僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~ 作:魔女っ子アルト姫
神使 龍牙、新たな使徒の名は政府からの覚えも良い。何方かと言えば正確無比に仕事をこなす神使に足りない物があるとするならばそれは瞬間的な圧倒的な火力に限られる事になる、それだとしても与えられた任務を失敗した事が無い彼らに寄せられる信頼は絶大、だが当主たる翁の孫の力は圧倒的の一言だった。僅か齢11の時に今の最強形態の基礎を完成させ、その力は№3ヒーローのホークスすら誇張を抜きにして称賛するしかない程。そして彼は進学する事も無く使徒として活動をし続ける、そんな彼に対して政府はとある命を出した。
「おいホークス、お前だろ」
「あはっバレた?」
手元へとやって来た新たな命令書へと目を通した後に目の前で神使の超一流シェフお手製の鳥尽くしのミートスパゲッティに舌鼓を打ちながらも悪戯成功と言いたげなVサインを送ってくるので仕返しと言わんばかりにミートボールを一個奪ってやる。相変わらずこの家のシェフの腕前は最高、ランチラッシュ以上という自負は伊達ではない。命令書にあったのは―――
【ヴィラン襲撃を受けた雄英高校に短期間の強化指導員として赴任】
という者が書かれていた。一応拒否する事も可能で命令書というよりも意見書というニュアンスが強い内容になっている。かのヒーロー科最高峰の雄英がヴィラン連合という集団によって殴り込みを受けた事件は記憶に新しい、そこに赴任するという事はそこでの情報収集とヴィランの襲撃を生き延びたヒーロー候補生たちの底上げを目的にする事になるのだが、それなら暗部である自分がする意味はない。実績も人気もあるプロヒーローにさせる方が良いだろうに、主に目の前にいる№3ヒーローがやっても良い事……そしてこんなものが自分に来たのも目の前のこれが要らんお節介を回したのだろう。
「態々俺が行く意味がない、他のプロヒーローに生かせた方が十二分に合理的だ」
「いやいやいや、改めてそこで対ヴィランに特化した授業をする為にヴィランの恐ろしさや厄介さを承知している人間が適切なんだよ。追い込まれたヴィランの真の恐ろしさ、そしてそれらを抑え込んで闇に葬る力を秘めた人間が必要でね、それに雄英には№2のエンデヴァーさんの息子さんもいるらしい上になんか問題児もいるらしいから矯正してあげるべきらしいよベストジーニスト曰く」
「自分でやれ」
様々な言葉に誘導やら説得をするホークスだが内部に鉄の芯が入っているかのごとく揺らぐ事のない親友に思わずため息をついてしまう。彼の事を深くまで理解しているが強情で融通が利かないのは美点ではあるが欠点でもあると思わずにはいられない……これだから黒龍を取り戻した時に悪の帝王からの誘惑を受けなかった訳だが……。
「だって君、魅力的な女性に全く反応しないじゃん。下手したら神使の家断絶だよ」
「他にも血筋あるからそれは無い」
「だからってこの前の特殊任務でミッドナイトの全裸一歩手前を目の当たりにして眉一つ動かさないと流石に心配になるんだよ俺としても」
別段魅力を感じないわけではないが、それで揺らぐような精神を持ち合わせていないだけでしかない。加えて使徒として動く上で女性ヴィランも相手にしてきた。中には絶世の美女や傾国の美女というべき存在もいた上に相手を魅了して虜にしてしまう個性持ちもいた、だがそれすら跳ね除けてしまう頑強な精神で相手を殺してきた。故か、女性に対する興味などはハッキリ言って皆無に近い。
「何なら政略結婚でも構わない、その場合は抱きもするし子供だって拵えてやる。それで十分だろ」
「いやまあ……」
