僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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戦闘前の黒龍

雄英高校の学業スケジュールは通常のものよりもハードなものとなっている。通常の高校の授業ならば、授業は平日だけ。しかし雄英は平日と土曜日、これだけでも他の高校と比べるときついと感じる生徒は多い事だろう。そして、平日は7時限まで存在している上に土曜日も6時限だが授業もある。相澤の言葉を借りるのならば、絶えず試練が与えられていく、これもその一つに含まれているのかもしれない。午前は通常の学校などと同じ必修科目、英語などの通常の物などがある。思わず皆、授業は普通だと思うがそれらを担当する教師はプロヒーロー達なのだから凄まじく豪勢な授業といえる。それは龍牙も思っているが、内容自体は確りしているうえにそれなりにレベルが高いので確りと勉学に励んでおく。そんな事よりも龍牙にとってはもっと嬉しい事があった。

 

「龍牙君、昼食を一緒に取らないか?!」

「ああっ分かった」

 

彼にも友達らしい友達が出来た事だった。個性が個性なだけに自分を恐ろしがって友達になろうという人間は殆どいなかった、だが此処では歩み寄って友達として接してくれる人たちがいる。それだけで龍牙にとっては幸せな時間で満たされている。

 

「あれっ龍牙君ってお弁当なの?」

「習慣付いてるんだ、世話になっている人の分と自分の分を作ってるの。良ければみんなの分も作るが」

 

そんな風に提案すると友達は嬉しそうにしながらそれをお願いされ、龍牙はそれを喜んで引き受ける。実際はコックヒーロー・ランチラッシュの作る食事の方が美味しいのは確実、それでも自分の作るお弁当を食べてみたいと言われて嬉しくなった龍牙。帰り道で買い物をして帰り、仕込みをしようと心に強く誓いながら献立を考えたりもするのであった。だが、普通なのはそこまでであった。遂に訪れる午後の授業、即ちヒーロー基礎学。

 

「わぁあたぁあしぃぃがっ……普通にドアから来たぁっっ!!!」

 

筋骨隆々の強靭で完璧と言っていい程に鍛え上げられた肉体、平和の象徴、皆が憧れる№1ヒーローのオールマイトだった。世界が認める程の認知度と皆が大好きである現代の大英雄とも言うべき超ビックネーム。オールマイトがデビューしてからというもの日本の犯罪発生率はどんどん下がり、世界最低レベルを保持し続けているほどの影響を誇る。そんなヒーローが教師として教鞭をとり自分達を見てくれる……これに興奮せずにどうしろというのだろうか。

 

「本当にオールマイトだ!!マジで教師やってるんだぁ!!」

「今着てるのは……銀時代のコスチュームみたいね」

 

つまり午後からのヒーロー基礎学はあのオールマイトからの授業となるのだからこれを興奮せずしてどうしろと言うのだろうか、重要な事なので二回言っておく。龍牙も心なしか拳を強く握りこんでいる。

 

「さてでは早速行こうか!!私が受け持つ授業、それはヒーロー基礎学!!少年少女たちが目指すヒーローとして土台、素地を作る為に様々な訓練を行う科目だ!!正にヒーローになる為には必須とも言える!!単位数も多いから気を付けたまえ!!そぉして早速今日はこれ、コンバット!!戦闘訓練!!!」

 

その手に持ったプレートには「BATTLE」と書かれている。いきなり始まるそれに、好戦的且つ野心家な生徒達はメラメラと炎を燃やす。それと同時にオールマイトが指を鳴らすと教室の壁が稼動をし始めていく。そこに納められているは各自が入学前に雄英へと向けて提出した書類を基に専属の会社が制作してくれた戦闘服コスチューム。

 

「着替えたら各自、グラウンドβに集合するように。遅刻はなしで頼むぞ」

『ハイッ!!』

 

各自は勢いよく自分のコスチュームが入った収納ケースを手に取ると我先にと更衣室へと向かっていった。そこにあるのは自分が思い描いた自らがヒーローである姿を象徴すると言ってもいい戦闘服、それをプロが自分たちの為に制作してくれるなど興奮して致し方ない、なんて素敵なシステムだろうが。

 

「―――形から入るってことも大切なことだぜ少年少女諸君、そして自覚するのさ!!今日から自分は"ヒーローなんだ"と!!!」

 

それぞれが希望したコスチュームを纏い、皆がグラウンドβへと集結する。皆それぞれの個性が生かせるかのような物、又は苦手な分野をカバーする物になっており正に個性が出ていると言ってもいい。が、そんな中で例外的な存在もあった。それは龍牙であった。

 

「あれっ龍牙それってコスチューム……なのか?」

「そうだが」

「いやただのスーツにしか見えないけど……」

 

