僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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体育祭に心躍る黒龍

ヴィランのUSJ襲撃後、雄英は処理やヴィランが敷地内が潜んでいないかの調査などで数日が休校となっていた。入念な調査の結果として問題が無いことが発覚し無事に授業は再開される運びとなった。無事に授業が再会されたことに安心する中、襲撃を受けたA組も何処か安心したような気持とこれからの課題のような物を見つけたものも多くいる。龍牙も必然的に登校してくるのだが、如何にも普段とは様子が違うように見える。

 

「ねぇねぇ龍牙君、ほっぺに絆創膏貼ってあるけどどうかしたの?」

「よく見たら包帯もしてあるな、怪我してるのか?」

「少しあってな、ヴィランに襲われてなったわけじゃないから安心してくれ」

 

龍牙が手当てを受けたような姿になってやってきた事だった。皆、USJでその様な怪我を受けたのかと心配するが、当の本人は全く平気そうな顔を作りながらも満足感に満たされているかのような笑みを浮かべていた。頻りに拳を握りは開くを繰り返すのを見つめ、何かを反芻するような仕草。何かあったのだろうかと皆が思う中で葉隠は近づいて行って笑顔で告げる。

 

「ねえ龍牙君、今とってもいい顔してるよ!」

「んっそうかな……」

「うんうんっキラキラしてる!あっでも私が行っても説得力無いかな?」

「ははっ確かに透明だもんね、でも鏡には葉隠さんの姿は映ってるよ。身も心も鏡みたいに綺麗って事だよ」

「おっ~それっていい響き~!よしこれからそれ、フレーズに使っていく!」

 

普段よりも饒舌に会話も進んでいる、明らかに機嫌がいいように見える。本当に何かあったらしい。尾白もそれを聞こうとするのだが、もう相澤が来る時間になってしまったので葉隠にそれを言って席に着く。全員が席について間もなく、直ぐに相澤がやってきた―――全身包帯でぐるぐる巻きにされているミイラ男状態で。

 

『相澤先生復帰早!?』

「大した怪我じゃない、婆さんが大袈裟だから包帯を巻いてるだけだ。気にするな」

 

相澤はUSJにてオールマイトと互角の戦いをやってのけるヴィランを連れた主犯格のヴィランらと戦闘、その際に大怪我を負っている。それによる傷はリカバリーガールによって治癒されているがそれでも重症患者なのは変わりはない。それなのに授業を行おうとしている辺り、動けるなら問題と思っている合理的主義者の相澤らしい。だがリカバリーガールはいう事を聞かないかなぁと溜息をついているだろうなぁと内心で思う龍牙であった。

 

「先日の件で色々言いたい事があるとは思うがそんな暇がない。新しい戦いが迫っている、覚悟しておけ」

 

そんな言葉に思わず一同は身体に力を入れてしまう。先日のUSJでのヴィラン襲撃、それがまだ続いているのかと皆に緊張が走っていく。誰もが自分達に危機が及ぶのではと緊張感を持っていた、そして相澤の口から語られる言葉に―――

 

「雄英体育祭が迫っている」

 

『クソ学校っぽいの来たあああ!!!』

 

大声をあげて歓喜する。どうやら危険ではなかったらしい。この言葉にクラス全員が少なからず興奮していた。雄英の体育祭と言えば学校規模のイベントというわけではない一大イベントなのだから。

 

嘗て存在した世界規模のイベントであるオリンピック、がそれらは個性の出現によって廃れてしまい今は存在しない。故に今はヒーロー達が個人の技などを競ったりする物がそれらに代わっている。プロヒーローによる競技も人気だが、学生が行うそれも人気。そしてその中でも雄英の体育祭はそれらの中でも規模も内容も群を抜いている。全国規模で放送される訳でここで結果を残すか目立つかしてプロの目に留まれば、将来目指すヒーロー像への近道が生まれてくる。己の力をアピールするチャンスなのだ。だからこそ、この雄英体育祭に向けられる熱意は内側からも外側からも並大抵のものではない。皆がこの体育祭で全力を発揮する。

