僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~ 作:魔女っ子アルト姫
「龍牙、留学をしてみないかい?」
「留学……ですか?」
それは間もなく中学生になろうという時の事だった、突然根津から留学を勧められた。
「I・アイランドは知ってるよね、そこに僕の教え子がいるんだけど彼に君の事を知らせたら是非とも会いたいと言われてね。何ならこっちでいろいろ学んでみないかって言われたのさ」
「あのI・アイランド、ですか……でも大丈夫ですかね」
「大丈夫か。言語の壁だった直ぐに超えた君なら向こうでも上手くやれるよ」
この時点で根津の仕込みを経て既に英語、ドイツ語、ロシア語をマスターしている龍牙。きっと言葉の問題で困る事もないだろうと確信している。加えてI・アイランドは何方かと言えばアメリカ寄りな所もある場所、日本よりも遥かに個人を尊重し、力があればどこまでも行ける自由な気風もある。それに―――I・アイランドならば個性による差別を受けづらいという利点もある。
そんな勧めを受けた龍牙はそのままI・アイランドに留学を行う事になった。この事に一番反対したのはギャングオルカであり、彼としては弟子以上に可愛い息子を一人で行かせて大丈夫なのか、後会えないのがさみしいという理由もあったがこれも龍牙の為だと涙をのんで送り出した。尚、1週間に一度は絶対にメールと電話をしろという事は言われている。
「よぉっ君が龍牙君だな、君の事は根津先生から聞いてるよ、ようこそI・アイランドへ」
「あっこれから宜しくお願いします、桐生博士」
「気軽に戦兎でいいって、これから一緒に生活するんだぜ?」
I・アイランドに到着した龍牙を待っていたのは根津の教え子であり既にI・アイランドに活動拠点を移して日夜研究に打ち込んでいる戦兎であった。彼が現地で龍牙の世話をする事になると同時に留学先を引き受ける事になっている、そこで龍牙は個性について修練や勉学に励む事になる。
「おおっすげぇ個性だな!!良いな最っ高だ、もっと俺に個性を見せてくれよ。そしてこの個性はもっともっと伸ばしていくべきだ!!!」
根津やギャングオルカに続くかのように自らの個性を大いに肯定する存在に龍牙は嬉しさを覚えながら、戦兎の研究にも全力で協力しながら戦兎の教えてくれる物を全て吸収しながら成長していく。そしてI・アイランドに留学を始めてから3か月が経とうという時の事だった、戦兎がある人物を紹介してくれた。
「紹介するよデヴィット、こいつが今俺の助手を務めながら最高の相棒をやってくれてる龍牙だよ。やっと紹介出来た」
「ハッハッハ、紹介出来たのは君が研究に熱中しすぎたからじゃないのかい戦兎。僕としてはもっと早く紹介して欲しかったところだよ」
「いやぁ面目ない、龍牙の個性が今俺が研究してるテーマにベストマッチしやがってもうイメージがスパークしてギュインギュインのズドドドドッ!!!って感じで止まらなくなっちゃって」
「君らしいよ全く」
そう、あの超有名な科学者であるデヴィット・シールドに助手として紹介してくれた。デヴィットとして前々から龍牙の事は噂で聞いており、是非とも会いたかったのだが戦兎のスケジュールが研究やらで埋まったいた為に此処まで伸びてしまった。
「会いたかったよリュウガ・クロカガミ君。君の事は以前から噂で聞いていたよ、あの自意識過剰でナルシストな孤高の天才、桐生 戦兎が助手を取ったって僕たちの間では結構話題になってたんだよ」
「ちょっと待ってデヴィット!!俺そんな風に言われてる訳!?否定する気ないけどさ!?」
「否定出来る要素が無いの間違いじゃないかな、研究成果の発表の時に毎回毎回あのフレーズを言ってれば誰だってそう思うさ」
「まあ確かに」
「うぉい龍牙までそう言っちゃう訳!?」
あのフレーズとは〈凄いでしょ、最高でしょ、天っ才でしょ!?〉の事である。龍牙もこの三か月で聞き飽きる程に聞いた言葉だったりする。まあ実際大天才を超える程の天才なのだから言ってもいいとは思うが……流石に言い過ぎなのである。そんな中気になったのはデヴィットの隣の女性で笑顔を浮かべ続けている、そんな視線を分かったのかデヴィットは紹介をする。
「私の娘だよ、きっと仲良くなってくれると思うよ」
「メリッサ、メリッサ・シールドよ。宜しくねリュウガ君」
「此方こそ宜しくお願いします、黒鏡 龍牙です」
弾けるような明るい声を浮かべつつも優しい微笑みを絶やさないメリッサと握手をする。そんな出会い方が彼女とのファーストコンタクト、そしてこれから続く関係のオリジンでもあった。
「本当にリュウガ君の個性ってカッコいいわっ!!それにこの個性の出力、素晴らしいの一言では言い表せない!!」
「全くだ、俺の研究にも龍牙はすげぇ影響を与えてくれてる」
