僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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影と繋がる黒龍

「作戦は決まった……常闇君!!」

「ああっ俺が成す事、完璧にこなして見せよう」

 

間もなく始まる騎馬戦、それに備えてチームを組んだ緑谷は騎馬となった皆へと声をかけた。まずは先頭を務める常闇、個性の黒影(ダークシャドウ)による防御を期待しての勧誘。前以て作戦の伝達も完璧、常闇も万全になすとやる気を出してくれているのも非常に頼もしく、自分達を巨大な強い影が覆ってくれているような安心感がある。

 

「麗日さん!!」

「準備はOKだよデク君!」

 

左後を務めるのは麗日。彼女の個性によって各人の重さをなくしてスピードを上げる事が主目的、重量が減る事で格段に動きやすくなるので彼女の役割はかなり重要になる。

 

「そして、龍牙君!!」

「分かっている。存分に俺を使ってくれ、お前ならきっと使いこなせる」

 

最後の龍牙。前以て緑谷に全身の個性発動ではなく、部分出現による使用を主にしたいという事を願ったのだが緑谷はそれに対して嫌な顔一つせずに承諾した。完全発動すれば部分出現に比べて大きな力を使える、だがそれを敢えて抑えた使用で止めたいという我儘に近い願い出を彼だけではなく麗日や常闇も快諾した。それは龍牙が自分の個性の事で悩んでいる事を深く理解しているから。

 

『うん分かったよ龍牙君。そういう方針で行こう』

『……いいのか、俺は全力は出したくないと言っているのと同義だぞ。そのせいでミスを犯すかもしれない』

『でも龍牙君はその方が良いんでしょ?だったらそうしようよ!!だとしても龍牙君は手を抜いたりはしないって判るもん!』

『然り。全力を出さないのと手を抜くのは異なる物、お前ならば出せる範囲で俺達に全力に協力してくれると分かっている』

 

そんな言葉を聞いて本気で嬉しくなった。自分の個性を配慮してくれているだけではなく、自分を完璧に信頼してくれている事に涙を零してしまった。涙もろくなったことに嬉しく思いつつも龍牙は力の限り、チームに貢献する事を誓う。

 

『さぁ、上げてけ鬨の声!!血で血を洗う雄英の関ケ原!!その開幕を告げる狼煙を上げるぜYAAHAA!!行くぜ、残虐バトルのカウントダウン!!』 

『物騒すぎるだろ』

 

マイクの実況と共に騎馬戦の開始が告げられた。各々が決めた組み合わせの騎馬、それらが一斉に動き出していき自らの勝利へと向かって進んでいこうとする。そしてそれは1000万を超えるポイントを保有する緑谷チームへの牙となって襲い掛かってくる。だが当然それらは想定済み、麗日は予め触れていた皆へと個性を発動させて重さを軽減させていく。その結果、緑谷チームの騎馬の重量は30キロ台になっている。

 

「龍牙君、早速お願い!!」

「任せろ緑谷。部分出現……たぁぁっ!!」

 

脚に炎を纏い個性を部分発動させ、地面を思いっきり蹴る。龍牙の体重は70キロ台、それよりも半分以下に近い状態では遥かに高い跳躍となり緑谷達は天高く舞った。

 

「うわわわっ!!?お、思ってた以上に飛んだぁ!?」

「凄い空飛んでるみたい!!龍牙君って本当に凄い!!」

「有難うな、常闇手筈通りに頼むぞ!」

「御意。黒影、仕事だ!!」

『アイヨ!!任セトケ!!』

 

常闇の身体から影が、いや闇が伸びる。それは鳥にも似た頭部のような形になりながらも鋭い指先を持った腕を携えながら地面へ腕を伸ばし見事なクッションの役割を果たしながら全員を着地させた。

 

