僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~ 作:魔女っ子アルト姫
葉隠からの温かさを貰った龍牙は続く対戦を観戦していたが矢張り目を見張ったのは麗日対爆豪、そして緑谷対轟の対戦だった。麗日と爆豪の戦いは一方的且つ爆豪の容赦がなく執拗な爆発の攻撃で観客から直接的なブーイングまで起きるまでにすさまじい戦いだった。だがそれでも麗日は諦めずに個性を最大限に使った攻撃を繰り出し逆転を図るが、爆豪はそれを正面から堂々と粉砕して乗り切り勝利を収めた。
そして緑谷対轟。緑谷の個性はまだコントロールが上手く効かないのか自らの指を個性発動の回数券として使用するという一見狂気じみた戦法で轟の桁外れの個性出力に対抗。今まで氷しか使わなかった轟の炎を引き出し、最後の激突はミッドナイト主審と副審であるセメントスが止めに入るレベルの凄まじい激突であった。そんなとんでもない試合だったからか、試合のステージは完全に粉砕されてしまっており今はセメントスによる修復作業が行われている。そして―――それが終われば間もなく常闇との試合が待っている。
「―――」
意識を集中して戦いに備える、常闇は自分が最も警戒している相手でもある。自分の最大火力である黒炎を無力化して黒影の力に転化させられてしまうので必然的に封じられてしまう。取るべきは直接攻撃になるのだが……日光下で弱体化している黒影の速度はかなり優れているので、本体である常闇の元に飛び込むのも一苦労だろう。それに常闇本人の実力が未知数なので何とも言えない部分が強い。
「大丈夫だよ龍牙君!!きっと勝てるって!!私応援してるからね!!」
「っ―――有難う、本当にうれしいよ」
垣根なしの本音で明るい声でそのように言ってくれる葉隠に礼を言う。きっと笑顔で言ってくれているのだろうが彼女が透明であるので確認する事が出来ない。だが笑顔であることが不思議と確信出来た、優しく明るい彼女だからそう思えるのかもしれない。もう考えるのはやめるとしよう、自分は兎に角彼女の応援に応える為に精一杯にやろう。それが最適だろう。
「それじゃあそろそろ俺行くね」
「うんっ頑張ってね!!」
最後に自分の手が握られるような感触を最後に葉隠は去っていった。遠ざかっていく彼女に手を振りながら見送ると静かに息を吐きながら入場ゲートへと足を進める。気持ちは落ち着いている、最高のコンディションとも言える状態をキープ出来ている。こんな静かに闘志に満ちた精神状態は初めてかもしれない、そう思える程に充実している。
「葉隠さんに感謝しよう、今度何がお礼をしないとな」
そんな事を決意しながら遂に始まりの時間となり、入場ゲートから一歩足を踏み出して光の下へと足を進める。観客からの歓声やら様々な視線が向けられてくるがそんなものは気にならない。ただ一直線に前から歩いてくる常闇へと視線が行った。
「この時を待ち続けた、お前と矛を交えるこの時を」
静かに刃を研ぎ続けた侍が、ゆっくりと鞘から刀身を覗かせるように常闇が呟く。普段から物静かな彼だが、今の彼は静かだが熱い心を火力全開にしている。
「俺はこのトーナメントでお前が一番手強い相手だと思ってる。そんなお前にそう言われるとは光栄だ。それにこたえる為に俺も力の限りを出してお前に挑む」
嘘はない。様々な意味で常闇の強さは大きな壁。そんな壁を必ず破ってみせると龍牙も自らの牙を磨いて準備をしていた。必ず牙で食い込ませてみせる。
「闇炎龍、貴殿にそう言われるとは俺も悪くないらしい。だが俺の闇の深さを舐めるなよ―――さあ今こそ雌雄を決する時だ闇炎龍、俺はお前を超える」
「来い漆黒の影。龍の持ち味は炎だけではない事を見せ付けてやる」
互いに開始の合図を待たずに闘志を燃やし、それをぶつけ合っている。彼らにはマイクの実況すら耳に入っていない、目の前の存在に集中している。僅かにでも意識をそらした方が負ける、そんな確信めいたものが互いに存在していた。腰を低くし構えを取る二人、静かに開始の合図を待つ、そして―――開始の合図が鳴る。
