離れてから全く帰ってこない二人を探しに御付きが探し回っていた。溺愛する娘、御付のヒーローも二人がどれだけ娘を愛する良い親なのか理解している。唯溺愛するだけではない完璧な育て方で育った白鳥は見る者を魅了する完璧なヒーローになるに値する存在になっている。そんな娘の試合を見ないというのは不自然だったのだが激励に行ったのかもしれないと思う。
「まああのお二人なら心配する必要もないか……親馬鹿だけど実力者だし」
それは放置ではなく完全な信頼故だった、それだけの力を二人は備えている。それに此処は天下の雄英、そんな場所でヴィランが出る訳も無いだろうと思いつつも足を戻していくのだが……それを彼は後悔する事になった。その道をほんの僅か進んだ通路の角、そこにビーストマンとミラー・レイディの痕跡があったのだから。
飲みかけのカップから零れた氷とイチゴのジュースはまるで凄惨な殺人現場にて流れ出た血痕のように床に広がっていた。静かに振動している携帯電話、その画面には白鳥、と表示され娘が連絡を持ちかけて来た事が伺えるがそれに答える事は無かった。そしてそれを―――
『ゴァァァァッ……』
一瞬だけ、それを一瞥した黒い龍がいた。外からの光を中へと入れるガラスの中にいたそれは黒い身体をくねらせながら姿を消した―――そして、全くの異次元の場所にて二人の姿はあった。
あらゆるものが反転したかのような世界の中の雄英にて、その姿があった。そこは
「がぁぁぁっっ!!!」
「ぐっううううっっ……ぁぁぁぁあっっっ!!!」
『ゴアアアアアアアアアア!!!』
上がる悲鳴と痛みに悶える悲痛な叫びに愉悦の極みのような咆哮を上げる
「この怪物がぁ……離せっがああああああああ!!!!」
「ぁぁぁぁっっ!!!!」
抵抗しようとすれば力を強められ強靭な爪が皮膚を裂き肉へと食い込んでくる、かといって無抵抗のままでもなぶり殺しな状況。一切の手心なんて加える気もなく嬲られ続けていく内に二人の肉体はもう限界な所まで来ていた。それを察知したのか黒龍は二人を放り投げそれを見下ろすかのように静止した。その背中から見下ろすかのような人影、それは無様な姿をさらすトップヒーローと言われる夫婦を嘲笑する。
「アハハハッ見てくださいリュウ君あの姿、笑っちゃいますよ」
「全くだな、こんな連中にトラウマを抱えてたなんて俺は如何かしてたのかもしれないな」
「それはしょうがないですよ、だってその時リュウ君は子供だった訳ですし今と昔じゃ大分違います」
そんな言葉を漏らしながら二人は地面へと降りた、彼らと同じ土俵へと立った。それを見た夫婦はチャンスだと思った、自分達はもう死に体の無様なヒーローだと思って慢心していると顔を上げて最後の反撃に移ろうとした時に―――二人は硬直した。そこにあったヴィランの姿を見た時に思考が凍り付いた、過去の亡霊が今になって蘇ったかのような……そんな感覚を味わっていた。そこにあったのは最悪の過去の想起させるに十分過ぎる姿をしていた。忘れる訳もない、黒い龍の戦士のヴィランはそれを見て個性を解除し素顔を晒しながら笑った。
「よぉっ―――10年振りって所か、俺の顔は分からなくても個性の顔は分かるよなぁ」
「う、嘘だ……なんでお前が……」
「リュッ……龍牙、なの……?」
瞬間、ミラー・レイディの首筋に一本のチューブに繋がれた注射器のようなものが放れた。それはあっさりと彼女の首筋を貫いた。トガは冷めたような激怒したかのような表情を浮かべたままそれを引き抜いて手元に戻しながら言った。
「汚らわしい存在がリュウ君の名前を呼ばないでください、不愉快です」
「乱……ラァァアアン!!」
「ァ、ァァッ……」
既にボロボロの肉体にそれは決定打に近い一撃だった事だろう、声を上げる事もなく倒れこんだ彼女からとめどなく血が溢れ出していく。愛する妻に叫びを上げながら身体を引きずっていくビーストマン、そして彼は彼女の懐から包帯のような物を取り出すとそれを傷口に当てる。するとそれは即座に彼女の傷へと巻き付いて止血を行った。応急処置のアイテムだろうか、だとしても意味はないだろうがと龍牙は心の中で呟いた。
「貴様ぁっ龍牙ぁぁぁ!!!なに、何をしやがるぅ!!!」
「何、とは随分と頭の悪い質問をするなビーストマン。お前らが言ったんだぞ、俺はヴィランだとな」
「なっーーーッ!?」
忘れる事も出来ないあの忌まわしい日、あの日に鏡 龍牙という一人の少年は死んだのだ。死んで虚無へと至り闇に堕ちた。そう彼ら自身の言葉で追いつめたヴィランという悪の存在へと。
「お前、本当にヴィランに堕ちたのか……!?」
「さあて如何なんでしょうねぇ……そんな問答に意味なんてないさ、何せ―――お前らは此処で死ぬんだからな」
「何を言ってっ……!!」
直後、ビーストマンの胸部に一本の刃が生えた。龍牙が手にした剣が彼の身体を貫いた、胸から溢れ出る血と熱病のような激痛が全身を駆け巡る中で薄まっていく意識の中でビーストマンは妻の乱へと手を伸ばそうとするが彼が剣を引き抜いた事で倒れこみ動かなくなった。
「お前も後を追えよ、ミラー・レイディ」
首を狙って無造作に足を叩きつけた。低く鈍い音を立てて骨が砕ける音が周囲に響き渡った、もう彼らは再起不能だろう。病院に運び込んだところで意味がない、確実な死が待っている。そんな二人を見てトガが言った。
「リュウ君これら如何します?このままミラー・ワールドに放置しときます?」
「敢えて外に放り出す、適当な所にな。どうせだ、こいつらが愛した者も奪ってやろう」
「それってもしかして妹ちゃんですか?」
「ああ、トガちゃんお義姉ちゃんになりたくない?」
「なりたい!!」
そんな無邪気な言葉の掛け合いの最中で二人は静かに眠っていた、そして二人は黒龍の手によって何処かへと適当に外の世界へと投げ捨てられた。最後に奇しくもその手は重なり合い手を取り合っていたという、それを発見した者が大急ぎで救急車を呼んだがそれも空しく彼らはこの世を去り、愛された愛娘は一人絶望に暮れる。
両親に愛され、大好きな兄も近くにいない彼女にはもう拠り所はないに等しかった。親戚の言葉も無意味に胸に響くばかり。虚無の中で揺蕩う彼女へと手を差し伸べたのは―――同じ虚無を味わった兄であった。
「久しぶりだな白鳥、俺が分かるか」
「―――お兄ちゃん……?」
……いやぁゾクゾクしますな。やっぱ筆が乗るなぁこういうのは。
多少の自重はしてますけど私が書く基本プロットなこんなダークな感じです。
普段はこれを何とかして捻じ曲げて本編にしてます。
活動報告にて番外編の募集をしてますのでお時間があれば覗いてみてください。
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