「凄いよ常闇君!あんな高い所からの落下なのに全然衝撃とかが無かったよ!」

「この程度雑作もない、さあ次へ備えるぞ黒影。俺達を守れ!」

『アイヨ!!』

 

常闇 踏陰の個性、黒影。鳥の形状をした伸縮自在の影っぽいモンスターをその身に宿している。その身体は伸縮自在、常闇の指示などを受けて自在に動き指令を全うする。攻撃、防御、移動と汎用性に優れており創造という個性を有する八百万とは違った意味で高い状況対応能力を持っている。だが黒影には弱点も存在する。

 

『日ガ強クナッタ……痛イ……』

「不味いな、曇りが晴れ始めている……!」

 

それは光にような明かりに弱いという事。暗い場所であればあるほどに凶暴性と攻撃能力が格段に上昇する反面、明るい場所ではそれが下降していくという性質を持っている。日光下で活動するのであれば操作こそ容易いが攻撃能力は激減し、常闇曰く中の下程度の力しかないらしい。だが緑谷はその対策も考えてあった。

 

「龍牙君お願いできる!?」

「任せろ。部分出現・攻撃!!黒影、受け取れ!!」

 

片手のみで緑谷を支えながらも右腕の龍で黒炎を吐き出す、それは黒影の傍を通り過ぎていく。本来炎は明るさを齎す、人類の進化の象徴。だが龍牙の炎は黒く闇その物と言っても過言ではない。光が弱点という黒影にとってその炎がどのように作用するだろうか、それは―――

 

『闇ノ炎……力ガ、高マル、溢レル……!!』

「ぐっ落ち着け黒影、そうだそのまま俺達の死角を見張りつつ迎撃をしろ!!」

『ウオォヨォオオ!!!』

 

黒影が闇の炎を受けた結果、闇の帳に包まれているときのような力を得た。まるで吸い込まれていくかのように黒い炎を飲み込むとそれらを身体に纏うようにしながら黒影は巨大化しながらも好戦的な言葉を口にしながら、周囲へと猛烈な威圧感を発散させていく。

 

「デク君凄いね!!これも分かってたの!?」

「そ、想像以上だよ。僕は龍牙君の黒い炎なら常闇君の言ってた黒影の弱点を補えるかもって位しか……」

 

緑谷の考えは黒い炎を壁のようにして黒影が受ける光を軽減させて少しでも力が弱まるのを防ごう程度だった。だが実際は違う。黒影は龍牙の炎を自ら吸収して自らの力へと還元させている。常闇も制御に少し苦労しているがまだまだ許容範囲内、真夜中のような力強さを発揮しながらもまだまだ確りと制御出来る程に黒影にも理性がある事に彼も驚く。まさか過ぎるシナジーが龍牙と常闇の間に存在した。

 

『グォオオオオオ!!!』

「ダメだ黒影、その力は人に振るうな!!地面を、割れ!!」

『グォオオオオヨォオオオ!!』

 

荒々しい黒影、それが暴走しないように抑えつける常闇。人に振るえば危うい力を咄嗟に地面へと振るう。その一撃は地面を割り、深い溝を作り出すほどの破壊力を見せ付け周囲を牽制している。暴走一歩手前の凶獣、それが今の黒影には相応しい表現。日光があるからこそ常闇が指示を出せば確りと従うのだろう。

 

「俺の黒影にこんな力があるとはな……闇の炎を司りし龍牙、お前との出会いに感謝を」

「いや俺もこれは予想外なんだが……」

 

この後、定期的に龍牙が提供する炎を吸収した黒影が大暴れし緑谷達はなんとかポイントを守り切ることに成功するのだった。そして―――常闇は多くのトップヒーローの目に留まるのであった。




黒影の強化、というよりもある種のアンチ龍牙能力。

闇っぽい?個性の力であれば吸収して自分の物にする。が、どの程度のものならば吸収できるか今のところ全く不明。

常闇ならば龍牙に勝つ事は十二分に可能。

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