スパゲッティを食べつつも改めて本当にこれが16の少年なのかと疑いを持ってしまう、彼の過去を知っているが血縁によって歪められた生き方をする彼は本当に人間なのかと思いたくなる。あのオールマイトですら多少なりとも女性に関するニュースはある、と言ってもファン対応をした程度での内容だが……龍牙の場合はそれすらない。もしかしたら使徒の女性メンバーと良い仲なのか?とも思って、翁に最も信頼されている使徒に尋ねてみたが……
『いえバラウール、いや龍牙殿が誰かと好き合っているという話はありませんな。龍牙殿を好ましく思う者は少なからずいるのですが……我らは神使の使徒として徹する、それらがと共に愛し合う事は任務の失敗を招きかねませんから皆自重して叶えようとはしないでしょう。故に使徒は外の者と恋愛をしますが……彼は誰ともそう言った事になる気が無いようですね』
任務中の失敗、使徒らは基本的に単独ではなく集にて任務に挑む。それは個が不備を起こしても他がそれを補い達成する為。だがそれは時にして全体で挑まなければならない時が来る、その時に互いを愛しあっていた場合、何方がか危機に陥った場合にそちらを優先するかもしれない、使徒にとって絶対なのは任務の成功にも拘らず。故にそれは禁じられている。他にも女性使徒にも話を聞くが酷く好意的な意見だが……使徒らしく禁欲的でホークス的には不満な答えであった。
「影に生きる者としては見ておく必要があるんじゃないのかな、これからの光を担う子供たちをさ。影から見た光って奴を定められるって言うのは貴重な機会だと思うけど」
「……そこまで俺を雄英に行かせたいか」
「勿論。俺の親友が中卒とか嫌だし」
「中卒じゃない、高卒資格は所有している」
「実際通ってねぇじゃん」
と軽く喧嘩腰になって会話が進んでいく、これはこれで良い傾向だと思いつつもそれを進めていくホークス。政府としても自分の龍牙に青春を楽しませてやりたいという意見は理解を得られている、何せ自分達の不甲斐なさの尻拭いを16の少年が自分の全てを擲ち、平和の奉仕しているのだから何も言えなくなるのである。だから使徒である彼に少しでも高校生活を感じて貰う為にこのような形の命令書を出したという訳である。
「全くもう分からず屋だな龍牙はぁ……」
「その名で呼ぶな、今の俺はバラウールだ」
「はいはいもう何度も聞いて耳にタコだわ。だが敢えて言おう、龍牙、俺は君の親友として言う。君は平和を味わうべきだ、その平和の味を知らずに平和を守るなんて絶対に出来ないさ、俺が保証する。そしてそれを知って感じて誰かを愛した時、君はもっと強くなる」
「詭弁だな、相変わらず口が軽い上に口が上手い奴だ」
そう言いながらバラウールは改めて命令書へと目をやる、詭弁だと言いつつもその意見にも一理あると思っている自分がいるのである。平和を知る事、自分が知っていた平和は所詮偽物、いや本物であったはずだが個性が発動した時を以て虚構であったと認識してしまった。改めて本当の平和という物を知ってそれを守る為に命を賭している事を知る事も悪くはないのではないか……と思い始めた。そして溜息混じりに命令書を閉じながら懐にしまった。
「おっ受けてくれんの!?」
「……妹がそこに通っている事を思い出した、それに会いに行くだけだ」
「いやいやいやそれでも十分!!流石龍牙話が分かるぅ~!!」
「但しお前も道連れ」
「いいよ~予想通りだしその位お安い御用」
「……一応聞くがあれらは」
「今ん所真面目らしいよ、監視も全く緩められてないし妹さんも変な事吹き込まれてないし寧ろお兄ちゃんに会いたすぎてブラコン拗らせるとか」
逆に考えるんだ、ヒロインが居ないなら妹を超絶ブラコンにしちまえばいいと。
今日、夢の中でジョースター卿がこんな事言ってた。思いつかなければもうこの案でいいんじゃねぇかなと思ってます。