僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~ 作:魔女っ子アルト姫
爆豪の肝の座っている選手宣誓から始まった雄英体育祭、A組は周囲からのヘイトを感じつつもそれらに負けないようにと強く気持ちを持ち直す。そして主審ミッドナイトから第一種目の内容が明かされる。
「第一種目はいわゆる予選、毎年ここで多くの者が
振られた鞭の先、ゲートがスタジアムの奥の青空とコースを映し出す。これから自分達が走る事となる先へと続くロード、すぐさま誰もが自分に有意な場所へと陣取ろうと動き出していく。矢張り皆スタート地点ギリギリの場所へと進んでいくので満員電車状態と化しているので龍牙は後ろへと回る。
「満員電車みたいでいやだし……初動が明らかに遅くなる」
前半の方が恐らく本心であるだろうが、初動の事も気にしているのも事実。あれだけの人数なら明らかにもみくちゃになる。だったらいっその事後ろで体力温存やら動きを見ていた方がお得という奴だ。そして間もなくスタートを告げるランプが点灯始まる、一つまた一つと色が変わっていく。誰かがつばを飲み込む音が木霊しそうなほどの静寂、点灯音が重く響く。そして今―――それが始まる!!
『スタートだぁぁああっっ!!!』
開幕の知らせ、それと共に土石流のごとくスタートへと殺到していく選手たち。皆が他人より少しでも早く前へ前へと焦りを持っているからこそ起きている。一歩引いていて正解だったと胸をなでおろしながらも龍牙はスタートの形を見る。スタートの道はアーチ状になっており、その奥が外へと通じている。そしてそこへと通じる道は人が殺到しているが上は全く人が居ない。ならば選択は一つしかないも同じ。
「さあ行くぞ……師匠との地獄の特訓で得た俺の新技……
それは龍牙が師との文字通りの地獄に等しい特訓で得た新しい技術、言葉と共に足が部分的に黒い炎に包まれる。だが炎はすぐに収まるとそこには個性を発動させているときの龍牙の脚部があった。体操着の一部から脚が変化し変貌している。
「よしっ行ける……!!」
発動異形型に分類される龍牙の個性、発動させる場合は常に全身を変化させている訳だが師匠から部分的には無理なのかと言われ、自身も何度も挑戦し続けていた。時に師匠の言葉を受けながら、根津に意見を貰いながら試行錯誤を続ける事言われてから5年。遂に部分的に個性を発動させることに成功したのである。全身変化と比べると力も弱まるが、それでも発動していない時と比べると雲泥の差。
「よっほっだぁぁっ!!」
脚部を個性発動させ、一気に跳躍しながら壁を蹴りながら下の人ゴミを超えていく龍牙。下では轟が個性を使ったのか多くの生徒が氷に足を取られていた。そして目の前ではA組のクラスメイト達が各々の個性を活用し、氷を突破し轟を追従する姿がある。これは負けてられないと龍牙も気合を入れながら壁を蹴り、上手く着地しながら走り出していく。
「でたらめな出力な個性だな……」
と素直に轟の個性の出力に驚きを覚え、驚愕する龍牙。恐らく個性の最高出力で言えば轟はトップ独走、氷と炎を使えるというのだからなんという超パワーな複合属性な個性だろうか。氷と炎という組み合わせにトキメキを覚えつつも、龍牙が必死にその後を追っていく。追従する先、トップを張り続けている轟がいよいよ第一の関門へと足を踏み入れると思わず足を止めた。彼だけではなく全員が足を止めていた。
『さあさあ遂に来た来たやっと来たぜ!!!ただの長距離走じゃねぇのがわが校だぜ!!手始めの第一関門、駆け付けいっぱいで全力だせる戦闘はいかが!?イッツァ、ロボインフェルノ!!!此処を超えないと次にはいけねぇぜぇえエエエイエエイ!!!』
熱の籠っている実況で状況説明と周囲のボルテージを上昇させるマイク、障害物として出場選手たちを遮ったのはヒーロー科を受験した者達ならば誰もが目にした物。様々な感情を呼び覚ます赤い眼、入試にて登場しそれらを倒して得られるポイントを競った仮想敵が立つ。宛ら自立可動式の高いハードルと言った所だろう。
「おいおい嘘だろ!?ヒーロー科こんなのと戦ってるのかよ!!?」
「冗談だろこれを突破しろってか!?」
ヒーロー科以外のクラス、普通科や経営科にサポート科は流石の障害に驚きと恐怖を抱く。最低でも自分達よりも大きなロボが自分達を標的にして襲い掛かってくる、それだけでも相当恐ろしい。故かもしれない、それに真っ先に動いたのは轟であった。
「折角ならもっとすげぇのを用意してほしいもんだ、クソ親父が見てんだからよぉ!」
腰を落としながら左手を振るう、共に空気が一気に冷却されながら地面から息吹を持つかのように氷の山脈が芽吹く。それらは一際大きい仮想敵を飲み込むと一瞬で凍結させてしまい、動きを完全に停止させる。正しく一瞬の事だった、そして駆けだしていく轟。白い息を吐き出しながら前へと進んでいく彼を追うかのように次なる物が飛び出していった。それは―――黒い龍の脚で地面を駆ける龍牙だった。
「成程……突破、しかないよな!!」
改めて状況を確認しつつ、一気に駆け出す。彼も入試にて仮想敵を相手にしている、あれよりも大型の物も混ざっているが大した恐怖心は抱かないし寧ろ障害にも思わない。ハッキリ言ってあんな物よりも遥かに師匠の方が怖いしやばい、自分にとっての最大級の恐怖よりも格下の物に恐れる訳もない。ならば―――押し通りのみ。
「
右腕が炎に包まれる、そこには黒い龍の頭が出現する。それは闇の炎を纏いながら迫る仮想敵へと叩きつけられる、仮想敵は一瞬にして地面に沈められその先へと龍牙は足を進めていく。
「もっと先へっ……更に、向こうへ!!」