僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~ 作:魔女っ子アルト姫
「……済まないな黒鏡君、いきなり話しかけた上に時間まで取って貰って」
「いえ、ステージの修復で時間はありますから。それで話って何でしょう―――エンデヴァーさん」
「エンデヴァーで構わない」
控室近くの廊下、そこでは龍牙がトイレの帰り道にとある人物に声を掛けられていた。それはオールマイトに次ぐ実力を持つヒーロー、№2ヒーローであるエンデヴァーだった。ランキングだけで語るならば自分の師であるギャングオルカを上回る物を秘めているヒーロー、そんなヒーローとの遭遇は何を生むのかと龍牙は少々ドキドキしていた。
「無用は前置きは不要だろう、率直に言おう。君はビーストマンとミラー・レイディをどう思っている」
「―――っ!!」
下手な言葉は自分の気分を損なうだろう、とエンデヴァーは前置きを捨てて何故こうして会いに来たのかその理由を口にした。二人のヒーロー、トップヒーローとして挙げ連ねられる夫婦ヒーローであるビーストマンとミラー・レイディ。何故その事を自分に問うのかと思っているとそれが顔に出たのか、エンデヴァーが答える。
「先程の事だ、二人が俺の下に来てな―――俺の娘の相手に君を推してきた」
「推す……相手……?」
「簡単に言うならば許嫁に如何かという事だ」
「それってつまり、俺の結婚相手!?」
「その認識で間違いないだろうな」
それを聞いて龍牙は頭痛と眩暈を覚えてしまった。ハッキリ言って結婚とかそんなものは考えた事なんてない、それ所か自分は初恋もまだした事が無い。友達はまともにいなかった上に根津に引き取られてからもまともに接する異性なんてリカバリーガールぐらいしかいなかった。異性の友達も雄英に入学してから漸く出来たぐらいだ。
「だが俺としては一度も顔を合わせた事もない奴を娘の相手にする事は出来ん、その位の親心はあるつもりだ。それで君に会いに来たのだが……その様子では矢張りあの二人は君に無断で話を進めようとしたのだな」
「全然知りませんよ!?一言も言われてないですし、まともに話したのだって今日が久しぶりの事なんですから!!?」
「……そうか」
龍牙の様子を見てエンデヴァーは溜息混じりにあの馬鹿夫婦と毒づいた。
「君の名字から察しはしていたが……君はあの二人の息子なのか」
「……一応そうなると思いますよ、でも俺には別に親が居ます。その人達が今の俺の親です」
その瞳は力強い光があった、敬愛、信頼、親愛、愛情、様々な物を孕んでいる光。それを見ていると少し自分の心が痛くなるような気もするが続けて名前を聞いていいかと尋ねると龍牙は喜んで名前を言った。
「根津校長とギャングオルカです。まあギャングオルカは師匠ですけど、俺の中では親です」
「校長とあいつがか……成程、君の強さの理由が分かったぞ」
あのギャングオルカが師匠ならばあの洗練された強さを持っているのも納得がいく。試合を見る限り相当鍛えこんでいるのだろう、最初こそ許嫁は断るつもりだったのが正直言ってエンデヴァー個人としては龍牙の事を気にいりそうになっていた。普通にこの瞳の光は頼りになる力強さを持っている、個性の恐ろしさに反して優しい光だ。
「成程。あの二人については俺の方で適当にあしらっておこう、君は次の試合に集中するといい」
「でも迷惑になるんじゃ……」
「気にするな、俺としてはあの二人のやり方が気に食わんだけだ」
純粋にエンデヴァーはビーストマンとミラー・レイディに対して良い感情を抱けなくなっただけ、それだけ。エンデヴァー自身は自分の事を立派な親だとは思っていない、それでもこの龍牙という少年に対して少しばかり力になりたくなっただけ。それだけだった。
「次に君は俺の息子と戦う事になる、だが君も応援させて貰う事にしよう」
「有難う御座います、でも応援して俺が勝っても知りませんよ?」
「大きな口を叩くの勝手だが、そう簡単には勝てんと思うがな。そう焦凍にはな……」
と僅かばかりに歪んだような表情を見せたエンデヴァーだが、彼は直ぐに踵を返して軽く腕を上げて龍牙の健闘を祈り観客席へと戻る事にした。
「意外にエンデヴァーって優しい人なのか……?」
聞いていた評判とは何処か違った印象を受ける、純粋に親として自分に会いに来たようなと思う龍牙。そして同時に両親への懐疑心が深まっていく。恐らく両親もエンデヴァーが自分に会いに来ると思ったりはしなかったのか、それとも話すとは思わなかったのかは分からないが、それでも勝手に縁談を設けようとしていたなんてハッキリ言って気分が悪い。
「つぅ~かエンデヴァーさんだって困るだろ、俺みたいな奴を娘さんの相手にされても」
何処かズレている龍牙。矢張り自分の個性に対する印象は変わらない、自分は確実に忌避されると思い相手にいいと思われる訳がないと思っているようだ。
「……これは校長と師匠に話して、早めにガツンと言って貰った方が良いかもな」
この後試合が控えているので、この事をメールに纏めて二人に送信するのであった。そしてそれを見た二人は無言で鏡夫妻へ青筋を立てるのであった。
「許嫁にするにしても彼と冬美では歳も……いや、本人同士がいいならば……」
と少しだけ許嫁について悩むエンデヴァーであった。
今作のエンデヴァーは何処か親らしい一面を見せる感じにしようと思っています。