僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~ 作:魔女っ子アルト姫
昼休み、全員参加のレクリエーションも終了して間もなく始まる事になる雄英体育祭最大の目玉イベントである騎馬戦で獲得したポイントが上位4組で行われる個性ありのガチバトルのトーナメント大会。当然龍牙もそのトーナメントに挑む事になる、そしてその組み合わせを見た時に少々仕組みでも行われているのではないかと軽く疑ってしまった。
第一試合:緑谷VS心操 第二試合:轟VS瀬呂
第三試合:常闇VS飯田 第四試合:黒鏡VS鏡
第五試合:芦戸VS青山 第六試合:塩崎VS八百万
第七試合:切島VS鉄哲 第八試合:麗日VS爆豪
このようになっているのだが、龍牙の対戦はいきなりの白鳥になっているのである。少し前に両親から話しかけられたりした直後にこんな結果になるなんて、何かの嫌がらせだろうか。トーナメント初戦から妹との激突とは何とも因果的な物を感じずにはいられない。それを心配しているのか周囲にいた緑谷が不安そうな瞳を向けてくるが、サムズアップで返して安心感を与えていく。
「白鳥が相手か……確か、俺と似た感じの個性だった、と思うんだけどなぁ……やべぇ想像以上に記憶が曖昧だ」
控室にて龍牙は対白鳥の戦術を考える為に白鳥の個性の事を過去の記憶からサルベージしようとするのだが……妹と一緒のいたのは幼かった頃だけ、その時も自分の個性の事でいっぱいいっぱいだったりしたので記憶が酷く曖昧……何か変身して自分が凄い凄い言っていたような記憶をギリギリで覚えている程度……。
「冷静に考えればビーストマンとミラー・レイディの個性の掛け合わせで俺っぽくて変身……分かるかぁ!!?」
ハッキリ言って全く対策なんて考えられるわけがなかったのであった、しかも幼い頃の記憶なので全くと言い程参考にもならない。なので初戦はその場の勢いで突破する事にして警戒すべき常闇の事を考える事にしたのであった。
「このトーナメントで俺にとって一番厄介なのは常闇だな……まさか黒影にあんな能力があるなんて思いもしなかったからな……」
騎馬戦での事を思い出す、自分の黒い炎で黒影の能力低下を防ぐための炎の放射。だがそれを黒影は吸収して自らの力に還元して大幅なパワーアップを遂げていた。しかも日光下である為に常闇が十二分に制御が利くというのが酷く厄介。自分の最高火力は炎を使用した攻撃なので必然的に自分の火力を無力化されたも同じ、それ所自分を不利にする材料でしかない。
そうなると自分が取るべき選択は接近戦よる直接攻撃、幸い剣を出す事は出来るのでそれを主として立ち回るのが良いかもしれない。すると課題となるのは常闇自身の実力の大きさ、黒影と共に挟撃を仕掛けられると個人的には苦しい所だが上手く捌いていくしかないだろう。考えれば考える程に常闇と黒影は自分の天敵だ、協力している間は酷く頼もしかったが、敵になるとなるとこれほどまでに恐ろしいこともないだろう。
「それでも俺は接近戦には自信がある、そう易々と負けたりはしねぇよ」
師匠との訓練は殆どの場合、偶にを除いて実戦形式でのものだった。対凶悪ヴィラン戦を想定した野外戦闘訓練、対凶悪ヴィラン屋内戦闘訓練、それらを全て実戦形式で行った。一歩間違えば大怪我必至な事も多かった程。そんな訓練の中で必死の個性制御訓練や新たな技術の獲得など酷く厳しい師匠だった、そんな訓練でも自分に対する思いやりを感じていた龍牙はそれらに必死に食らい付いていった。今日それを師匠に披露すべき日だと、前向きに考えながら笑みを作る。
「いざとなればあれを切るしかないか……いやでもあれ未完成だからなぁ……成功率4割切ってるから除外が安定かな……」
実は体育祭に向けて師匠と共に新技の研究と行っている時にある技が出来そうになっていた。威力こそお墨付きなのだが……少しでも調整をミスると自分にとんでもない竹箆返しを食らう恐れが危険があり師匠にも成功率を高めなければ使用は禁ずると言われている物。だが炎を封じる常闇相手ならば切らなければいけない場面もあるかもしれない……考えるだけにしておく事にした龍牙、そんな時に控室の扉が開いた。そこには自分と戦う事になった白鳥の姿があった。
「あっお兄ちゃん……えっとその……今回はよろしくお願いします……」
「おう。いきなりのぶつかり合いとはなんか仕組まれてるんじゃねぇかこれ」
「や、やっぱりそう思うよね……私お兄ちゃんとは戦いたくはないんだけど……」
妹は何処か乗り気ではないのか消極的な姿勢を取っている。彼女からすれば10年ぶりに会う事が出来た大好きな兄で最近漸く兄妹らしく会話ができるようになってきた事、やりにくさがあるのも致し方ない事だろう。
「それでさ、白鳥はやっぱり二人に指導とか受けてたのか?」
「うん、お父さんとお母さんに色んな事を教わったよ。だからハッキリ言って―――私は強いよ」
そう言い放つ妹の表情には強さを裏付ける自信があるように見えた。プロヒーローの二人に扱かれたのだからかなりやるのだろう。だがその言葉には何やら裏があるように思えた、ならば自分はその言葉を超えるだけ。
「だから」
「白鳥、言っておくが俺はお前より強いぞ」
「っ!!」
「俺の師匠は―――あの二人よりも遥か先にいる、その人に教えられたものを見せてやる」
そう言うと龍牙は控室から出ていく、徐々に高まってくる戦闘への高揚感。それをただ座っているだけでは抑えられなくなってきてしまった。だから少し歩いて発散してくるよしよう―――牙を磨きながら。