僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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集中する黒龍

『第一種目の障害物競走!!首位は轟ィ!!それを猛追するのは威勢のいい選手宣誓を放った爆豪、そして猛ダッシュする黒鏡ィ!!どれもA組だ、どう思うよ解説のイレイザーヘッド!!』

『……さあな。但し、轟の天下は長くは続かせないように爆豪と黒鏡は動くだろうな』

『おっとンな事聞いてる間に第二関門に近づいて来たぜ、フゥゥウゥウウ!!!』

『もう俺要らんだろ』

 

 

「……あれが龍牙」

「やっぱりだけど、大きくなってる、わね……」

 

白熱していく障害物競走を更に熱くしていくプレゼント・マイクの実況に会場はヒートアップ。オーブンのような熱気に包まれている中で、それとは真逆な空気に包まれている所があった。とある夫婦が座っている観客席だった。それは何処か幽霊を見つめてるかのような懐疑的で冷たい視線をモニターの龍牙へと送り続けている。

 

「思った以上に元気でやってるんだな……白鳥から話を聞いた時は驚いたが……」

「ヒーローを目指してるなんてね……でもそれならやっぱり」

「ああっ話しておく必要がある―――確りとな」

 

何処が歪んだ会話を続けている二人は何かを決めたかのように龍牙の映るモニターから目をそらす。それが何の感情によるモノかは分からない、だが兄を想う妹が望む物とは遠い物であるのは間違いない。

 

『落ちれば即アウト、それが嫌なら這いずりなっ!!!ザ・フォォォオオオオオル!!!!』

 

いよいよ先頭の集団が第二の関門へと足を踏み入れた。そこへと姿を現したのは巨大な峡谷のように大口を開けている地の底へと向かっているような真っ黒い闇、下を見れば引きずり込まれそうなほどに深い深い谷。切り立った崖のような足場とそれらへと架けられているロープの橋渡し。つまり、ロープを綱渡りの要領ので渡っていく事で奥へと進んで行けという事になる。

 

「この程度っ……!!」

『おっとぉ流石推薦入学者!!轟は足でロープを凍らせてその上を滑って移動していく!!中々に速いしこりゃ有利ぃ!!』

 

足を押し付けるようにしながらも同時にロープを凍てつかせ、氷の上をすべるように移動していく轟。あっという間に先へと進んでいく彼を見つめながら龍牙は部分出現を解除する。そして今度は右腕に意識を集中させていく。流石にこれほどの距離は個性を完全に使わないと超えられない、だがそれでは師匠との特訓で得た技が意味をなさなくなる。その対処法は確りと考えていた。

 

「一点集中……部分出現・攻撃!!」

 

右腕が先程よりもより激しい炎へと包まれていく、轟々と唸りを上げるかのように燃え盛る。そして出現する右腕の龍の頭、だが通常時とは異なっているのは常に黒い炎を纏い続けている事。それを見て龍牙はニヤリと笑うと一気に駆け出していく。

 

「だぁぁぁぁっっ!!!」

 

全力で右腕の龍で地面を殴りつけた。殴られた地面は一気に罅割れていき崩れていく、だがそこに龍牙の姿はない。龍牙は宙に舞いながらロープの先にある足場へと向かい、着地する代わりに地面を殴りつけて再び高々と跳び上がっていく。

 

『こりゃクレイジー&ファンキー!!なんとA組の黒鏡 龍牙の突破方法は自分の膂力で地面を殴りつけてその勢いで空に飛びあがるって芸当!!なんつぅパワー!!こりゃ轟とは違った意味でスーパーパワーだぜ!!』

 

部分的な個性の発動が可能になった事で発動の幅が広がり、その応用として見つけたのが一点集中。龍牙は個性のパワーの多くを右腕に集めて発動させる事で、通常時よりも遥かに力を発揮するような使い方を見出していた。それによる力は自らを腕力で空へと打ち出すのも可能にするほど。それを数度繰り返すとザ・フォールを突破すると先に突破した轟、自らの爆破で空を飛んで楽々と突破した爆豪を追いかけるが、鈍い腕の痛みに顔を顰める。

 

「つっ……ええい今は無視!!」

 

鈍い痛みを感じつつも、それを完全に無視して全力で疾走する。一点集中にも矢張りデメリットは存在しており、通常よりも多くの力を一つの場所に集めるので、通常の許容量を超えてしまい自分の身体を傷付けてしまう。加減すれば痛みは抑えられるので運用は慎重さが求められる。そんな龍牙も遂に最後の関門に到達する。

