僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~ 作:魔女っ子アルト姫
龍牙が自身の妹、鏡 白鳥と再会してから数日。何も知らない彼女に少し言い過ぎたとも思いつつも龍牙は変わらない学生生活を営み続けていた。彼女が自分に関わる気があるなら関係を持つのは吝かではない、結局は彼女の意志次第で如何にもなる。関わろうとするならば友人的な接し方はするつもりでいるが妹として接するのは難しいかもしれない。
彼が妹の対処をしている間にマスコミが雄英のセキュリティを強行突破する厄介事などが発生していたが本人は全く知る由もなくそれを聞いて普通に驚いていた。そして緑谷が委員長を辞退してその代わりに飯田を推薦し、飯田はそれを承諾して委員長に就任した。そんな学生生活をしているとその日のヒーロー基礎学の時間となっていた。
「今日のヒーロー基礎学は俺ともう一人も含めての三人体制で教える事になった。授業内容は災害水難なんでもござれの
伝える事を伝えたからさっさと行動しろと言わんばかりに相澤は20分後にバスに集合と最後に言い残して教室から出ていった。今までの事を考えれば遅れたら即刻除籍を考える事も考えるからか皆はテキパキと動きながら集合場所へと向かっていく。龍牙も例外ではなくコスチュームをその身に纏う、個性を発動させれば意味がなくなるとはいえコスチューム単体でも役割は持つ事が出来るようになっている。
「龍牙君もコスチューム着るんだね?」
「ああっ最初も俺はコスチュームはいらないと思ってた、でもあるのとないとは安全性が段違いって言われてな」
龍牙のコスチュームは最新の特殊繊維が使用されており、衝撃吸収性やダメージにもかなり強い作りになっている。関節各部には特殊合金製の物が当てられ保護が成されている。例え勢いを付けてサバイバルナイフをコスチュームを纏った龍牙の胸に突き刺したとしてもコスチュームが盾となって龍牙を守るようになっている。なのでどんなことが起きるのか分からない人命救助の場面でも十分に活躍が見込める。
「こ、こういうタイプだったのか……!!」
「全然意味なかったね」
委員長へと無事就任した彼の主導の下で出席番号順に席へ着いたのだが、後部はよくあるの二人分の座席、しかし飯田達が座っている中部から前部は左右に座席があって向かい合うタイプだったの出席番号順というのはあまり意味をなさなかった。飯田としても張り切っていたのだが、如何にも空回りしがちだ。
「私、思った事は口に出しちゃうの。緑谷ちゃん」
「えっあっはい!……えっと蛙吹さん!?」
「梅雨ちゃんと呼んで」
「え、えっと努力します……はい」
「あなたの個性――オールマイトに似てるわね?」
女子と関係をあまり持ってこなかったのか慣れない女子との一対一の会話に狼狽えている緑谷、梅雨ちゃんから言われた言葉に一瞬肝が冷えたかのような感覚を味わう。龍牙も少し気になるのか耳を澄ませながら話慣れていない彼なりの言葉を聞いて行こうと思う、
「待てよ梅雨ちゃん、オールマイトは怪我とかしないぜ?よくある似ている個性とかそんな感じだぜきっと」
「ケロケロッそうかもしれないわね。今の社会だとよくある話だものね」
切島の言葉に何処かホッとしているような仕草をしている緑谷、何かあるのかと思いつつも今度は自分へと話題を振られた。
「でもやっぱり、派手な個性っつったら轟や爆豪に龍牙だよな!!」
「けど爆豪ちゃんはキレてばかり人気でなさそう」
「んだとてめぇ出すわクソがぁ!!」
「ほらね」
梅雨ちゃんの指摘を受けてキレる爆豪だが彼女は納得するような声を出しながら案の定だったわね、と言わんばかりに指をさす。そんな爆豪に対して轟はガンスル―だが龍牙は声を出す。
「それなら俺も人気は難しいだろうな。あの見た目だからな、ヴィランっぽいヒーローランキングという意味では人気は出そうだけど」
「マジでヴィラン顔負けの姿だもんな」
上鳴の言葉を肯定しながら自分の容姿へと話を持って行った龍牙に皆もそれには同意しか浮かべられなかった。個性:リュウガを発動させた状態を誰かに見せてヒーローかヴィラン、どちらに見えるとアンケートを取ったらぶっちぎりでヴィラン票が独占する事も夢ではない。
「でもそんな個性だと大変だったじゃねぇか?ヒーローも見た目を重視する部分もあるし、第一印象ってマジで大切だもんな」
「だな。入試で他の生徒を助けたのは良いんだが、ヴィラン呼ばわりされて泣きながら逃げられたりもした」
『ああっ~……』
それはあまりにも失礼だと思う反面、それは致し方ないと思ってしまうのが龍牙の恐ろしい所だろう。オールマイトが龍牙のように恐ろしい見た目で私が来たっと言って誰かが安心するだろうか。絶対にしない、寧ろ自分を襲いに来た新たなヴィランにしか見えない。その様な現実を味わってきた龍牙、それでも彼はヒーローを目指す事を絶対に諦めたりはしない。拳を握りながらそう思っていると上鳴が少し慌てながら話題をそらした。龍牙が何かを我慢しているように見えたのかもしれない。
「そ、そういえばさ!!龍牙、この前お前を探しに来た女の子とはどんな関係なんだよ
「そう、それおいらもすげぇ気になってた!!!あんな超ハイレベル美少女と何時の間に知り合ってたんだ!?」
「あああれか。あれ、妹だったみたい」
『妹!?』
再び驚きが広がる中で一部生徒は龍牙の言葉に違和感を覚えた。まるで彼女が妹であることを知らなかったような……
「でもどうして探しになんか来たんだ?お前を知らなかったって感じだったぜ?」
「会うのは10年ぶりだったからな……互いの顔なんて全然知らんかったからな」
それを聞いて皆はどういう事なのかと思う中、相澤がもう着くから静かにしろという言葉で鎮静化させられてしまったのでそこで終わりとなった。龍牙とあの女子は何か複雑な家庭環境があったのだろうと察し、彼らはそれ以上の追及をやめた。救助訓練の会場となる場に到着してバスから降りていき、相澤引率の元、中へと入って行くとそこにあったのは驚きの光景だった。そして思わず口を揃えて言ってしまった。
『USJかよ!!?』
「水難事故、土砂災害、火事、
『本当にUSJだった……!?』
そんな言葉を漏らしながら登場したのは宇宙服のような戦闘服を纏っている一人の教師であった。スペースヒーロー 13号。宇宙服に似ているコスチュームを着用している為に素顔は見えないが、災害救助の場で大きな活躍をしているヒーローの一人だった。そんな13号は言いたい事があるらしく、言葉を綴った。個性には人を殺してしまうほどの力を持っているものがあると。この授業ではそれを人を助ける為に使う事を学んでほしいという強い思いがあった。それらを感じた所で授業に入ろうとした時の事―――
龍牙よりも遥かに恐ろしい悪意と敵意が、影を伸ばした。