僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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訓練を始める黒龍

屋内戦闘訓練の舞台となる一棟のビル、その最上階より一階下に龍牙の姿があった。龍牙は自分が守るべき核兵器の張りぼてを見つめながら改めて勝利条件を確認していた。爆豪と切島はヒーローチーム、自分はヴィランチームとして振り分けられた。

 

ヒーローチーム(爆豪&切島):制限時間内に核兵器の確保、又はヴィランチームの確保。

 

ヴィランチーム(龍牙):制限時間までに核兵器を守りぬく、又はヒーローチームを全員確保。

 

先にヴィラン側である自分がビルの中に入り、その5分後にヒーローチームが内部に突入してくるという流れになっている。後3分ほどで訓練が開始される事になる、と言っても自分に出来る事など限られているに等しい。自分の個性に出来る最大の事は二人との全力戦闘が最大になる。ならばそれを取るべきだろう、幸い爆豪は自分に敵対的な意志を持っている事だろうから戦いに持っていくのは簡単、問題は切島だけだが……まあ問題ないだろう。

 

『黒鏡少年、もう直ぐ始めるが準備は良いかい?』

 

耳に装着している通信機からオールマイトの声が聞こえてくる、もしもの場合はこれからオールマイトが戦闘中止の言葉などを出す事になっている。それに頷くと開始の合図を出される事になった。

 

「さて……俺も始めるか……!!」

 

リュウガ……!!

 

 

「うしっ時間だぜ!!行こうぜ爆豪!!」

「うるせぇんだよ、てめぇは黙ってろクソ髪野郎!!」

「おいおい過激だな、まあいいから行こうぜ!」

 

突入許可時間となったので爆豪と切島は颯爽とビルの中へと入っていく。荒々しく暴力的な言い回しが多い爆豪に切島は特に気にすることもないように元気を出して絡みながら付いていく。当人も本当に気にしていないらしく、イライラしているような爆豪の言葉も軽く受け流している。薄暗いビルの中を進んでいく、廃墟同然のような作りに薄気味悪さを感じつつも周囲を警戒するように進んでいく。

 

「龍牙何処にいんだろうな……」

「ぜってぇにぶっ飛ばす……!!」

「気合十分だな!うしっ俺も気合入れるぜ!!」

 

そう言いながら切島は腕に力を込めながら拳をぶつけ合う、その時にガキンッ!!という音が鳴る。切島の個性は硬化、身体を硬くする事が出来るというシンプルなもの。故に個性が知られても問題が無いという長所などもある。そして爆豪は音からして金属並みに硬い事を見抜き、いざという時は盾にも使えるなっと軽くヒーローらしからぬことも考えたりもしている。

 

「うおっでっけえ鏡」

「ンなもんどうでもいいだろうが糞が」

 

通路の途中にある鏡に気を取られる切島、先に進む爆豪の続こうとした時、視界の端に何かが映り込んだ。それは黒い影のような物、咄嗟に振り向くがそこには何もいない。爆豪の背中しか見えない。

 

「今のは……待て爆豪!!なんかいるぞ、龍牙の奴かもしれねぇ!!」

「ンだとぉ!?」

 

何の気配もしなかった、何も感じられなかった爆豪はそれを信じられなかったが周囲の警戒に移った。周囲には死角が多い、誰かが隠れているとしてもおかしくはない。

 

「けっならこの辺りぶっ飛ばせいい話だ」

「でもそれじゃあ龍牙にも居場所バレちまうぜ?」

「だったらあいつをぶっ飛ばせばいいだけの話だろうが」

「そうか、正面から戦った方が男らしいもんな!!」

 

と爆豪の意図を理解しているのかが不明な切島だが、取り敢えず警戒のための攻撃は反対ではないようだ。そして爆破を起こそうとした時の事、切島は不意に鏡を見た。その時、鏡の景色の奥いや、鏡の奥から何かがゆっくりとこちらに向かってくるのが見えた。振り返って鏡に見えている風景を見ても何もいない、だが鏡には見えている。意味が解らない、目の錯覚かと思いきやそれは徐に腕を上げると炎を噴射してきた。

 

「ば、爆豪鏡の中からなんか来る!?」

「なんかって何だ!?」

「なんかは何かだ避けろ!?」

 

鏡の真正面から飛び退くとそこから真っ黒な炎が飛び出した。それは個性把握テストで龍牙が使っていた黒い炎、間違いなく龍牙が仕掛けてきた!咄嗟に切島が鏡をたたき割って炎の出口をふさぐと炎は消え去った。

 

「ビビったぁ!?なんだよ鏡から炎ってありか!?」

「ンなこたぁどうでもいい、どうやって鏡から炎を出すんだよ。そこが問題だ」

 

切島は先程まで龍牙を消し飛ばすだのぶっ飛ばすだのと言っていた爆豪が冷静に割れた鏡の破片を見つめながら考え込んでいる姿を見て少し彼に誤解をしていたと思う。いざという時は沈着冷静に物事を考える事が出来るだけの力を持っているんだと。

 

「鏡は多少なりとも熱を持ってるが溶けちゃいねぇ、鏡の背後の壁にも何の変化もねぇ……」

「つまり龍牙はどうやって攻撃をしたんだよ……?」

「知るかテメェで考えろ」

 

 

「おいおい龍牙の奴どうやって攻撃したんだ!?」

「鏡越しに攻撃したのか!?」

 

それらを見つめるモニタールームでは龍牙の攻撃に対する声が続いていた。突如として行った炎による攻撃、全く正体の掴めない力に皆が困惑する中、麗日は緑谷に聞いていた。

 

「ねぇデク君、龍牙君の個性分かる?」

「ううん全く……龍牙君の個性によるものとしか今は……でも一体どんな物なのかは……」

 

個性オタクと言っても過言ではない程の知識や個性に対する考察などを行う緑谷、彼ならば何か分かるのではないかとも思ったのだが流石に何も分からない。そんな中で唯一何をしたのか理解している人物がいた、オールマイトであった。

 

「(話には聞いていたが此処まで凄まじい個性とは……途轍もない力だ)」

 

 

そして、爆豪と切島が体勢を立て直した時、ゆっくりと廊下を歩くような音が響き始めていた。同時に聞こえてくる龍の雄叫び、それは確信と共に警戒心を持って告げていた。敵が此方に向かっている、立ち向かう体勢を作りながら廊下の奥で紅い瞳が煌めいた。

 

リュウガ……!!

 

「来たか……!!」

「ヴィラン野郎が……!!」

 

廊下の闇を抜けて姿を現した龍牙、黒い龍の騎士は荒々しく唸り声を上げるとゆっくりと首を回しながら唸り声を上げながらこちらを威嚇するように雄叫びを上げる。

 

「ゥゥゥ……ゴアアアアアアアアアアア!!!!!」

 

周囲を揺らすほどの爆音の咆哮に思わず耳を塞いでしまった、いや強烈な威圧感に本能的な危険を感じて反射的に身体の自由が利かなくなっている。目の前にいるのはヴィランではなく猛烈な威圧感を纏っている凶悪な怪物という印象を深く持ってしまう。

 

「さあヒーロー、俺を倒してみせろよ……凶悪なヴィランを……!!」

 

龍牙は瞳を輝かせながら剣を手に取り、ヴィランとしてヒーローである二人へと向かっていく。


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