僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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本編
始まりの黒龍


世界総人口の八割が"個性"と呼ばれる不思議な特殊能力である力を持つ超人社会。ある時、中国で光り輝く赤ん坊が生まれ、世界は新しい流れに呑まれていく。不可思議な能力、のちに個性と改められる力を持った人間たち。『超常黎明期』とも呼ばれたその時代の中で徐々に個性という力は超常というカテゴリーから常識というカテゴリーに変化していった歴史を持った世界が存在する。その世界では個性は当たり前、常識であり強い個性で在れば憧れを持たれたり将来への道を開けるという事もある。

 

―――だが、逆に力が強すぎる影響で大きな傷を負ってしまった者もいる。

 

 

この社会には明確な光と闇がある。個性を悪用し犯罪を起こし人々を苦しめる闇であるヴィラン。その脅威から守る為に"個性"を用いてその闇を払い人々の笑顔と平和を守り続ける者、ヒーローの存在。そんなヒーローになる為の人材を育成する為の教育機関、国内最高峰とも呼ばれている学校、雄英高校。その入学試験の実技試験でとある者の姿があった。ロボを仮想敵に設定した実技試験、敵にはポイントが設定され多くのポイントを集める事を要求される試験。

 

「キャアアッ!!」

「おい大丈夫か!?こんなものまであるのかよ!?」

 

だが簡単な試験ではない。邪魔者としてポイントが0の仮想敵が紛れ込んでいると説明がされており誰もが注意している中、巨大な0ポイントが出現しその巨体で周囲を圧倒する中に約6メートルほどの0ポイントも出現し受験生を襲っていた。今も受験生が襲られ危機に瀕していた。

 

「お、俺の個性じゃこんなの倒せない……!!」

「い、いやあああっ!!」

 

自らの力不足を悔やみつつもどうすればいいのかという思考が恐怖で死んでいく中、手を伸ばしてくる仮想敵。ここで自分達のヒーローへの道は閉ざされてしまったかと思った時の事だった、まるで錆びついた歯車が出すような音を発しながら何時までも仮想敵が攻撃してこない。閉じていた目を開いてみるとそこには黒い鎧を纏った戦士が立っていた。

 

「だ、誰……!?」

「俺達を、助けてくれた……!?」

「……はぁっ!!!」

 

低い唸るような声を上げながら右腕を振るう、龍の頭を模した手甲を装着しているのかそれを仮想敵へとたたきつける。装甲を砕くような音と共に手甲から闇のような炎が溢れ出して仮想敵の身体を焼いていく。殴られるたびに身体からは溶けた装甲が鉄となって地面へと落ちていく、殴るたびに木霊する雄叫びは力を誇示する龍のよう。再度龍の雄叫びが木霊すると、戦士の周囲に黒い炎が球体を形どりながら浮遊し、戦士の腕の動きで発射され仮想敵を一気に燃やし尽くしていく。

 

「す、すげぇ……」

 

思わず言葉を漏らした男子に女子も同意見だった。手も足も出なかった仮想敵をいとも簡単に一蹴する力、鉄をも融解させる炎の火力、このような人物こそヒーローになるべきのだろうと思える程に圧倒的で憧れを持たせる。そして完全に仮想敵をねじ伏せた戦士はゆっくりと振り返る。二人はお礼を言おうとするのだが、その姿を見た途端に硬直し先程よりも強く歯を鳴らしながら身体を震わせた。

 

「……無事か」

「助けてぇええええええええええええ!!!!!!」

「ヴィ、ヴィラン、ヴィランがぁあああああああ!!!!」

 

無事を問う戦士に二人は絶叫を上げながら号泣し、走り去っていってしまった。途中何度も足を縺れさせながらも自分達を追っていないかを確認するように振り返りながら逃げていく。その様な事をされた戦士は伸ばしかけた手を引っ込め顔を俯かせながら背後から迫ってきた1ポイントの仮想敵へ腰に下げていた剣を手にする。

 

「……」

 

仮想敵の腕が叩きつけられる、本来ならば吹き飛ばされたりするはずだが戦士は一切動じずにいた。そしてゆっくりと鎌首を持ち上げ、目の前の仮想敵へと手にした剣を振った。刃は豆腐を斬るかのように装甲を切り裂き、内部の回路を断線させ完全に両断してしまった。真っ二つになったそれは地面に落ちながら爆発を起こす、その爆発の影響で近場の建物のガラスが割れ辺り一面に四散しそこに戦士の姿が映し出される。

 

それを形容するならば人の形をした龍、それが鎧を纏っている。全身が黒い闇の龍ともいうべき存在、剥き出しになっている鋭い牙、スリット状のフェイスシールドの奥から爛々と妖しく輝いている真紅の瞳。全身から発散させるのは威圧感、酷く禍々しい非常に凶悪な風貌はヒーローではなくヴィランにしか見えない、だが彼は誰かを助けた。それでも感謝されない、風貌が余りにも恐ろしすぎるから。それでも彼はヒーローになりたくて雄英高校に受験をした、夢をかなえたくて。

 

「それでも俺は、前に進む……」

 

彼は寂しそうな背中を見せながら、他の仮想敵を探すために足を進めていく。その途中、何度も危機に瀕していた他の受験生たちを助けるのだが……その全てに恐れられて逃げられるか、攻撃されることになってしまった。自分が歩むヒーローへの道は苦難しかないと溜息をついた黒き龍こと、黒鏡 龍牙の物語は始まろうとしている。


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