 

USJ襲撃があったにも関わらず敢えて開催に踏み切ったのも理由がある。

 

「開催に否定的な意見もあるが、開催はする。雄英の管理体制や屈しない姿勢を見せつけるいいチャンスでもある。警備やらは例年の5倍以上だ、生徒諸君は安心して体育祭に挑んでくれ」

 

そんな言葉もあるA組の意識は一気に体育祭へと向けられていた。それに龍牙も熱くなっているのか龍らしい好戦的な笑みを浮かべながら拳を掌に叩きつけ力を込めていた。そんな中であっという間に放課後になってしまう、龍牙は放課後は行く場所が居るので荷物を引っ手繰って廊下に飛び出そうとするのだが、廊下にいる大勢の生徒達が此方を覗き込むようにしているので通る事が出来ずに急ブレーキを掛ける。

 

「と、通れない……」

「すっごい人だね!」

「これも多分、僕たちがヴィランの襲撃を受けたからだろうね……」

 

と葉隠と尾白が呟く。既にヴィラン事件の事は広まっており廊下には大勢の生徒が詰めている。野次馬目的なのか、それとも敵情視察なのか……それは定かではないがこれでは通れない。これでは約束している相手を待たせてしまう、出来れば直ぐにでも出たいのだが……。

 

「おいモブども、退け……邪魔だ。他人の迷惑も考えられねぇマスゴミかてめぇら」

 

そんな中、爆豪が罵声を浴びせながらも自分達の都合も考えろと遠回しに伝えたからか生徒達が少し道を作り始めた。それを見た爆豪は舌打ちをしながら邪魔だと呟きながらさっさと帰っていく、自分もそれに続くべきかと考えていると一人の生徒がそんな彼を見ながら言う。

 

「ふぅ~ん……あんなのがヒーロー科の生徒ねぇ……幻滅だな」

 

その生徒は爆豪を見ながらお前らもそんな感じかと挑発的に言葉を続けていく。が、流石に龍牙も声を出す。

 

「いや流石に全員あれと同一視されるのは勘弁願いたい、だがクラスメイトとして謝罪する。申し訳なかった」

「……いや俺も悪かった。ただ一言だけ言っておく。調子に乗ってると足元ごっそり掬われるぞ」

「肝に銘じておくよ、忠告有難う」

 

そう言い残すと満足したかのように、少し気だるげそうな彼は去っていく。しかし龍牙は彼の言葉にも一理あると思いながらも自分も気を引き締めなければと思い直す。そして時計を見てやばいと汗を流す。

 

「って時間がやばい!?ちょっと失礼、全力でダッシュゥゥウ!!!!」

 

凄まじい勢いで走り出していく龍牙、一体何があるのだろうか。龍牙が凄まじい勢いで走り抜けていく中、一人の少女がA組を訪れた。龍牙の妹である白鳥であった。

 

「あ、あの……」

「えっと、確か白鳥……さんだっけ」

「は、はい。お兄ちゃん……じゃなくて龍牙さんはいらっしゃいますか……?」

「龍牙君ならさっきすごい勢いで帰っちゃったよ」

 

それを聞くと白鳥は頭を上げて彼を追うように大急ぎで廊下を駆けだしていく。彼女も龍牙に用があったのだろう、しかし龍牙に会う事は叶わず肩を落とす姿が見られた。

 

「お兄ちゃん……お父さんとお母さんが会いたいって言ってるの伝えたいのに……」

 

そんな思いを抱くが龍牙は知る事もなく、とあることに勤しんでいた。それは―――

 

「がはぁっ……!!」

「如何した龍牙、この程度か!?立て、まだまだ終わりになどせんぞ!!」

「はいっ師匠……!!オオオリャアアアア!!!!」

 

師との特訓であった。




尚、約束の時間に間に合わず、ものごっつ怒られてメニューを倍にされた黒龍。

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