龍牙の物は見た目は完全にただのスーツにしか見えない。黒の上下に中には薄い紫のYシャツ、そして黒のネクタイを締めている姿は会社勤めのサラリーマンにしか見えない。私服に近いコスチュームは耳郎も当てはまるだろうが、龍牙も龍牙でかなり異質に映る。それはそうである、彼にとってコスチュームは何の意味も無いのだから礼儀正しく映るものとしてスーツ姿になるようにオーダーを出したのだから。

 

「コスチュームなんて俺には意味がない、個性を発動したらどうせ意味がなくなる」

「あっそっか。それならコスチュームの見た目ってあんまり問題じゃないんだな」

「そういう事だ」

 

リュウガは個性を発動させれば完全に姿は変異、それは身に着けているものも完全に巻き込むような形で行われていく。個性把握テストの時も体操服も見えなくなっていた。故に彼にとってコスチュームなんて意味がないに等しいのである。

 

「でも龍牙君かっこいいよ!出来る男って感じがビンビン出てる!なんだろ、やりてのビジネスマンみたい!」

「有難う葉隠さん。君のコスチュームは個性と同化するタイプ……なのか?」

 

自分のスーツ姿を褒めてくれる葉隠に素直にお礼を言いつつも彼女のコスチュームに目を向ける、透明人間である彼女の個性を活かす為ならば見えなくなることは必須。故に個性と同調して見えなくなるタイプの物なのだろうか、手袋と靴だけは見えているが。

 

「ううん違うよ、私は透明人間だから手袋と靴だけだよ。他は脱いだの、本気で行くって決めたからね!」

「え"っそれって……」

「うん。簡単に言えば全裸、かな」

 

思わず龍牙の思考が死ぬ。つまり自分は全裸の女子生徒の姿を真正面から見ただけではなくそれを指摘したという事になるのだろうか、なんという事だとんでもないセクハラではないか。いやそれどころの騒ぎではない、これは訴えられても何も言えなくなるレベルの所業。顔が青ざめていくのが自分でもわかる、がそんな彼を気遣ってか葉隠は言う。

 

「大丈夫だよ龍牙君、気にしてないから。だって透明だから見えないから分からないでしょ?じっと見られ続けるのは嫌だけどワザとじゃないから怒ってないよ?」

「それでも……申し訳ございませんでした……今度何か奢らせてください……」

「別に気にしなくていいのに~」

 

素直に謝罪する龍牙に周りは、飯田ほどではないが真面目なんだなという印象を持つのであった。

 

 

オールマイトから詳しい戦闘訓練での説明が行われていく。今回は皆の基礎を知る為の屋内戦闘訓練、ヒーローチームとヴィランチームで分かれての戦闘となる事になるという。ヒーローチームはヴィランを確保するか、ヴィランが隠し持つ核兵器を確保すれば勝利。ヴィランは制限時間までに核兵器を守りぬく、又はヒーローチームを全員確保が勝利の条件となっている。核兵器は張りぼてだが、これは本物として扱えという事らしい。そして、チームはくじ引きによって決定されるのだが、A組は21人、一人余る計算になる。そんな中、龍牙が引いたくじは【SPECIAL】と書かれていた。

 

「スペシャル……?」

「おおっ黒鏡少年が引いたか。君が引いたのは対戦相手もペアの相手も自分で選べるのさ!但し、一番最初に戦ってもらう事になるけどね。さて君は誰とやってみたいかね!?」

 

そう言われて素直に龍牙は困る。誰とやってみたいというのははっきり言ってなかった、故に困ってしまう。そんな中、鋭く凶暴な視線を送ってくる一人の男が居た。爆豪だった。

 

「おいヴィラン野郎、俺と戦え!!」

「爆豪……だったら爆豪で。後はオールマイトにお任せします」

「うむ了解した!ではそうだな……切島少年、君が爆豪少年のバディをして貰えるかい?」

「うっす了解っす!!」

 

これで龍牙の相手は爆豪と切島のコンビという事になった。後は龍牙の相手を見つけるだけなのだが……ハッキリ言って組みたい相手はいるにはいる。が相手が相手なだけに言い出しづらいので龍牙は提案する事にした。

 

「俺は俺の限界を見てみたいので一人で戦ってみてもいいでしょうか」

「ほほう随分とチャレンジャーだね!!いいだろう、スペシャルを引いた君だから特例で許そう!」

 

戦闘訓練第一戦:黒鏡 龍牙 VS 爆豪&切島ペア




因みに龍牙がパートナーに選びたかったのは葉隠さんです。雄英内で一番信頼出来る人なので。でも全裸の件で言いだしづらかったのでこんな感じに。

コスチュームイメージは、衝撃のアルベルト。

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