僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~ 作:魔女っ子アルト姫
ご希望された方、なんか違ったらすいません、今度日常系で龍牙と壊理ちゃんをほのぼのさせるので。
「はぁはぁはぁっ……」
走る走る走る、暗闇の中を必死に両足を動かして走り続けていく。走る度に不安と恐怖が渦巻く、それにさえ背を向けて走り続ける。もうあそこに居たくない、耐え続けてきた思いが爆発したかのようにその衝動に身を任せるように駆けだしていった。もう一寸先も見える事が無い程の暗闇を駆けて行く。
―――何処に行ったんだ、早く探せ。
息が詰まる、足が止まりそうになる、全身が凍り付くかのような感覚が全身を縛り上げていく。そんな中、突如として足元が瓦解して重力に引かれるがままに落下していく感覚があった。もしかしたらこのまま自分は死ぬのではないかという恐怖があった、でも同時に深い深い安堵も存在した。もう怖い思いなんてしなくていいんだ、自分はもう何も怯える必要なんてないんだと深い安堵と共に身体を引っ張る疲労にも似たそれに身を委ねた。
―――……、……!?―――、―――!!!
―――……!?……、―――!!!
深い深い闇の中を揺蕩い続ける身体は不意に何かに抱き止められたかのような感触があった。それは暖かな心地良さと安心感を齎してくれた。それに身を預けながらその心地良さに酔ってしまう、此処が天国なのだろうかと誤認するかのような温かさがあった、そして時々優しくて甘い頭を撫でられる。自分が望んでいた物があった。そんな安らぎの中ならば瞳を開けても良いのではと思いながら瞳を開けるとそこには此方を見つめている一人の少年がそこにいた。
「あっ目、目を覚ました!?ちょっちょっと待っててよ、其のままで良いからというかちゃんとじっとしてるんだぞ!?師匠ぉ~校長~目を覚ましたぁ~!!」
覚醒を待ちわびていたかのように大慌てで駆け出していく少年に呆気に取られていると次々と人が駆け寄ってくる。周囲を見回してみると小綺麗な内装に良く分からない機械が何かの表示をしている、首を傾げながら戻って来た少年に尋ねるのであった。
「あ、あの……此処は……?」
「覚えてない、君山道で傷だらけで倒れこんでたんだよ」
正しく偶然且つ奇跡とも言える出会いだった。その日、山間部にて行われる訓練に望んでいた龍牙と師であるギャングオルカ。ギャングオルカの一撃でぶっ飛ばされて崖下に落とされて痛みの中で歯を食いしばっていると隣には僅かに出来ている血だまりの中で倒れこんでいる少女の姿があったのだから。
『えっ、ええええええッッ!?師匠、師匠大変です女の子が大怪我してます!!!』
『な、なんだとぉ!?今行く……これはまずいな、訓練は中止だ急いで病院に連れて行くぞ!!俺は車を回す、お前は応急処置だ出来るな!?』
『はいばっちゃんに叩きこまれてます!!』
二人は大層驚きながらも崖下にて大怪我をしていた少女を救助、龍牙はその場で応急処置をしている間にオルカが車を回し彼女をヒーロー御用達の大病院へと担ぎこんだ。医者の話ではかなり危険な状態だったらしく、崖から落ちた事で骨折に加えて身体に合った傷が開いた出血も合わさって大量出血死が迫っていたとの事。実際こうして目覚めたのも奇跡に近いとの事。
「龍牙の処置が的確だったから確り止血出来たのも大きい、出なければ確実な失血死だっただろうな」
「ばっちゃんの教え方が良かったですから」
「そのリカバリーガール自身が君のお手柄だと言ってたんだから大人しく受け取っておきなって」
自分の視線の先で
「大丈夫、俺達がいる限りもう君は傷つかないよ。頼もしいヒーローが付いてるからね」
柔らかで暖かな笑みは胸の中にあった不安と疑心を解きながら素直な自分の本心を出せるように導いた。
「個性でか……そうか、俺と同じなんだな壊理」
「同じ……えっ?」
「俺も捨てられた身だからさ」
少女、壊理は自らの個性によって母によって捨てられた。彼女は引き取られた先にて日常的な暴力などを受け続けながら生きてきた、その理由となっているのが彼女の個性だった。壊理の個性は両親とは全く異なっている突然変異系の個性、巻き戻し。触れた対象の構造を過去の構造へと直す個性。以前は生物だけだったが成長と共に無機物にも作用するようになった個性、がこれによって母親からは捨てられ引き取られた先でも酷い日常を送り続けてきた。
そんな壊理に歩み寄ったのは同じように親から見捨てられてしまった龍牙。彼は個性を発動させながら彼女を見た、壊理は突然の龍牙の変貌に驚きながらもそれを見据えていた。自罰的に笑いながらも龍牙は言う。
「壊理ちゃん、確かに君の個性は凄い力だ。暴走してしまったのは使い方が分からなかったからだろ、ならこれからゆっくり学んでいけばいい。それに君の個性は本質は戻す事じゃない、癒す事だ」
「癒す……?」
「そう。君の力なら大怪我をした人やもう手の施しようがない人を助けられる、多くの人たちに未来を生きる時間を戻してあげる事が出来る」
「……初めて、そんな風に言われたの」
「なら俺と一緒にその……頑張らない?」
「―――頑張る……!」
壊理にとって龍牙の言葉がどれだけ彼女の中に合った価値観を破壊して新しいものを与えただろうか、彼女の個性を使い続ければ対象は無へと帰って消滅する。破壊よりも性質が凶悪な物だと言われ続けてきたのに無へと戻すのではなく未来へと進む力だと表現された事は正しく祝福に福音だった。
「よし頑張れ壊理、こっちだ」
「ま、待って……うん頑張る!」
壊理はその日から涙を見せなくなった、笑顔と共に歩み龍牙の隣にいるようになった。
「おやつにアップルパイを作ってみたんだけど食べる?」
「食べるっ……!」
そんな壊理との日常は龍牙にも好ましい変化を齎した。境遇も近く歳も近い事も関係しているのか龍牙もまたよく笑い社交性が良くなっている事が保護者らから見ても分かった。そして壊理の個性の訓練には龍牙の怪我を治すのも含まれているので壊理も龍牙と共に訓練をするようになり、何時しか彼女もヒーローを志すようになっていた。
「いこっ龍牙、今日から高校生。頑張ろうね」
「ああ、頑張ろうな壊理」
だが彼女には何時しか試練の時が訪れるだろう、彼女の過去が今に手を伸ばし彼女を犯そうとするだろう。その為に龍牙は力を振るう、家族として彼女を守る為に……。
「何時か黒鏡 壊理って名乗れたらいいのに……」
「どした壊理、緊張しちゃった」
「う、ううん気にしないで!?」
……何か凄いムズムズする、何でだろうか……。
活動報告にて番外編の募集をしてますのでお時間があれば覗いてみてください。
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