僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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決勝を迎える黒龍

『さあ盛り上げれテメェら!!いよいよトーナメントの決勝だぁあ!!』

 

間もなく始まるトーナメントの決勝戦、マイクの熱すぎると言っても過言ではない実況の影響もあってか龍牙の予想に反して途轍もない熱気に包まれている。幾ら見た目が悪かろうとそんな事は関係なしだと言わんばかりの歓声が響き渡る。当然だ、ここまで勝ち上がってきた猛者同士の対決に興奮し無い物などいない。もう既に龍牙や爆豪に飛ばしていた野次など掻き消えている。いや、そうではないのかもしれない。

 

確かに興奮している者も確実にいるだろう、この二人のどちらが強いのかと気になり早く戦う所が見たいという欲求に駆られ、ジュースの氷をガリガリと噛む者、口角が上がるもの、既に立ち上がっている者といる。プロヒーローに多く見られる。そんな中でギャングオルカは一般客の席を見て舌打ちをしながら入場口に目を下ろす。同時に隣のエンデヴァーが口を開く。

 

「気付いたか」

「最初からな」

「そうか、辛いな」

「当然のような物だ」

 

短い言葉のやり取りの中に全てが詰まっている。エンデヴァーは隣に冷えた麦茶を差し出し、ギャングオルカはそれを受け取り苛立たっているかのように喉の奥へと流し込んでいく。龍牙の師である彼は苛立っていた、現状に、深い苛立ちを感じていた。

 

『この決勝戦はちょっと趣向を変えてみる事にしたぜ!!互いがステージに入った瞬間から試合が開始される!!この事については爆豪と龍牙の了承も得てる!!つまり、速攻も可能!!思う存分にやりやがれってんだ!!』

 

ステージに立った時点での試合開始、ステージに入りさえすれば攻撃が認可される。それまでは個性を発動させようが攻撃しなければいい。つまり龍牙も最初から個性を発動させた状態でステージに立てる、速攻を受け個性発動を完了させるまでにやられる心配をされずに済むという事。一見龍牙の方に有利になっているようにも思えるが、これは龍牙と爆豪を対等にさせる為のルール。二人もこのルールでの決着を強く望んだ、そしてそれを肯定するかのように真っ先に爆豪が入場口から爆破で空を飛びながらステージへと入った。

 

「来たぁぁぁ!!」

「ダイナマイトボーイ、爆豪の登場!!」

「思いっきり頼むぞ爆豪!!」

「派手な勝負期待してるぞ~!!」

 

と声援を受けると爆豪は不気味に口角を上げながら腕を上げてそれに応える。プロヒーローの間では爆豪の評価は悪いどころか寧ろ良い。どんな相手だろうと真正面から向かって行って粉砕するかの如く相手を撃破する、その物怖じしない度胸と誰であろうと平等に相手を薙ぐ姿勢が高評価を受けている。

 

ヴィランには女もいれば子供もいる、そんなヴィランを相手にヒーローは戸惑っていいだろうか。否、答えはNO。例え相手が子供だろうが女だろうがヴィランとして脅威を見せたのならば倒さなければならないのが当然。それが出来ないヒーローは逆にヴィランに倒され、ヴィランの経験という栄養になる。言うなれば爆豪はある意味でヒーローに酷く向いている逸材と言える。

 

そして、間もなく現れる。靴が地面を叩くような音が聞こえてくる。そして入場の奥から聞こえてくる物がある―――龍の唸り声だ。

 

リュウガ……!!

 

 

妖しく光る瞳を輝かせながら、入場口の暗闇の中らから姿を現した正しく黒き龍の異形の姿。細かい息遣いは戦いに高揚しているかのようにも聞こえてくる。個性を完全に発動させている状態の龍牙、それを見た爆豪は好戦的で鋭い笑みを浮かべながら両手から小規模の爆発を起こす。早く、早く上がってこいという気持ちの表れ。

 

「ブラックドラゴン来たぁ!!」

「待ってましたぁっ行けぇっ龍牙ぁ!!」

「サインくれ!!」

「プロがそれ言っていいのか?」

 

と龍牙もかなりの高評価を纏っている。爆豪と同じく相手を区別する事なく戦う姿、見た目とは裏腹に熱いハートを秘めているというのも評価点になっている。何より常闇と焦凍との戦いで見せ付けてくれた圧倒的な戦闘能力なども大きな魅力となっている。見た目が大きなウェイトになっているかもしれないが、それを跳ね除ける程の物を持っているとプロ達は思っている。が、それと裏腹に一般客らはそこまで盛り上がっていない、いや盛り上がってはいるが如何にもプロらとは違った雰囲気に思える―――全く別の興奮。

 

「……龍牙大丈夫だ、お前の良さは俺達が良く分かっている」

 

と思わずギャングオルカが拳を強く握りながらそう呟いてしまった。隣のエンデヴァーもそれを耳にしながらも敢えて聞いていないふりをした。それがいったい何を意味しているかを彼も長くヒーローをしているが故に理解している。

 

「エンデヴァー」

「なんだチンピラ」

「ぶっ飛ばすぞ、お前も良ければあいつの力になってくれ」

「元よりそのつもりだ」

 

ギャングオルカの言葉に即答する。そして間もなくステージに上がる龍牙に対してエールを送る。

 

「戦闘訓練以来か……」

「あん時は止められたが、今度はそうはいかねぇ……ぜってぇてめぇを潰す……!!!」

「やってみろ……龍のアギトに砕かれる前になぁ!!」

 

一気に駆け出した龍牙、まだステージまで少しあるがその距離を一気に駆け抜けていく。そしてステージに到達すると爆豪は興奮しきった表情のまま、爆破で推進力を得ながら突撃。勢いのままの飛び蹴りを龍牙に放つ、それに対する龍牙は龍頭で迎え撃つ。

 

「てめぇに勝ってテッペンに立ってやらぁぁっっ!!!」

「そこに昇るのは、俺だぁぁぁッッ!!!!」


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