「
『アイヨッ!!』
「
常闇の身体から闇が伸びる、個性である影のモンスター・ダークシャドウが瞳を光らせながら迫る。伸縮自在な腕が龍牙を捉えようとするのを右腕の龍頭が防ぐ。連続して切り裂くような攻撃を繰り出し続ける黒影、攻撃の威力ではなく連続攻撃に主眼を置いた攻撃を龍牙に浴びせ掛ける。
「ぐっ……むぅっ!!」
龍頭での防御で何とか立ち回っているが明らかに手数が足りずに防御しきれていない、押し切られている。本人曰く攻撃は中の下らしいが、それでも攻撃を集中させられれば後方へ押される事は避けられない。
「
龍頭で黒影の攻撃を力を込めて弾く、一瞬だけ生まれた僅かな隙、そこを突き左手に龍の剣を出現させる。剣に名称など無かったが常闇がドラグセイバーと名付けてくれた剣を握りしめて迫る黒影の爪を弾く。
「はぁっ!!」
『イテェッ!?』
「流石の威力……!!」
迫る腕を斬り付ける、それに痛みを感じたのか声を上げながら少し下がる黒影と威力を褒める常闇。黒影を少し下げながら睨みあう。すり足をするように互いで円を描くように動く、間合いを測るように、相手の動きを伺うように。
「「―――」」
「ダークシャドウッ!!」
『オオヨッ!!』
「うおおおおおっっ!!」
全く同時に動く。一気に加速させた黒影を打ち出すか如く突進させる常闇、真っ直ぐに常闇へと飛び出していく龍牙。迫ってくる黒影へと渾身の右ストレートを打ち放つ、それと黒影の一撃がぶつかり合う。
「おおおおっ……腕部集中、ドラゴン・ストライク!!!」
『オオオッッ!!?』
龍頭ではなく、それを支える腕への一点集中。それによって押し出す力が激増し黒影の一撃を押し退けていく。そして遂に黒影を押し退け無防備に近い常闇へと龍の牙が届こうとした。龍牙も決まると思った刹那
「ウオオオオオッッ!!!」
「ッ!?」
常闇が動いた。彼自身が動いて迫る龍牙の右ストレートを真下からのアッパーを決め、軌道をそらして頬を掠る所へと攻撃を通した。その腕には黒影の一部のような影が纏っており、それが龍牙の一撃を弾く事を可能としていた。
「……流石は闇炎龍、重い一撃だ。ギリギリ直撃を避けるのが精々とは……」
「この一撃を避けられるとは思わなかった……やるな常闇」
「この技はまだまだ未完成だ、咄嗟だったが上手く安心している」
そんな会話を終えると二人はバックステップを踏んで互いに距離を取った、同時に会場中から莫大な歓声が沸き上がった。白熱した戦いに皆がヒートアップしているのか、生徒も観客も皆が興奮していた。だがそれらを常闇は冷めた目で見つめながら龍牙に問う。
「勝手なものだ、お前と鏡の対決は素晴らしい物だったのにこんな歓声は沸かなかった」
「なら俺とお前の対決はそれだけのものって思えばいい、心を動かす程素晴らしい物だってな」
「ふんっ……物は言いよう考え物という奴だな、だが―――そうだな、その通りだ」
そう言い放つと常闇は上着を脱ぎ捨てた。日光を浴びると黒影が弱体化するというにも関わらずだ、それは侮りか、いや違う。彼の瞳には確固たる意志がある、此処から自分の全てを見せてやると言う強く崇高な意志に満ち溢れている。それに影響されたのか、龍牙も同じように上着を脱ぎ捨てた。
「闇炎龍、いや龍牙と呼ばせてくれ」
「ああっ構わない」
「お前には俺の全てをぶつけたくなった、今までそうではなかった訳じゃない。此処からは本当の全力全開、正真正銘の俺の全力だ」
そう告げる常闇の瞳は美しかった。闇という名があるのにもかかわらずまるで太陽のような輝きに満ちていた、本当に綺麗だと思いながら龍牙も言う。
「なら常闇、いや踏陰。俺も此処からは制限なしのMAXで行く。覚悟は出来てるか」
「ああっとっくに出来ている」
「「―――さあ行くぞ!!!」」
第二ラウンドが―――
「リュウガ……変身!!!」
「漆黒の帳の闇、我が身に宿りて真の力を見せろ……!!!」
『オウヨッ!!!』
「発動―――深淵闇躯……!!」