僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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龍牙の異世界探訪記:パート3

「さあ誰から始まる、誰からでもいいぞ―――掛かって来いヒーロー志望」

 

リュウガとしての側面になった龍牙。凶悪なヴィランという風貌である筈なのにその内面が気さくで柔らかな言葉遣いをするからこそだろうか、恐怖に感じる事は薄く、それよりもプロヒーローにいきなり手合わせして貰えるという喜び満ち満ちている。これを喜ばずして何に喜べというのだろうか。

 

「いきなりプロヒーローと戦えるのか!!流石雄英!!」

「これは、一流の力をこの目に焼き付ける千載一遇の機会ですわね!」

「是非ともプロのお力を目に焼き付けさせていただきたい!!」

「ずっと試したかったことがあるんだよなぁ!!」

「いやでも怖くね!?本当にヒーローかよ!?」

「うんそこのグレープヘッド黙ろうか、次言ったら除籍するからな」

「理不尽すぎる!?」

 

既に気にしていないし諦めているに近いが出来れば触れて欲しくない事だってあるのである、それに相澤のようにいきなり除籍せずに警告で済ませているのだから十二分に優しいだろうと思っている龍牙は相澤の指導方針に大分染まっているのだと自覚する。

 

「さてそれじゃあルールは如何するかな……よし、それじゃあこいつだ」

 

手合わせをするのならばルールを決めておく必要がある、それならば勝利の判定を決めておくのも良いだろう。至極簡単なルール、自分に膝を突かせるか倒れ伏せさせる事が出来たのならば生徒達の勝利。逆に龍牙は生徒達を10秒ほど組み伏せた状態を維持して勝利とする事にする。

 

「しかし先生、それでは先生がかなり不利になるのではないでしょうか!?」

「一見すればそう見えるかもな、だからここで一つ言っておくぞ―――俺は強いぞ、オールマイト相手でもそれなりに戦えるとだけ言っておく」

『オールマイト相手に!?』

「それに関しては本当だ、つい先日に手合わせをしたらしい。終わった後オールマイトに、お前がヴィランはじゃなくて本当に良かったって言わせたらしい」

 

それは龍牙がプロライセンスを得る為にオールマイトとの戦った際の事、それを相澤は見ていないがオールマイトと根津からそう聞いて龍牙の強さの証明とした。そして出来る事ならばそれをまじか見て見たいというのが素直な感想だった。それに生徒達は驚きながらも素直に闘志を燃やしていく。

 

「流石にオールマイト相手だと勝つ事はきついが、真に迫る事は出来る―――さあ誰でもいいぞ。掛かってきな、後輩共」

 

 

「やっ龍牙先生、仕事には慣れたかい?」

「これでも師匠たちに色んな事を仕込まれてますからね、インターンでも事務仕事とか一杯やってたんで特段問題はありませんよ」

 

初日の日程も無事に終了した龍牙は教師としての仕事を片付けているとトゥルーフォームのオールマイトが声を掛けてくる。教師陣は承知の事実だが、当然龍牙もそれについては知っているので問題なく触れている。

 

「相澤君から聞いたよ、いきなりみんなと戦ったらしいじゃないか」

「皆じゃないですよ、緑谷以外ですよ。あいつは此処でも怪我すんのかって溜息出ましたよ」

「ハハハッ如何やら君の世界でも同じだったらしいね」

 

個性把握テスト後の手合わせ、という名の一方的な蹂躙。入学当初の彼らでは龍牙の膝を曲げるどころか衝撃で後ろに引かせる事すら出来ない程の実力差があった。それらを一人一人に体感させつつも心が折れない程度に手心を入れながら相手をしてやったつもりである。流石に師であるギャングオルカのような事はしない、やったら別の意味で除籍扱いになる生徒が急増する。

 

「それと覗いてましたね、主に緑谷に注視して」

「き、気付いてたのかい!?」

「相澤先生もきっとでしょうけど、こっちから見てたらバレバレでしたよ。オールマイト、自分が目立つ事を理解した方が良いですよ」

「いやぁ参ったなぁ……」

 

きっと自分がテストをしていた時もオールマイトは見ていたのだろう、彼の目的は自分の個性を受け継いだ緑谷の事を心配してだろう。だが遠目から見ているとガタイが良いオールマイトは目立ってしょうがなかった。

 

「それで書類整理が終わったらもう帰宅かい?」

「ええ、家には待ってる子もいるんで」

「そうか……あの子はどんな様子かな」

「良い方向に向かっている、と思いますよ。幸い救出が早かったのが助かった……オールマイトの協力のお陰ですよ」

「私は何もしてないさ、君の情報があったからこそだよ」

 

この世界にとって龍牙は完全な部外者だ、本来は干渉すべきではないかもしれないがそれでも彼はヒーローだ。行動せずにはいられない事も多くある、それでも如何するべきなのかは慎重に考えていく必要があるとヴェノムとの協議で決めた上に根津からも自分の知識に頼り切るのは拙いので必要になったら聞くという事に落ち着いている。そしてそれを決めた直後に龍牙はオールマイトに頭を下げて行動を起こした。

 

「俺が行動を起こす事がこの世界の為にはならない……校長から言われた時は少し堪えましたが……それでも救いたい命があった。それがあの子、そして……あの人」

「それに関しては本当にお礼を言わせて貰いたい、まさかそのような未来が待っていたと思うとゾッとするよ……お陰で私は仲直りが少し出来たからね」

「しようと思えばずっと出来たんですよオールマイト、今日だって一緒に飲みに行くんでしょ。仲直りの証に、俺にもお礼のメールが来てますよ。ちゃんと行ってあげてくださいよ」

「分かっているよ、君がくれた機会だからね」

 

そんな会話をしつつも副担任として仕事を終わらせるとオールマイトに別れを告げて、根津が紹介してくれた雄英近くの一軒家へと足を踏み入れる。此処がこの世界での自分の住居であり、守るべき者が待つ家なのである。鍵を開けて入るとリビング辺りから中々に楽しそうな声が聞こえてくる。

 

「ただいま、随分と楽しそうだね」

「あっお帰りなさい、えっとドラゴンさんと遊んでたの」

「そうかそうか、悪いな」

 

そんな風に問いかける言葉の先にいるのはピンクと赤で塗装されている自身のドラゴンを模して造られた小さなロボット。自分の世界にてそれを与えてくれた人はこの世界には残念ながら存在しない、故に根津に頼んで有数の科学者に作って貰った子守ロボ。それでも十分なのだ、一人の少女の笑顔を作って一緒に過ごしてくれる家族としては。

 

「寂しくなかったかい」

「ううん大丈夫。お昼まではヴェノムさんが居たから」

「そうか、あいつ今日は夜勤だからな。よし、それじゃあ今日はハンバーグにしちゃおうか。チーズ入りが良いかな」

「チーズ入り……大好き!」

 

と少々控えめながらも嬉しそうにしている少女を抱き上げて、冷蔵庫の中を見て一緒に献立を決めていく。

 

「それじゃあデザートはリンゴのシャーベットでいいかな」

「リンゴ……やったっ♪」

「よしよし―――それじゃあお手伝いしてくれるかな、壊理ちゃん」

「うん」


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