僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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乗り越えたい黒龍

雄英高校の施設、通称USJにヴィランが襲撃を行った。のちにこれはUSJ事件として警察内部で処理される事になった。この事件の主犯と思われるのが(ヴィラン)連合を名乗る組織の存在、それらの目的は平和の象徴となっているトップヒーローたるオールマイトの殺害。が、奇しくもそれは標的であるオールマイトの奮戦によって阻止され生徒達に大きな怪我を負った者は居なかった。いたとすれば個性の反動で怪我をした緑谷位であった、が、もう一人医務室を訪れていた生徒が居た。黒鏡 龍牙であった。

 

「……ばっちゃん、俺ってまだまだだよね……受け入れなきゃいけないって分かってる筈なのに……」

「そうだね。お前さんはまだまだ若造だよ、未熟な若造だよ」

 

医務室、ではなく談話室にて龍牙とリカバリーガールの姿があった。治療が必要となる者の治療を済ませたリカバリーガールが訪れた談話室には思い詰めているかのような龍牙は腰を下ろしていた。顔に深い影を落としながら視線を彷徨わせている。

 

「ヒーローは誰かを助けるって思いで動くもんだよ、でもアンタは自分の感情で動いた。どっちかって言えばヴィランのそれに近いねぇ……今回は状況が状況だから結果的には良かったかもしれないけど」

「ううっ……」

 

ヒーローとして長い時間活動してきたリカバリーガールとしても龍牙の行動ははっきり言って褒められた物ではない、龍牙の個性に対するコンプレックスは根深い。人生を狂わされた要因ともいえる、それを他でもないヴィランに自分達と同じと言われたら当人としては我慢できない物が渦巻くのも理解出来る。

 

「仮にプロだとしてその行動は正しかったかい?自分の思いで暴走してヒーロー仲間をも巻き込みそうになったのは如何かと思うよ」

「……うん、俺もそう思う。俺も何とかしたいよ、自分の中で気にしない気にしないって思ってきたのに……」

 

強く手を握りこんだ時の事、談話室の扉が開け放たれた。目をやってみるとそこに立っているのは……白い毛並みをしたネズミだった。

 

「こ、校長先生……」

「YES!ネズミなのか熊なのか隠してその実態は……校長さっ!!」

「それ龍牙に言う必要ないんじゃないかい?」

「お約束は守らないとね!!」

 

そんな風に言葉を漏らしているネズミはこの雄英高校の校長を務めている根津であった。根津は人懐っこそうな笑みを浮かべながら龍牙の隣に腰を下ろした。

 

「今回は本当にお疲れ様だったね、個人的には君が無事で本当に良かったよ」

「……校長先生、俺ってヒーロー失格ですかね」

「随分と早急な答えだね。それを決めるのはあまりにも早すぎるよ、君はまだ子供だ。子供であるという事は成長の可能性があるって事だよ。これから大きくなっていけばいいんだよ」

 

暗い声を出す彼を慰める根津、片手でお茶を淹れながら彼なりの意見を出す。このような言い方は失礼かもしれないが龍牙が失格なら普段から酷く荒々しく平然と殺すと連呼する爆豪の方が失格になりそうな気もする。彼だってこれから丸くなっていく事もあり得るのだから、龍牙とて変わっていく事も出来る。

 

「でも君は今までは我慢出来てきた筈、妹さんに会って昔の事を思い出しちゃったのかい?」

「それもある、とは思います……あの二人からの干渉があるかもって思うと……」

「……ないとも言えないからね」

 

根津も少しだけ表情を硬くして龍牙の意見に同じものを浮かべる、龍牙にとって本当の両親はトラウマを強く刺激してしまう存在でしかない。過去の事で大きく取り乱さなくなってきたとはいえ、まだまだ幼く精神的にも未熟な所が目立つ彼が再び両親と会った時どうなるだろうか、そんな両親が過去の事を忘れて寄りを戻そうとしたらどうなるのかは根津ですら想像できない。

 

「それじゃあ今君はあの二人の事をどう思ってるんだい?」

「……正直分からないです。でもよくは思ってません」

 

逆に良く思え、というのが難しいかもしれない。突如個性が発現し、皆が龍牙の事をヴィランだと決めつけた。そしてまともな確認をすることもなく恐怖に囚われたまま攻撃や拘束を行い、彼らは警察に龍牙を引き渡し引き取らずに施設へと預けてしまった。全ては龍牙の姿がヒーロー一家としての名前に傷をつけるかもしれないという、愚かなエリート的な思考故に生まれている。いっその事、本当に無個性の方が幸せだったかもしれない。

 

「でも俺は校長先生に会えた事は幸せだと思ってます、素晴らしい個性だって言って貰えましたし」

 

家族からの事で破滅的に暗く絶望していた龍牙にそっと手を差し伸べたのが他でもない根津だった。出会いこそ偶然が引き起こした物だったが、それが新しい希望を手繰り寄せた。

 

「そう思ったのは事実だし本当の事だと思うよ、君の個性は出来る事の幅が広い。見た目だけじゃないって事を証明すればみんなに愛されるヒーローになれると本気で思ってるよ」

 

そんな龍牙にも温かく接してくれる人たちとの出会いもあった、でなければ間違いなく姿かたちだけではなく心までヴィランに堕ちてしまっていた事だろう。ヴィランとの遭遇は不意にもそんなIFの姿を彼に幻視させた、自分が恐れた物を。だからこそヒーローになりたい、自分を超える為に、この力でも人を助けられることを証明する為に。

 

「……すいません校長先生、初心忘れてたみたい。師匠の教え忘れてたかも」

「大丈夫かい、忘れたら後が怖いよ」

「全くです。だからもう忘れません、恐ろしくても大切なのは心ですからね」

 

そう言いながら拳を握る、そして決める。ヴィランだ何だと言われても、それを制したうえでヒーローとして動く事をやって見せる。その為にこれから師匠に連絡をしてみようと思っている。

 

「ちょっと俺、電話して着ます。師匠に叱って貰おうと思って」

「そりゃいいねぇ存分に叱られてきなさい」

「うんうんっ美しい師弟愛ってやつだね!」

「んじゃまた後で―――有難う父さん」

「うんっ気にしなくていいのさ」

 

 

 

『……そうだな、間もなく雄英体育祭だ。それまでの間……また扱いてやる』

「お願いしますっ……師匠!」

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