 

『さぁあて遂にやってきた来たマジで来た!!これが最後、即ちファイナル!!ラストの障害!その先は一面地雷原!!他にもトラップあるかもな!そこは正しく紛争地帯!!強いて言うならば怒りのアフガン!だけどeverybody もし踏んでも安心しな、競技用だから威力は控えめで殺傷力はマジ皆無!!だが音と爆発は派手だから失禁しねぇように精々気を付けやがれってんだYAAAAHAAAAA!!!!』

「高校に地雷って自由過ぎるか……?」

 

と思わず呟く龍牙は間違っていないだろう。まあロボやら断崖絶壁を用意している辺りからもうあれな気もする。だが此処を超えなければ先へは進めない、流石の轟も慎重に進んでいる。下手に凍結させて地雷が反応しないようにすれば速度こそ出るが後続にも道を作る事を把握しているからだ。それを見て龍牙はもう一度地面を殴って進もうとするが、そうはさせないと言わんばかりに周囲から空へと向けられたバルカン砲のような物が一斉に顔をこちらへと向けた。

 

『あっ忘れてたけどそこを高く飛び越えるってのはお勧めしないぜ!!一定高度に達したらそこらに仕掛けられてる対空ミニガンが火を噴くぜ!!因みにこれも弾は殺傷力皆無だから安心しな!』

「ミニガンってマジかよ!?ってそうか、爆豪が低空で進んでるのはそういう事か……!!」

 

「退きやがれってんだ半分野郎!!」

「お前がどけっ……!!」

 

視界の先では爆豪が轟と小競り合いをしながらも器用に両手で爆破を起こしながら地面から少しだけ浮いた状態を維持しているのが見えている。彼もミニガンの存在に気付いて一気に飛び越える事をせずにああして進んでいるのだろう。このままでは一気に距離を離されるだけ……ならば取るべき手段は一つだけ―――あいつら纏めて吹き飛ばす。

 

「部分出現・攻撃……行くぜ、はぁぁっ……だぁぁぁぁっっっ!!!!」

 

右腕を身体の内側に隠すかのように身体を丸め、一気に腕を伸ばすと同時に右腕の龍から獄炎の炎を一気に放出する。炎は地面を焼きながらどんどん進んでいきながら地雷の爆破を引き起こしていく。連鎖的に起爆していく地雷は遂に轟と爆豪の付近にまで到達する。

 

「なっぐああっ!!?」

「ンだこりゃあああ!!?」

 

爆破に威力こそないが、衝撃自体はある。それが一気に巻き起こった事で轟と爆豪は吹き飛ばされていく、特に爆豪は宙に浮いていただけあって轟よりも強く爆風を受けて吹き飛ぶ。そしてトップ二人の邪魔をするだけではなく自身が全力で駆けだせる道も作る事が出来た龍牙はそこを一気に突破していく。

 

『どんでん返しだぁぁぁ!!!!轟と爆豪のツートップかと思いきや、それに待ったをかけた黒鏡!!避ける筈の地雷を敢えて起爆させて妨害しやがったぁぁぁ!!!!』

「うおおおおおおっっ!!!」

 

二人が怯んでいるうちに一気に距離を稼いでいく。あの二人の事だ直ぐに持ち直してくる、その間だけでも距離を稼ぐんだと全力で走り抜けていく。そしてついに二人を追い抜きトップに躍り出た龍牙、それでも油断せず全力で走る中、背後で自分が起こした物よりも遥かに巨大な爆風が巻き起こり頭上を何が飛んでいく。それは―――

 

「僕だって、負けないんだぁぁぁ!!!」

 

緑谷だった。第一関門であった仮想敵の装甲を盾にしながら、それで爆風から身を守りつつもそれで爆風を受けて一気に吹き飛んで自分の遥か先を進んでいく。装甲はミニガンの射撃を物ともせず緑谷を守る、距離を稼ぎながら周囲には爆風による妨害、そして装甲で自分はダメージを最低限に抑える。なんという手を使うんだと素直に龍牙は驚いた。

 

「何か凄い負けた感じ……!?」

 

結果、緑谷はそのままトップに躍り出て逃げ切る事に成功し1位で障害物競走を通過した。龍牙は緑谷に続いた2位。まさかのライバル出現に龍牙は困ったような表情を作りながらも嬉しそうにする。

 

「……凄いな、お前に勝ちたいぜ俺は」


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