僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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試験後の黒龍

『お前の個性、全く怖くない』

『怖くない……って嘘だ、そんなの嘘だ……』

『嘘なんかじゃない』

 

根津と共に見つめる二つの影があった。今や自分の親であり師匠でもあるギャングオルカ、その二人に初めて個性を見せた時、二人は全く怖くないと言ってくれた。だがそれを自分は全く信じなかった。彼にとってその時の個性というのは自分を地獄の底に追いやった力の事でしかなく、自分の一部でなく忌むべく対象でしかないのだ。

 

『いいか、よく聞け。個性の力というのはそれをもって何を成すかで決まる。お前は何かを成したのか、何もしていない。正義でも悪でもないのが今のお前だ、如何したいのかはお前自身で舵を取れ』

『自分で……』

「うん。龍牙君、君がヒーローになりたいなら僕は精一杯その手伝いをする、道を示そう、だけど逆にヒーローなんかになりたくたくはないしただただ平穏に暮らしたいだけならそう出来るように手配もしよう』

 

それが龍牙にとってのオリジン。二人のヒーローから貰った物が龍牙をヒーローの道へと導いた。そんな光が―――黒い炎に飲まれる。黒い炎を纏った龍がそれを胸の内にしまいながら前へ進み始めた。

 

 

「―――……ぅぁっ……」

 

酷く懐かしい物を見ていた気がする、そんな気がするだけで一体何を見ていたのか全く思い出せない。でもなんだかとても気分がいい気がする、良く分からない。意識が定まらない、長い時間をかけてそれを少しずつ修正していって漸く意識が定まった時に龍牙は口元にあった透明のマスクのような物に気付いた。

 

「……んぁだ、これっ……?」

「龍牙君……?」

 

聞き覚えのある声、耳に馴染んだ声。それに導かれてそちらを見ると透明で手袋だけが浮かんでいるのが見えたが、龍牙には全く違うようが見えているかのように少しだけ微笑んだ。

 

「葉隠さん……如何して泣きそうなんだ……?」

「龍牙君!!リカバリーガール先生、龍牙君が起きましたぁ~!!!」

「本当かい!!?」

 

握られ続けていた手袋が開け放たれると直ぐに大きな声が挙げられた、それを聞いたリカバリーガールが傍にある椅子に飛び乗って自分の顔を見つめながら意識がはっきりしているのか、自分が誰なのか分かるのかという問答を繰り返す。それに逐一答えながら大丈夫だと判明するとリカバリーガールは張っていた気が緩んだのか、深く息を吐きながら肩の力を抜いた。

 

「本当に焦ったよ……アンタが此処までボロボロになって医務室に担ぎ込まれた時にはもう生きた心地がしなかったよ……スイーツァが来てくれなかったら治癒させられない位に消耗してたんだよ」

「スイーツァ……さんが来たんですか……?」

「そう。アタシの治癒は治癒力を活性化させるだけだからね、当人に体力が無い状態じゃ死んでしまう。だからスイーツァに来て貰ったのさ」

 

スイーツァの至福の癒しは体力を回復させ疲労を消す力、リカバリーガールの治癒は治癒力を活性化させて傷を回復させるが当人に体力が無ければ使えない。故にこの二人がいれば体力が無いに等しい患者でも治癒を掛けてやる事が可能になるのである。

 

「それにしても問題なのはオールマイトの奴さね!!全くあいつは加減ってものを知らないのかい!!」

「えっえっ?」

「えっと龍牙君、オールマイト先生は今お説教を食らってるんだって。なんかオールマイト先生、試験を完全に逸脱する力を出しちゃったみたいで……」

 

逆に今回よくぞまあクリア出来たと教員の皆が称賛の嵐を二人に送った。今回のオールマイトはハッキリ言って期末テストの壁としては余りにも高すぎていた、最早クリアさせる気が無いクソゲーのような状態。それを逆にクリア出来たのは龍牙の決死の行動と自分の全てを囮と罠に使った豪胆な作戦で葉隠の存在を完全に隠しきったからこそ。この二人でなければ確実にクリアできなかった。

 

そして龍牙も龍牙でなければやばかった。いや龍牙のタフネスさ故の結果と言うのもあるが、それでも瀕死の重傷を負っていった。それをスイーツァが自身の体力を明け渡すという回復技を行い、その体力でリカバリーガールが治癒を行うというコンボで漸く回復させる事が出来た。

 

「そ、それでオールマイト先生は……?」

「あの大馬鹿は説教中だよ!!今は根津が試験をやってるから代わりでギャングオルカがね」

「えっ師匠まで来てるんですか!?」

「当たり前さね、スイーツァはオルカの事務所にいるんだよ。来るのにはどうしてもオルカの許可がいる、でも理由を聞いて我慢出来ずに奴も一緒に飛んできたのさ」

 

普通ならばやってこないギャングオルカ、だが今回はスイーツァに事情を聞いた時に顔を真っ青にさせながら飛んできたとの事。そしてやってきて話を聞けばオールマイトが龍牙と相対し、危機感を感じてしまい思わず力を出してしまったという事を聞いて、ある意味誇らしくもなりながらも息子を瀕死に近い状態にされて切れない親などいないという事でオールマイトに殴りかかるように迫ったとの事。

 

「肝心のスイーツァは流石に疲れたからって寝てるよ。アンタも後でお礼を言っておきな」

「そりゃ勿論」

「体力自体はスイーツァがかなり譲渡してくれたおかげでMAXに近い状態筈だよ、後でもう一度検査するからそれで大丈夫なら教室に戻ってクラスメイトに大丈夫って所見せてやりな。大勢医務室に来て大パニックだったんだから」

「う、うわぁ……」

「だって龍牙君凄い血塗れで呼吸器を付けてたんだよ?そりゃ心配するって」




「オールマイト貴様ぁ……覚悟は出来ているんだろうなぁ……よくもよくも龍牙を……やっぱり我慢出来ん!!ここで貴様は殺すぅぅうううううう!!!!」
「冷静になるんだギャングオルカ!!気持ちは分かるが落ち着いてくれ!!」
「お気持ちは本当にお察しします!!ですが、ですが落ち着いてください!!」
「ああもう私が眠らせるからみんな下がって!!」

「本当に、本当にすいませんでした……」

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