僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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体育祭に臨む黒龍

いよいよやってきた体育祭当日、開催までの時間を各自が使って今日まで備えてきた。その結果が今日明らかにされようとしている。雄英の体育祭には通常の体育祭とは比べ物にならない規模の人間が集ってくる、純粋に楽しむ為に、警備のために、未来のヒーローへのスカウトと全てがバラバラ。全てを含めたならば数千では効かなくなるような人数だ。そしてUSJの事件を受けてヴィランへの警戒を強める為に、雄英が様々なヒーローに呼びかけを行った結果として多くのヒーローが警備として参加してくれている。今までよりもすさまじい大規模、その中で行われるのだから生徒たちの緊張も一入だろう。

 

「……ふぅぅっ~……」

 

控室にて深い息を吐きながら気持ちを落ち着けようとしている、今日という日を覚悟と強い気持ちを持って迎えたつもりだったが矢張り緊張はする。落ち着いているつもりだが妙にそわそわしてしまっている自分がいる、そんな気持ちを落ち着けるかのように息を吐く。

 

「ねえ大丈夫龍牙君、凄い息してるけど」

「大丈夫、流石に緊張してね」

 

そんな彼を心配するかのように声をかける葉隠のこれも多少なりとも震えている。当然、雄英体育祭は全国へと放送されるお祭りイベント。何かへまをしたらそれがあっという間に日本中に知れ渡る。それらを加味してもこんな大規模な舞台で緊張するなという方が酷だろう。

 

「TVに映るとか私もう緊張しっぱなしだよ!!あ~これで何か言われたらどうしよう!?」

「だよねぇ。自分の名前を広めるチャンスでもあるけど、同時に怖い機会でもあるからね」

「でも葉隠は大丈夫じゃねぇか?だって透明だろ」

「ハッそう言えば!?でも少しは目立ちたい乙女心ぉ……!!」

 

そんな風に呻くような言葉を出しながら唸っている葉隠を見つめながら龍牙は息を吐く。そう、今日この日、自分は日本中に自らの姿をさらけ出す。ヴィランと恐れられ、逃げられる自らの姿を世間の波に晒すのだ。この日については根津とリカバリーガール、そして師匠から何度も言葉を貰って来た。だがヒーローになるつもりなら結局は世間の目に触れる事になる。それが早いか遅いかの違いでしかない。なら―――思いっきり目立つように映ってやろうではないかと半ば開き直る事にした。

 

「そう言えばよ、龍牙は大丈夫なのか?お前の個性って俺達は慣れてるけど、見慣れない奴からしたらめっちゃ怖いんじゃねぇの?」

「ちょ、ちょっと峰田君!?」

 

恐らく心配からきた言葉だろう、峰田がそう尋ねて緑谷が止めるように言う。龍牙が個性の見た目の事を気にしているのは皆が知っている事。それを指摘するのは明らかに拙い事、だが彼の言葉は正しいとそれに轟も続いた。

 

「だけどその通りだろ。黒鏡、お前の個性を慣れてねぇ奴に見せたらどんな反応が来るかはお前が一番分かってるんじゃねぇのか」

「轟君まで!?」

「いやいい、その通りだからな。入試の時には助けた相手に逃げられた、USJではヴィランに仲間扱いされた。それほどまでに俺の見た目はそっち側なのは承知してる」

 

100人に聞いたら確実に全員がヴィランと答える事だろう、そんな事は分かっている。そんな龍牙が、ヒーローになりたいと思ったのは最も尊敬するヒーローの背中を見たから。自分の個性は変えられない、だから―――

 

「だからこそ見て欲しい。俺を、俺の心を」

 

見せ付けてやるんだ。ヒーローになりたいと心から思っている自分の姿を。

 

 

『全開にして刮目しろオーディエンス!群がれマスメディア!今年もおまえらが大好きな高校生たちの青春暴れ馬…雄英体育祭が始まディエビバディアァユウレディ!!?』

 

解説席から聞こえてくるプレゼント・マイクの声、それが知らしめるのは開始の合図。開幕の号砲となって観客たちの熱狂を増していく。同時に出場生徒の間に一気に緊張が走って行く。入場を控えている1年達の間にもそれは広がっている、マイクの言葉と共に入場が行われるが矢張りと言わんばかりに視線と歓声が集中しているのはA組だ。まだ未熟な身でありながらヴィランの襲撃に遭遇しながらも生き延びたクラスに注目が集まるのは必然。大観衆が声援を上げて出迎えてくる。それをプレゼント・マイクの気合の篭った実況が更に加速させていく。それらの勢いに飲まれそうになる生徒、物ともしない生徒に別れる中で全1年が集結した時、一人の教師が鞭の音と共に声を張り上げた。

 

「選手宣誓!!」

 

全身を肌色のタイツにガーターベルト、ヒールにボンテージ、色んな意味でエロ過ぎて18未満は完全に禁止指定のヒーロー、18禁ヒーロー・ミッドナイトが主審として台の上へと上がった。思わず思春期真っ盛りな男子生徒だけではなく観客の男たちもボルテージがMAXになっていく。何時の時代もエロは強いという奴だろうか。

 

「18禁なのに高校にいていいものなのか?」

「良いっ!!」

「峰田自重しろ」

 

そんな中、選手宣誓として入試でトップを飾った爆豪が宣誓に呼び出された。入試首席な辺り、爆豪の優秀さが光るがA組の皆は全く別な事を心配していた。爆豪の性格から考えて真面目な選手宣誓になるなんて欠片も思っていないのである。

 

「せんせー、俺が一番になる」

『やりやがった……!!』

 

心配した通り、予想のど真ん中を剛速球のストレートでぶっちぎる様な所業をやってのける爆豪に皆ですよね、的な顔を作る。彼らしいと言えば彼らしいかもしれないが……。それによって生まれるのは生徒達からのとんでもない大ブーイング、観客からは笑いや引いている者もある。そんな物を受けながらも爆豪は顔色一つ変えずに元の列に戻っていく。矢張り大物だ。

 

 

「面白いクラスメイトが居る者だな龍牙。さてっ―――俺との訓練が無駄ではないところを見せて貰うぞ」




次回から種目開始!

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