僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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妹と戦う黒龍

トーナメントは既に三回戦までが行われている、そんな中で龍牙は応援にはいかずに唯々控室で心を落ち着けて集中していた。緑谷には前以て自分は試合に集中するので応援できないと断っている、しかし彼はそれを快くOKしてくれた上に絶対に勝つと宣言までしてくれた。そして彼は約束通りに勝ち、龍牙もそれを聞いて思わず微笑んだ。そして自分にとって重要な第三回戦、常闇対飯田の対決は常闇が勝利をおさめた。自分が勝った場合に戦うのは常闇、苦しい戦いになるだろうが全力を尽くすだけだと龍牙は割り切る。そして―――

 

「行くか」

 

遂に龍牙の出番が回ってくる。

 

『続く第三試合!!ここまで優秀な成績で勝ち上がってきた黒き龍、その牙で相手を噛み砕け!!黒鏡 龍牙ぁぁぁ!!!!』

 

マイクの実況にも熱が乗っている、その熱がスピーカーを通じて会場のボルテージを更に過熱させていく。ステージへと足を進めていく龍牙の心もその熱に乗っかり、気分が高揚する。矢張りプロの実況は場を熱くして舞台に上がる人間の心をも熱する力がある。マイクに力を貰いながら戦いのステージへと立った龍牙。そして目の前からは覚悟を決めたような表情をしながら、体操着の腕を捲る妹の姿。

 

『対するは可憐に飛び立つ白鳥、名は姿をも冠するって奴だな!鏡ぃ白鳥ぃ!!!』

 

確かに改めて言われてみると妹ながらに見た目はかなりいいと龍牙も思う。長身で整ったスタイル、艶やかなロングヘア―に愛くるしい顔。人気が出る要素しかないと思う。

 

「鏡と黒鏡……もしかして親戚同士か?」

「かもしれないな」

 

観客席からは龍牙と白鳥の名字に首をかしげる者が多く何かしらの関係があるのではないか、と考えられている。それは正しく正解だ、二人は実の兄妹である。だがそれは一般的には分からない、名字が違えば別の家族としてみられる。そんな中でも龍牙は自分を貫き通してマイペース、対する白鳥は硬い表情のまま此方を見つめ続けている。

 

「一言言っておきます―――私、負けませんから」

「そうか、俺も負けん」

『おおっと、鏡此処で負けない宣言!!やる気は十分と見えるぜYEEEAH!!対する黒鏡ぃの方は如何だ!!?う~んイッツァマイペース!!!自分を保ち続けてやがるぜこの大物めぇっ!!!』

 

淡白な返しに白鳥は少しムスッとする。これでも結構気持ちを込めて、覚悟を込めて言ったつもりだったのだろう。しかし肝心の兄はそれを簡単にリターン、なんだか自分が空回りしているような気分になる。そんな肝心の兄へと視線を向け、構えを取る。それに合わせるように龍牙も構える。腰を低く落とし身体を半分そらすような構えに白鳥は思わず汗が出る。

 

『さあ気合は十分みたいだな!!それじゃあ行くぜぇぇ……試合、スタァァアアアト!!!』

「はぁっ!!」

 

先手必勝、その言葉を忠実に実行するかのように飛び出す白鳥。しなやかな足のばねからの跳躍、そしてそこからの鞭が撓るような回し蹴りが龍牙へと襲い掛かる。

 

「はぁっはぁっはぁぁっ!!」

『鏡連続の回し蹴りィッ!!こりゃ痛烈だ、鞭でぶったたいたみたいな音が周囲に響き渡るぅ!!』

 

駒のように回転し続ける白鳥、その姿は回転のせいかブレているのか妙なように映っている。体操服にはない筈の白い翼のようなマントが出現し始めていく、それは翼のように広げられていき周囲に白い光をまき散らしながら白鳥を包んでいく。

 

『おっとっ鏡が変化していくぅ!!これこそ鏡の個性、さあ見せてくれその完璧なプロポーションをよぉ!!』

「はぁっ!!」

 

最後の一撃と言わんばかりに鋭い一撃を放つ、そしてその勢いのまま高々と跳躍すると翼を広げながらゆっくりと舞い降りていく。優雅な白鳥を連想させるような静か且つ美しい降り方に皆が魅了されていく、白い翼に優美な金の装飾のようなパーツ、それらを纏いながら自身に満ち溢れた表情は皆を虜にする。それこそが白鳥の個性、白鳥(ファム)

 

「……成程、綺麗なもんだな。俺にはない物をもってやがる」

 

その言葉に含ませるのは羨望か、はたまた嫉妬か。静かに優雅に舞い降りる妹を見つめながら呟く龍牙は真っすぐと相対し続ける。左腕に禍々しい黒い炎とその奥にある自らの力を発現させながら、立ち続ける。

 

『おっとぉ黒鏡も全く平気そうだ!!にしても黒と白、対照的な戦いだなぁ!!』

 

マイクの言う通り、黒と白。正反対の戦いになっている、色だけではなく境遇もそうなのかもしれない。ならばこの対決は必然が引き起こしているのだろうか、それは分からないが龍牙はそんな事は気にせずに右腕にも炎を纏わせ龍の首を出現させる。それを見た白鳥は後ろへと飛び距離を取る。

 

「それが、お兄ちゃんの個性……少し、怖いね」

「お前に比べたらな。俺に優雅さはない、だが―――だぁぁぁぁっっ!!!!」

 

叫び声が周囲を劈く。叫びと共に龍牙の右腕から黒い炎が吐き出され白鳥へと向かっていく。黒炎を見た白鳥は大きく跳び上がりそれを回避する、だが炎は地面を焦がすように燃え続け周囲に熱を発散させている。

 

「力強さなら負けん。本気で来い、鏡 白鳥……!!」

 

そう言われた白鳥は息を飲みながらも翼を広げ、空から龍牙へと向かっていく。兄と妹の対決は始まったばかり、黒龍と白鳥の戦いは激しさを増していく。


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