僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~ 作:魔女っ子アルト姫
「……お前の親、大丈夫か」
「やっぱりそう思うか……?」
「当たり前だろ。10年ぶりにあった子供に対してなんだそれ、胸糞悪い話だ」
試合後、龍牙は轟に何故姉の事を聞いたのかの説明を行っていた。その過程で自分の身の上や両親についても詳しく話した。轟は顔を二転三転させながら話を静かに聞き続けて、時には龍牙に同情し、両親にキレ、今の親に驚きを繰り返しながら話を聞き続けた。そしてエンデヴァーの話を聞いて少し意外に思った。
「……あいつなら、縁談を受けそうなもんだけどな。お前の個性を手に入れる為に」
「顔を見た事が無い相手に娘はやれないって言ってたけど」
「あいつが言うのかよ」
と轟のエンデヴァーに対しての辛辣な言葉は止まらない。矢張り関係は最悪なのだろう、だがそんなエンデヴァーが縁談について知らせてくれたのも事実、それは間違いないのだから。
「師匠と校長にはもうメールで伝えてあるから大丈夫だとは思う。試合前に変な事聞いて悪かった」
「いや大丈夫だ、そんな事情ならしょうがねぇ。寧ろ聞いて当然だろ」
「悪いな轟」
「―――焦凍、それでいい」
「えっ?」
思わず聞き返した。
「何かあれば俺を頼れ。直ぐに力になってやる」
「有難いけどなんで……?」
「……なんとなくだ、兎に角そう言う事だ」
何処か照れくさそうにしながら焦凍は去っていってしまう。龍牙は兎に角分かったと伝え、自分も龍牙でいいからと返すと腕を上げてそれに答えられた。それを見た龍牙思わず思った。
「なんだかんだで似てるんだな……エンデヴァーさんと」
「……くそっ!!」
力任せに廊下の壁を殴りつける、僅かに凹み亀裂が走る。酷く苛立つ自分を上手く抑えながらもそれでも怒りが沸き上がってくる。思わず身体から炎が舞い上がる、冷気が迸る。
「ふざけんなよ……親父以上のクズかあいつの実の親は……!!」
焦凍は龍牙に自身を重ねていた。境遇が似ているように思える、彼の場合は最初こそ両親には愛されていたが個性が発現した瞬間に捨てられているので違いこそあるが、親から酷い仕打ちを受けている。そしていきなり再会したと思ったら家族だ何だの言っておきながら、縁談を決める。自分よりも酷いとさえ焦凍は思っている。今彼が普通に生活出来ているのは今の親がとても深い愛情を注いでくれた結果なのだろう。
雄英校長の根津、そしてトップヒーローとしても名が通っているギャングオルカが今の親。特にギャングオルカは師匠でもあるらしい。その二人が龍牙の親として相応しいと焦凍は思ってさえいる。
「俺も何かしてやりてぇ……」
焦凍が思い立ったのも龍牙の両親の事が単純に気に食わなかっただけではなく、自分に重ねている部分もある。両親の勝手な都合でこれほどまでに振り回された上に、個性婚のような事まで強要されかかっている龍牙の事が余りにも放っておけないとさえ思った。彼に自分のようになってほしくないからかなのかは分からない、だが焦凍は今まで登録だけ登録していた連絡先に電話を掛けた。
「……親父、龍牙の事で話がある」
『そうか、聞こう』
「次は決勝、相手は爆豪か……戦闘訓練以来だなあいつとは」
轟、いや焦凍から力になってくれるという言葉を受けてまた一人友達が増えたと笑みを作りながらも自分が上り詰めたトーナメントの頂上にて、自分を待ち受ける最後の相手の事を思う。一度、戦闘訓練にて手合わせをした相手が今度の対戦相手。爆破というシンプルな強さと高い身体能力、流石に戦闘訓練で行ったような大爆発は容易には行えないとは思っているがそれでも相手にするのは大変な事は変わりないだろう。
「最初から全開で行ったとしてもあいつはそう簡単には倒せない、となると……如何しようかな」
爆破のダメージはそこまで問題にはならないが、爆風による場外判定負けに気を付けるべきなのかもしれない。だとしても自分には真正面から向かっていくのが矢張り最善手になるのだろう。
「にしても……観客受けがわりぃ決勝戦だなぁ……」
自分と爆豪の共通点を探すとなれば確実に人相が悪い事、そして観客からブーイングなどを受けている点。自分は個性を発動させればヴィラン顔負けの姿になり、爆豪は爆豪で素でヴィランっぽいと思えるほどに人相が悪い。まあある意味それは羨ましい気もするのだが……そんな二人の頂上決戦、なんとも受けが悪そうな……。
「そんな事言っても無駄かぁ……まあ俺は俺で全力尽くすだけにしとこ」
そんな風に完結した思考を終わらせた時の事、廊下の向こう側から二人の影が見えた。それを見た瞬間に龍牙は顔を顰めながら舌打ちをした。
「何の用だよ、この後決勝を控えてんだ。集中の邪魔なんだけど」
「それは済まなかった、でもまさか龍牙が此処まで強いなんて思いもしなかったんだよ」
「ええっ本当よ。でも流石は私たちの子供ね、だって私の
そう、向かってきた二人はビーストマンとミラー・レイディだった。自分を褒めるように矢継ぎ早に言葉を羅列していくが龍牙はそれら全てを聞き流しながら適当に相手をする。
「それでだ、今日の放課後は記念に一緒に食事なんてどうかな?最高級のレストランを予約してあるんだ」
「ええっ三ツ星の最高のレストラン、私たちの行きつけよ」
「……生憎俺は貧乏舌でね、そんな物の味は分からないからいい」
龍牙はそう言いながら二人の間をすり抜けて去ろうとする、そしてすれ違いざまに言う。
「それに今日はもう予定が入ってる―――残念だったな」
龍牙にとっては高級なレストランなんてどうでもいい。そんな物よりも―――根津と師匠と共に囲む家の食卓の方が何百倍も良い。
ビーストマンとミラー・レイディにいい所ってあるの?
……実力?