僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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大切な友達と黒龍

「あの、龍牙君、そのちょっといいかな……?」

「ふぇっ?」

 

観客席に戻り、そこで適当な出店で購入した出し物を頬張りながら観戦している龍牙。そんな彼の元に緑谷と葉隠がやってきて話しかけた。重く暗い面持ちをしていた二人だが焼きそばを啜っている最中だったのか、口から大量の麺を加えているままの龍牙は酷く間抜けに見えたのか思わず吹き出してしまう。

 

「あはははっ龍牙君今の状態凄い面白い!!あははははっ!!!」

「むぐむぐ……焼きそば食べててごめんごめん、お腹すいててさ」

「でもすごい面白い絵だったよ、写真撮ればよかったかも」

「あぶなっ弱み握られるところでした」

 

思わぬ光景に少々和んだ二人、先程まであった緊張が薄れた所で少し話したい事があると言って観客席から離れて適当な場所へと移動する。龍牙も話したい事があると聞いて、何かを察したのかそれに従って素直について行った。廊下の物陰に隠れ、光から避けるようにしながら周囲の目が無いことを確認する二人に何を話すのだろうかと少々ドキドキしてしまう龍牙。これで恋愛相談やらされたらどうしようと本気で緊張している。

 

「そ、それで俺に話って何なんだ?」

「うっうん、本当に話をするかどうか迷ったんだけど……」

「でも言うべきだって思ったの、だってだってそうしないといけないって」

 

次の言葉までの間、ほんの僅かな時間である筈なのに3人の間に流れる時間の流れは酷く遅くなっているように思えた。空気が汚泥のような粘性を得ているかのように息苦しい。心臓が早鐘を打っている。そんな時間を破ったのは薄々と気づき始めた龍牙だった、きっと言いづらく緑谷と葉隠も大きな決心をして自分に会いに来てくれたのだろうと、それを労うように自分から問いかけた。

 

「そっか。有難う二人とも、態々言いに来てくれて。本当に良い人だな」

「りゅ、龍牙君……」

「聞いちゃったかな、俺に関する事」

 

直接的ではないが本質的な事を問いかける。二人は思わず俯いた、葉隠はそうかは分からないがそうしているように思える。そしてぎこちなく首を縦に動かして頷いた、葉隠は小さくうんと呟いた。それを確認して溜息混じりにそっか~と軽く言う龍牙は天井を見つめる。

 

「そうか、んじゃ緑谷なんか驚いたんじゃないか?だって俺の親がトップヒーローの二人なんだからさ」

「そ、そりゃ驚いたよ。ヒーロービルボードチャートJPでも上位に毎回入ってる超実力派ヒーローだから、体育祭には来るかもとは思ってたけどまさかこんな風に会うなんて……」

「ははっそりゃ驚きだよな、あっしまったなサインをお願いしておくべきだったな。緑谷欲しいだろ」

 

ヒーローマニア的な印象を持っている緑谷を気遣っているのかそんな風に語り掛ける龍牙、普段ならば目を輝かせ鼻息を荒くして大きく頷く事だろうが今は全くそんな気分ではなく引き攣ったような笑みしか浮かべられない。何処か誤魔化しているような言葉だが、龍牙はそれをやめて頭を下げた。

 

「悪い、気分を悪くさせた」

「龍牙君が謝る事なんてないよ、だって私たちが勝手に……」

「いや俺はそんなこと気にしてない。二人はもう謝ってくれたじゃないか、謝る必要もないのに自分達から。俺を気遣ってくれてありがとう」

 

龍牙に二人を攻めようとする感情は欠片も存在していない。当然、責めるなんて筋違い。寧ろ此処まで誠意を感じさせる二人には好感しか沸かない。

 

「緑谷、葉隠さん。二人には言っておく方が良いだろう、分かるかもしれないけどあの二人は俺の両親だ」

「やっぱり……もしかしてと思ったけど」

「でも、でも龍牙君。その、その話してる時は全然家族らしくないっていうかその……」

 

しどろもどろになっている葉隠、なんとか龍牙を傷付けないように必死に言葉を選びながら話そうとしているがどうすればいいのかわからずにオロオロしてしまう。龍牙は笑って落ち着いてと問いかけてくるがそんな事は出来ない。彼女は両親から大きな愛を貰っている、雄英入学が決まった際には強く抱きしめて貰ったし学校での話をすると自分の事を様に嬉しそうにして聞いてくれる。だが龍牙と二人との間にそんな物はない、家族愛といった物を感じられなかった。

 

「まあ、家族らしくはないだろうな。あの2人と会うのは10年ぶりだ、俺も正直何をどう話せばいいのか分からないのか素直な本音でさ。茶化しながらじゃないと訳わかんない事ぶつけちゃいそうで」

「10年振りって……だってご両親、なんだよね……?」

 

10年という年月は言葉にするのは簡単だろうが、実際にそれを経験したことがあるならば長い時間だ。生まれたばかりの赤ん坊が大きく成長して学校に入って勉強しながら友達と遊ぶほどに成長する時間。長い長い時間を両親と会っていなかった、何故そうなっているのか。

 

「両親……いやそれは間違いないだろうな。今の俺にとっての両親ってのはあの2人じゃなくて今の保護者なんだ。まあ失礼かもしれないけど俺はそうだと思ってる」

「如何して、なの……?」

 

殆ど反射的に出た言葉だった、それを口にした直後に両手で手を塞ぐがそんなものは龍牙に映らない。気にも留めないだろう、彼にとって両親は今のところその程度の存在でしかないのかもしれない。これから変わるだろう、が今はそれが限界。そして問いかけた時、龍牙の瞳が少しだけ、変わった。

 

冷たくなった、そう表現すればいいだろうか。そこには氷のような視線とそれを発する表情がある。

 

「―――聞いて後悔しないか。俺がこれから話す事は二人の中にあった物を壊すかもしれない、憧れの存在への侮辱かもしれない。話す事は良い、だけどそれを聞くのは二人が決めてくれ」

 

話す事に抵抗などない、両親はあの時誰かに言ったかと言っていた。それを破るような形になるかもしれない、それでもいい。だが抵抗があるのは二人だ。自分の馴れ初めは劇薬に近い、トップヒーローとして認知されているビーストマンとミラー・レイディ。この二人に対する認識を覆してしまいかねない。その事が酷く不安だ。問いかけられた二人はわずかに顔を見合せたようにすると覚悟を決めたかのように言葉を連ねる。

 

「……優しいよね龍牙君って。私たちの心配をするなんて、大丈夫だよ。全然」

「うん本当だよね、僕は君さえよければ聞かせて欲しい。そして君の本当の友達になりたい」

「―――ああっ分かったよ」

 

そして龍は語りだしていく、自らの過去を。自らが有する力を得た代償として支払った物、そして自らを取り巻く環境を。

 

「俺は―――鏡 龍牙、ビーストマンとミラー・レイディの実の息子だ。そして二人にとっては忌まわしい存在だ」

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