僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~ 作:魔女っ子アルト姫
「オールマイトの授業はいかがでした!?是非一言お願いします!!」
戦闘訓練の翌日の登校、そこで待ち受けていたのはオールマイトが教師として雄英に就任した事を嗅ぎまわり自分達の飯の為にしようとするマスコミの山。少しでも情報を得ようとしているのか登校している生徒たちを狙って取材を試みている。生徒達からすれば迷惑極まりない、一部生徒はテレビに映れると喜んでいる者もいるだろうがそれは向こうが有力な情報を口にしている場合のみ。それ以外の生徒など塵芥に等しい。マイクやカメラを押し付けてくるように迫ってくるマスコミ、それらは龍牙は大嫌い、というよりも他人の迷惑も考えずに行動する人間が嫌いとも言える。答える気など無かったのに迫ってくる女性アナウンサーに苛立ったのか鋭い視線を向ける、冷たい氷の刃のような視線に思わずヒッ!という声が漏れるが龍牙は気にしない。
「……登校出来ないんですけど」
「す、すいませんでした!!ど、どうぞどうぞ!!」
まるで恐れる不良の頂点に道を譲るかの如く、道が開ける。それほどまでに龍牙の冷たい視線は恐怖に値するという事だろう、ため息を一つ付くとそのまま校門を潜って中へと入っていく。こちらを恐れるように見つめるマスコミの視線を背中で受けながらふと思う、自分の個性の事を考えるのならば見た目の事で怖がられるのは当たり前。それに応じた対応をしていては何も変わらない、ならば懇切丁寧な対応をすべきだったのではないか?とこれからの課題の一つとして考える事にするのであった。
「やっほ~龍牙君おはよう!」
「葉隠さん、おはよう。今日は曇りじゃないから悪い天気だな」
「青空なお天気だから悪くはないと思うけど?」
「俺にとっては曇りが最高にいい天気なんだ。晴れは暑くなるからあんまり好きじゃない」
途中合流した葉隠と適当な会話をしながらも教室に到着する。戦闘訓練では凄かった、カッコよかったという言葉を貰えて龍牙は口角を緩めながら少しだけ笑った。自他共に認める恐ろしい風貌の個性、それをカッコいいと言われるのは彼にとってこの上ない喜びと化し始めていた。それに沿うような行動も大切なのではないかと軽く思い始めていると相澤が教室へとやってきてHRが開始される事になった。初日の除籍云々の関係か、相澤が居る時には酷く静まるのがA組となった。
「昨日の戦闘訓練お疲れさん、VTRと成績は見させてもらった。爆豪、お前ヒーローやっていく気なら餓鬼みたいな事やめて客観的に自分と周囲を判断しろ」
「……分かってる」
爆豪に釘が刺される、先日の訓練では龍牙との戦闘後に行われた緑谷との戦闘訓練で同じような酷く荒々しくビル内を爆破しまくるような戦いを行っていたらしい。流石に大爆発は控えたようだがそれでもビルの内部がボロボロになるような戦い方だったらしい。そして緑谷もその戦闘でそれなりに深い怪我をしてリカバリーガールの所に担ぎ込まれたらしい。見る限り既に包帯もしていないので良い方向には向かっているらしい。
「個性の制御出来ねぇからしょうがないじゃ通させない。それをクリアすれば出来る事も増えて行く、焦れよ緑谷」
「はっはい!!」
なんだかんだで認めるべきは認めて伸ばすべきを伸ばす、それが相澤先生である。そして次に彼が口にした言葉でクラスはまた別の熱狂に包まれる事になる。
「学級委員長を決めて貰う」
『学校っぽいの来た~……』
初日の合理的虚偽による除籍警告で完全に警戒していた皆はやる事を聞かされた改めてホッとしたのか息を付いた。本来学級委員長は雑務のようなイメージがあり誰もやりたがらないようなものなのだが、ヒーロー科においてはトップヒーローに必要な集団を導くという素地を鍛える事が出来る。故に皆が自己推薦を行っていく。唯一自己推薦していないのは興味なさそうにしている龍牙ぐらい、酷く如何でも良さそうに欠伸をしている。本気で如何でもいいのである。
「(俺の柄じゃないしな……それに俺みたいなやつが委員長になったら厄介事招きそうだ)」
ヴィラン顔負けな姿をする自分が委員長をすれば要らぬやっかみを向けられるかもしれない、本人としてもクラスとしても迷惑だろうから遠慮しておく。
「皆静粛に!!!"一"が"多"を導く大変な仕事、それをただやりたいからと、簡単に決めて良い筈がない。だからこそ信頼えるリーダーを決める為、投票を行うべきだ!!」
ここで真面目な眼鏡君でお馴染みの飯田が投票で決めるべきだと主張をした。自分もやりたいのか真っすぐ、見事な一直線に伸びている腕に皆からツッコミが入る。が、結局相澤の時間内に決まるなら何でもいいという言葉から投票制は可決される。そして……一番票を獲得したのは緑谷、次点で八百万であった。因みに龍牙は0票だったりする。
「あれ龍牙君他に入れたの?」
「ああ、俺は委員長如何でもいいから」
「なっでは君が俺に入れてくれたのか!?」
そう龍牙は飯田に入れたのであった、飯田は他の人に入れたらしく0票である事も覚悟していたのか酷く驚いている。理由を聞こうとするのだがそれより前に相澤はぶった切って授業を始めてしまったので、そこまでとなったので飯田は昼休みに絶対聞きに行こうとするのだが……それよりも早く先客が龍牙を訪ねた。
「あのすいません、龍牙って人此処にいませんか……?」
昼休み、皆が昼食を取ろうと動き出そうとする中A組を訪ねたのは長い白銀の美しい髪をした美少女であった。そんな少女が訪ねたのは龍牙であった。龍牙は顔を上げて自分を訪ねてきた少女へと目を向ける、彼女は漸く会えたと言わんばかりに瞳を輝かせた。
「やっと会えた……!!!」
「……はぁっ面倒事か」
その少女とは対照的に龍牙は深い深いため息で答えた。クラス内は一体どういう関係なのかと考えで染まる中、龍牙は歩き出し、昼食に誘ってくれた飯田に謝罪をしてから少女を連れて教室から出て校舎近くの森の中へと入っていった。そこで龍牙は面倒くさそうにしながら問う。
「それで……お前は誰だ、まあ予想はしてるが……」
「鏡 白鳥、貴方の……妹です」
「やっぱりか……」
潤んだ瞳を向ける白鳥、ため息を吐きながら俯く龍牙。二人はどのような言葉を向けあうのか。