それからメリッサは時々戦兎の研究室に出入りするようになり、龍牙についての事柄を手伝うようになっていた。メリッサも科学者の端くれとして龍牙の個性には興味もあったし、自分の研究に生かせる物があれば取り組みたいという思いもあっただろう。だが、そんな思いはあっという間になくなる程に龍牙に対する好奇心が沸き上がる。
「よし龍牙、次はお前とどれが相性を良いのかを調べていくぞ」
『了解です』
彼女にとって龍牙の個性は全く恐怖の対象などではなかった、寧ろ様々な意欲をかき立てられる素晴らしい存在としてしか映らなかった。そんなメリッサに龍牙も最初こそ何処か戸惑いこそあったが、徐々にそれも無くなり初めての年の近い友人が出来たと根津やギャングオルカに報告を行った。
「ねえリュウガ君、今度私の研究も手伝って貰えないかしら。実は炎に関する事だから是非とも力を借りたいの」
「炎ですか、俺の黒炎は普通の方とはだいぶ違いますけど大丈夫ですか?」
「大丈夫寧ろ好都合!黒炎は普通の炎よりも火力も高いから逆に良いデータが取れるわ!!」
そんなメリッサと龍牙は日に日に近い距離を取るようになっていた。休日になれば共に出掛けたり、メリッサの研究に龍牙が付き合ったり、メリッサが龍牙の勉強を見ると言った事も少なくなかった。そんな二人を戦兎は何処かニヤニヤとしながら見守って自主的にいなくなって二人っきりの状態をちょくちょく作ったりもしていた。
「ねぇっこれなんてどうかしら?」
「こっちの方がいいと思いますよ」
「あっやっぱり!?」
そんな風に何時の間にか二人は共に居る事が多くなり、当たり前のようになっていく。気付けば、カップルのような関係を築いていたがそんな時間が過ぎていく中で龍牙は間もなく高校の受験を控えるようになってきた時の事。I・アイランドにはあくまで留学の為に来ているのであって高校は雄英に行くつもりだった。そして受験と共に日本へと戻る予定、だったのだが……
「あの、メリッサ……?」
「いや」
「いやあの、そろそろ離れて貰わないと準備が出来ない……」
「いや」
龍牙が自室にて荷物の整理を始めようとしていた時の事、メリッサが無言でしがみ付くように抱き付いてきた。突然の事に驚きつつも離れて欲しいのだが、彼女は意固地になって離れようとしてくれない。帰国のスケジュールもあるのでいい加減に準備を進めないといけないのだが……。
「いや本当に準備しないと帰れなくなっちゃう……」
「帰らないで」
「いやそういう訳には……」
「いや、帰らないで……」
何処か震える声のまま、彼女は懇願するかのように言った。このI・アイランドに来てからもう数年になっている、何度か日本に帰ったりもしていたが、今度は本当に日本へと帰ってしまう。そう思うとメリッサはこの腕を離したくなどはなかった。そんな彼女の気持ちを龍牙とて理解していない訳ではない、自分だって出来る事ならば離れるなんてことはしたくはない……だがヒーローになる為に雄英に入るというのは以前から決めていた事でもあり、根津に約束したことでもある。
「メリッサ、俺は日本に戻らないと。それは分かってくれてたじゃないか」
「そうだけど、それはまだ貴方と今みたいじゃなかった時だし、あの時と今じゃ全然違う」
あの時は友人程度だったかもしれない、だけど今は違う。好き合っている相手が遠くに行ってしまう、それが彼女にとっては堪らなく苦しい事。龍牙の夢は分かっているしその為にも必要な事なのも分かっているが感情を止めきれない。そんな彼女を龍牙は静かに抱きしめる。
「もう会えなくなる訳じゃないよ、長期休暇中は絶対に会いに来るしメールとかも毎日する」
「ビデオ電話もする?」
「するよ絶対に」
「……うん」
漸く彼女は渋々と言った様子だが龍牙を離した、そんな様子に少しだけ安心した表情を浮かべるが直ぐにもう一度メリッサが抱き付いた。そしてそのままキスをする。時が止まったかのような感覚に陥りながら固まっていると頬を赤くしたメリッサは潤んだ瞳を向けながら言う。
「約束だからね、守ってくれないと許さないから。日本に乗り込んで龍牙を無理矢理I・アイランドに連れて行っちゃうから!!」
「そりゃ怖いな、絶対に守るよ」
そうやって見つめあい、少しだけ笑うと二人は自然ともう一度口づけを交わす。今度は互いが互いの存在を噛み締め合うように、体温を共有し合うような長く蕩けあいそうな程に熱に満ちた深いキスだった。
素敵な恋人を得て日本へと戻った龍牙、そんな彼はどんな物語を綴っていくのだろうか。決まっている、愛する者の思いを受けた龍はラブ&ピースを齎す英雄になるのだろう。そんな龍の傍らには星のような笑みを浮かべる女性がいると皆が知るだろう。その輝きを背に受けながら龍は天を舞う、その光と共に。
―――という訳でメリッサさんルートでした。いやぁね、本当に素敵ですよね。そして今までのとはちょっと違った物を入れてみたつもりです。
本当にもっと早く映画を見ればよかったと後悔しかなかった。