僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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ヴィランと遭遇する黒龍

心臓が大きく音をかき鳴らした。突然の事に龍牙は驚きながらも何かを敏感に感じ取った、何かが迫ってくるようなものを感じながら視線を彷徨わせた。ほぼ同時にUSJ内の照明が僅かに暗くなった、直後に相澤は背後の先に噴水広場に反射的に顔を向けた。向けた先には黒い靄が空中で不気味に渦巻き、その中心からは悪意と殺意が漏れ出ていた。活動中に何度も味わったヴィランから向けられるそれと同じものに相澤は顔を顰め、指示を飛ばす。

 

「一塊になって動きな!!13号、生徒を守れ!!」

 

リュウガ……!!

 

「黒鏡、下手に動こうとするな!!」

「分かってます……!!」

 

相澤の指示よりも早く、個性を発動させ皆の盾のように前へと躍り出た龍牙。相澤はそれを嗜めるが龍牙の火力と防御力は折り紙付きなのは知っている、ある意味一番前に出るべき人材ともいえるが生徒を危険に晒すわけにはいかないと、教師の矜持を引き締めながら相澤はゴーグルを装着し13号も動き出す。

 

「皆さん後ろから出ないように!!これは演習などではありません、完璧な非常事態です!!」

 

まだ何が起こっているか分からないという風な生徒達はきょとんとしていたが、ただならぬ雰囲気を察し直ぐに13号の背後へ集まっていた。唯一集まろうとしていなかったのは縄張りを犯した侵入者へと牙と爪を研ぎ澄ませているかのように唸りを上げている龍牙だけ。

 

「どこだよ、オールマイト…せっかくこんなに大衆引き連れてきたのにさ…子どもを殺せば来るのかな?」

 

身体の各所に手を付けている男から悪意が放たれる。思わず龍牙は腰を落とすが相澤が制止を掛けるとゆっくりと後ろへと下がり13号の隣に立つ。

 

「黒鏡、お前も期を見て引け」

「……了解です。剣、お貸ししますか?」

「俺は剣は使えん、自分で持っとけ…13号、お前は生徒達を連れて避難させろッ!!俺はあいつらを食い止める」

 

捕縛武器を手に取りながら前へと一歩出る、敵は此処にオールマイトが来ることを知っていた。彼はこの授業に参加する予定だったが諸事情で今はいない状態、それを知らずいや授業に参加する事を知っているという事は先日のマスコミはあれらが手引きして雄英のカリキュラムを盗んだのだろう。侵入した来た者達へ苛立ちを持ちながら一歩進むと緑谷が声を上げて止める。

 

「でも先生!!先生(イレイザー・ヘッド)の戦闘スタイルは個性を消してから捕縛!正面戦闘は危険すぎます!!」

「一芸だけじゃヒーローは務まらん」

 

力強い言葉を言い残し、相澤は飛び出していく。これからは教師:相澤 消太ではなくプロヒーロー・イレイザーヘッドとして活動を開始する。飛び出していく相澤へとヴィラン達が笑いながら攻撃態勢に入る、最初に射撃能力を持ったヴィランがその銃口を向け、いざ意識(トリガー)を引こうとするが―――全く攻撃が出来ない。

 

「個性が使えねぇ!?」

「おいどうなってんだ!?」

「フンッ!!」

 

個性が消され浮足立っている。日常的に使用している自分の身体の一部がいきなり使用不能になる、これ程までに混乱する事もないだろう。その隙を突きイレイザーヘッドは捕縛武器でヴィランらを絡めとり、それぞれの頭部を激突させるようにしながら意識を奪って無力化していく。迫ってくる異形系個性持ちには、相手の動きの勢いを利用したカウンターを決めながら捕縛武器とのコンビネーションによる見事な体術で無力化していく。

 

「す、凄い……!!」

「緑谷感心するのは後だ、後ろは任せて早く行け!!」

「わ、分かったよ!!」

 

感激する緑谷の気持ちもわかるが此処は避難を優先するべきだと急かす龍牙、それに従って走り出すのを見て自分もその後に続いていく。

 

「逃しませんよ、生徒の皆様方」

 

瞬時に移動し、出口への道を封鎖するかのように立ち塞がる霧のような姿をしているヴィラン、他のヴィランをここに連れてくる役目も背負っている黒い霧のヴィランは何処か紳士的な口調をしながらも明確な敵意と悪意を向けてくる。それらから守る為のように13号が一歩前に出る。

 

「はじめまして生徒の皆様方。我々は"敵連合"と申します、以後お見知りおきを。この度、ヒーローの巣窟であり、未来のヒーロー候補生の方々が多くいる雄英高校へとお邪魔致しましたのは他にはない目的があるからです。我々の目的、それは平和の象徴と謳われております№1ヒーローであるオールマイトに息絶えて頂く為でございます」

「オールマイトを……随分な事を言いますね」

「大体不敵でしょう、それもヴィランの特権という奴です」

 

不敵に笑い続けている黒い霧のような男に13号は意識を集中する、一瞬でも隙を見つける事が出来れば自分の個性で最低でも動きを制限して生徒たちを逃がす事が出来る。身体を動かす瞬間、個性発動の瞬間でもいい、そこを見逃さないと意識を集中した時だった。自分の後ろから二人の生徒が飛び出して攻撃を繰り出さんと向かった、爆豪と切島だった。不意打ちに値する筈のそれ、命中すると思った瞬間に二人の目の前に自らと同じ黒い霧を展開すると二人を飲み込み姿が見えなくなってしまう。

 

「危ない危ない……。いけませんね幾ら生徒と言えど金の卵、という訳を失念していましたか。だが所詮は――卵、私の役目は貴方達を散らして、嬲り殺す事ですので」

 

そして今度はすさまじい勢いで霧が伸びていく、今度は自分達を包み込んでいく。身体が何処かに飛ばされているかのような感覚を味わうが直後に凄まじい暑苦しさと息苦しさを感じる。周囲は火の海、あちこちから火の手が上がっている。

 

「あつぅ!?ここって火災のエリアなのか?!」

「アチアチアチッ!!?」

「尾白に葉隠さんか!?無事か!?」

 

周囲を確認してみるとそこには尾白と葉隠がいた、如何やら自分は二人と共にUSJの中にある火災エリアに飛ばされたらしい。そして周囲には自分達を包囲しているヴィラン達が見えている。

 

「おい来たぞ獲物だ!!」

「っておいあんな奴集まりに来てたか……?」

「いや俺は見てないが……だがあれはどう見ても俺達の仲間だろ」

「だよな、あれでヒーローやろうとか正気を疑うぞ俺」

 

とヴィラン達からは龍牙の見た目についてのコメントが次々と漏れてくる。それは龍牙の心を抉るだけではない、逆鱗を殴りつけているようなものであった。流石に尾白と葉隠も次第に唸り声が酷くなっている龍牙を見てやばいと思い始めた。

 

「……もう我慢の限界だ、俺だって好きでこんな姿じゃねぇんだゴラァアアアアアアアアアア!!!!!」


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