僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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龍牙の異世界探訪記:パート2

思わぬ事象によって夢か現か分からぬ世界へと飛ばされてしまった龍牙とヴェノム、そこは自分がいた世界と酷く似ているが異なる世界だった。その世界は自分がいない世界で自分が雄英に入学する1年ほど前だった、そんな彼は雄英の教員の一人として働いていた。気付けば教員としての仕事にも随分となれていた。

 

「相澤先生、此方の書類全部終わりました」

「結構、お前が優秀で非常に助かる。俺の苦手な方面を纏めて処理して貰えるからな」

「逆に時間がかかる俺の仕事を先生に処理して貰った方が合理的で美しいですからね、それじゃあ―――この後は教室ですか」

「ああ、お前だけで良い気もするが一応な……」

 

元の世界では自分が所属していたクラスの副担任として勤める事になってしまった事へは多少の抵抗こそあったが何とか許容する事にした。元々背が高い上にガタイも良い事が幸いした事と顔の傷もあって同年代には見えにくいから問題は無いだろうと相澤に投げやりに言われてしまい、ヴェノムに笑われる事になった。因みにヴェノムは雄英のセキュリティスタッフ扱いで、専用の待機室でチョコをお茶請けに待機している。

 

「お前、あの子は良くなったのか」

「多少ですね……少しずつ、前に進もうとしてます」

「そうか……何かあればすぐに言えよ、安定しているとは思うが」

「はい」

 

龍牙はこの世界にて何処までが自分と世界と同じなのか、という事を酷く警戒していた。何処まで同じなのか、既に自分が体験したり知っていたりした事件に対して先手を打って良いのか……という点である。そもそもがこの世界が本当の並行世界なのかそれともヴィランの個性によって自分が見ている夢なのか、それすらわからない状況なので下手に動くのは危険という考えもあった。それでも個人的にやっておきたい事だけは確りとこなした、それは確かだった。

 

「ちっ、煩いもんだ」

 

と流石に自分の時とは違って寝袋には入らずにいる相澤はA組の目の前までくると教室内から聞こえてくる喧騒を聞いて舌打ちをしてしまった。あの時もこんな感じだったのかなぁと思いつつもこの世界では入手困難であろう戦兎製のサングラスを掛けながら開け放たれて視界に広がった1年振りに見る友人たちに頬が緩みそうになるのを引き締めた。サングラスを掛けて正解だったと思っていると、飲料ゼリーを飲み込んだ相澤が自分の時も聞いた言葉を口にする。

 

「ハイ、静かになるまで八秒かかりました。時間は有限。君達は合理性に欠けるね」

 

相澤の言葉運びにああそうだこれこれ、と内心で何故かウキウキとしてしまっている自分がいる。何が楽しくて面白いのか分からないが何故か酷く面白く感じられている。体操服を押し付けるようにして一方的に体操服に着替えてグラウンドに出るように指示を飛ばしてくる、当時は自分も驚いたものだと思っていると相澤はさっさと立ち去っていく。自分もその後を追うかと思っていると背後から一人の少女が声を掛ける。

 

「あ、あの……副担任の先生、ですか……?」

 

鈴のように綺麗で、可憐で、何時までも聞いていたくなるような声が、聞こえてきた。振り返ればそこには透明な四肢に瞳に映らない身体、そして何故か自分には認識出来る少し困っているような不安そうな表情を向けている少女―――葉隠 透がそこにいた―――龍牙はそれを必死に押し殺しながら、答える。

 

「ああ、そんな所」

「あっ良かったあっ……スーツだけどサングラス掛けてるからどうしたらいいのかなって不安になっちゃって……それでその、えっと、私達ってどうすればいいんですか?入学式とかあると思うんですけど……でも担任の先生に従った方が良いんですか?」

 

余りにも不安そうな声に思わず頭を撫でて落ち着かせたくなる、如何やら自分の中の彼女というのはとんでもない重要な人だったらしい。それを自覚するとこれではピクシーさんに会ったらどうなるのだろうと僅かな不安が過るのであった。

 

「さてね、唯一つだけ助言をさせて貰うよ―――君たちはヒーローになりに来たんだろ、だったらその過程は既にスタートしてるって事を自覚した方が良い。何故ならば雄英はフリーダムだからねぇ」

 

そう言い残して龍牙はそれじゃあと去っていく。教室では自分の言葉を聞いて慌ただしく着替え始めている音が聞こえてくるのであった。あれでも十二分に通じる事だろう、そして知るだろう―――この雄英がどれだけ非常識なレベルで自由で破天荒なのかを。そしてグラウンドで相澤に合流しながら待っていると話を振られた。

 

「お前の時も俺は同じだったか」

「全く同じでしたよ、その時は俺が首席でしたから最初にソフトボール投げやりました」

「成程な……世界が違えど同じか」

 

そしてそれを知る事になるのは龍牙も同じだった、いやそれはそれで初見あろう……雄英の校風は教員同士にも適応されるという事を……。個性把握テストも恙無く進行し最後まで進攻した時だった。そこで相澤が突然、龍牙に話を振った。

 

「さて、皆も順位を確認したようだしこれにて終わり、と言いたいところだが本番はここからだ。こいつの事だ」

「こいつて……まあいい、そこの透明の美人さんとは話したね」

 

と意識して本来の自分とは違うキャラを混ぜて口調を変えてみる、尚、意識しているのは戦兎だったりする。

 

「1年A組の副担任をする事になってる、黒鏡 龍牙だ。これでも一応プロヒーローだ、ヒーローネームはドラゴンライダー・リュウガ、好きなように呼んでくれ」

 

そして龍牙は仮免しか保有していなかったのだがその実力を根津とオールマイトに披露した結果、活動するにあたってプロの資格に値するという事でプロ資格を取得できた。因みにプロ資格を取る際にまたオールマイトと戦う事になった時には思わずうわっまた……と声を漏らしてしまった。

 

「そして君達にはこれからプロヒーローの凄さを実感して貰う、誰でもいい。こいつと戦いたい奴は前に出てこい」

「え"っちょっと相澤先生……」

「言っただろ、雄英の校風は自由だとな」

「それって教員にも適応していいんですか……はぁっまあいいですけど」

 

そう言いつつもビルドドライバーを装着しながら懐から飛び出したドラゴンにボトルを装填して構えを取った。

 

WAKE UP BURNING ! GET BLACK DRAGON !! YEAH!!〉

 

 

黒炎の渦を破るかのように登場した黒龍の戦士に思わずA組の皆は驚愕と恐怖を面に出すが直後に聞こえてきた龍牙の明るい声にそれは中和された。そして次に沸き上がったのは―――

 

「さあ誰か始まる、誰からでもいいぞ―――掛かって来いヒーロー志望」

 

歓喜と好戦的な笑みだった。

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