僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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体育祭後の黒龍

エンデヴァーの娘であり焦凍の姉、冬美との形式上のお見合いの翌日。体育祭後初めての登校日となったその日、龍牙は普段通りに制服を纏って登校をしていた。龍牙が住んでいる家は雄英から程々に近い距離にある為、バス一本で十二分に通える。音楽を聴きながら冬美おすすめの小説を読みながらバスを待っていた時の事。制服の袖を引っ張られているような気がするのでそちらを見てみると、小さな男の子が輝く目をしながら自分を見ていた。イヤホンを外して如何したのかと尋ねてみる。

 

「あくしゅしてくだしゃい!!」

 

と輝いた目のまま明るい声で言われてしまうのだが、龍牙は別の人に言っているのかと周囲を見るが如何やら違うよう。そこで自分を指さしてみると益々目を輝かせながら頷いた。思わず目を白黒させながらも手を差し伸べてみると男の子は嬉しそうにしながら手を握ってくる。子供らしい柔らかく温かい手の感触が伝わる。

 

「ありがとうっ!!ママ、りゅうのおにいちゃんにあくしゅしてもらえた!!」

「あらあらよかったわね、すいませんいきなり」

「い、いえこちらこそ……?」

 

隣にいた母親と思われる背中に翼を背負っている女性に頭を下げられるのだが全く理解が追い付かない、なんでこの子は自分に握手を求めたのだろうか。首を傾げているとバスがやってきたのでそれに乗り込む、が、驚きは連続してやってきた。座るまでもないだろうと立って本の続きを読もうとした時の事、隣のサラリーマン姿の男性が声を掛けてきた。

 

「あのごめん、雄英の体育祭で準優勝した龍牙君、だったりしないかな」

「まあ、そうですけど……?」

「おおっやっぱり!!俺君の大ファンなんだよ!!サイン貰えないかな!!?」

「……へっ?」

 

間抜けな声が漏れた。本当に理解が追い付いていない、ファン?サイン?それは本当に自分に対していっているのだろうか、もしかして他にも龍牙という名前の人が居てそっちに言っているのではないかと軽く逃避しているとそれが現実だと教え込んでくる声が出てきた。

 

「あっやっぱりあの子だ!!超熱い激闘してた黒鏡君!!」

「ホントっ!?えっやば写真良い!?」

「優勝惜しかったな!!でも次は行けるぜ!!」

「えっえええっ!!?」

 

見ず知らずの人達から向けられている感情、自分に対する好意に困惑してしまう龍牙。今までいきなりこのような物を向けられたのは葉隠以来だろうか。だが今回は数が余りにも多い。バスに乗っている全員と言っても過言ではない人達からそれを向けられてしまっている、それに如何したら良いのか分からずあわあわしつつもなんとか誠実に対応しようと心掛けて接するのだが……その丁寧で誠実な対応がより向けられるものが激しくなってしまい龍牙は内心で悲鳴を上げるのであった。

 

「―――」

「りゅっ龍牙君大丈夫!?」

「―――」

 

教室の自分の席に辿り着いた時、そこには完全に燃え尽きてしまっている龍牙の姿がそこにはあり葉隠は酷く心配したように駆け寄ってきた。声を掛けても小さな呻き声しか返さない龍牙に困惑する。

 

「つ、疲れた……なんだなんだよ何で皆俺に寄ってくるんだ……」

「……あっ~成程そういう事ね!」

 

葉隠は漸く龍牙が憔悴に近い程の疲労をしているのか解せる事が出来た、龍牙は今まで浴びた事が無い程の好意や称賛を受けた。此処に来るまで応援やサインなどを強請られてしまったのだろう、個性の関係で怖がられてばかりだったのにそれがいきなり大人気になったのだから対応しきれなかった、という所だろう。

 

「でもよ、龍牙の熱さなら人気が出て当然だぜ!!実際くそカッコいいしな!!」

「そうそう、漫画だと主人公と双璧を成すダークヒーロー枠みたいな感じだよな」

 

切島と瀬呂の言葉にそういう物なのだろうかと軽く首を傾げつつも、それは自分の個性が受け入れられているという事なのかと思い直して気持ちを立て直す。

 

「俺の個性ってそんなにカッコいいのか……?」

『くそカッコいい!!!』

 

とクラスの男子勢から力強い肯定が返ってくる、想像以上の反応に困惑しつつもカッコいいと言われて素直に嬉しくなる龍牙であった。

 

「龍牙、姉さんから話は聞いてるが大丈夫か」

「大丈夫だ、特に気にもとめてない」

 

先日の見合いの件を話をする焦凍と龍牙。焦凍しても龍牙は放っておけない、姉に言われずとも仲良くするつもりではいた。焦凍自身も龍牙とは何処か仲良くなれるような予感があった、それから龍牙と焦凍は昼食をともに取るようになっていた。その時は決まって二人ともざるそばだったりする。

 

「そうか。後姉さんが妙にお前を大事にしろって言われたんだが、お前姉さんに何言った」

「いや特には……お前に寧ろ世話になりそうって事ぐらいしか……」

 

「「……フッ」」

 

一方、互いにライバルと意識している常闇とは軽く視線を合わせた後に揃って小さく微笑むだけであったが、二人は妙に満足げな表情を浮かべていたのを葉隠は見ていた。そんなやり取りをしていると何時の間にか相澤がやってくる時間がやってくるのであった。皆は相澤が来る前に席に着く、ある種恒例行事である。

 

「ヒーロー情報学はちょっと特別だ」

『特別?』

 

ヒーロー情報学、ヒーローに関連する法律や事務を学ぶ授業で個性使用やサイドキックとしての活動に関する詳細事項などなど様々とを学んで行く。他のヒーロー学とは異なり苦手とする生徒も多いが、今回は何か異なる模様。

 

「コードネーム、いわゆるヒーローネームの考案だ」

『胸膨らむヤツきたあああああ!!!』

 

ヒーローネーム、即ちヒーローとしての自分を示す名前の決めるという事。自分の事に関する故にヒーロー足る者として絶対的に必要な物にクラス中からテンションが爆発して行った。オールマイトを始めとしたそれらはヒーローの象徴ともいえる物、テンションがMAXゲージになって行くが相澤が睨みを利かすと一瞬で静かになる辺り本当に慣れてきているというか、相澤の怖さが良く分かる。

 

「ヒーローネームの考案、それをするのも先日話したプロからのドラフト指名に密接に関係してくる。指名が本格化するのは経験を積んで即戦力と判断される2年や3年から……つまり今回来た指名は将来性を評価した興味に近い物だと思っておけ。卒業までにその興味が削がれたら、一方的にキャンセルなんてことはよくある。勝手だと思うがこれをハードルと思え、その興味を保たせて見せろ」

 

幾ら体育祭で素晴らしい力を見せたと言ってもまだまだ経験も足りない物を採用などはしない、これから力を付けていかなければ今の評価など簡単に引っくり返る。そして相澤は手に持ったリモコンを押してある結果を黒板に表示した。

 

「その指名結果がこれだ、例年はもっとバラけるんだが今年は偏ってるなある意味で」

 

黒板に示されている氏名数は矢張りと言うべきか体育祭のトーナメントの結果を反映したものだという事が良く分かる。しかし相澤のある意味での偏りというのも理解出来る結果となっている。それは―――

 

――A組・指名件数。

 

  爆豪:2483

 

  黒鏡:2303

 

   轟:2264

 

  常闇:2182

 

集中しているのがこの4人であるからである。




次回、ヒーローネーム決定!!

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