僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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現場で活動する黒龍

「……主犯と思われるヴィランを確認。8本腕、腕部巨大、刃腕、長腕の4名確認。指定警戒ヴィランチーム、アームズだと推測。これより帰投する」

 

「……んッ?」

「おい如何した」

「今、なんか鏡に変な物が見えたような……気のせいか?」

 

「戻りました。ビルを占拠してるのは指定警戒ヴィランチームのアームズだと推測されます、全員の特徴が腕に関する個性でしたし資料とも一致します」

「そうか、お前は次に行け。王蛇、一応言っておくが殺すな」

「分かってるさオルカ、任せておけ……ははっさあ祭りの始まりだ……」

 

職場体験初日、ギャングオルカの事務所にヴィラン出現による出動要請が入った。当然のようにリュウガもそれに駆り出され自身の能力を活用した情報収集を行うように伝えられた。リュウガは物陰に隠れながらも個性を発動させながら、ビルのガラスへと飛び込んでいった。ガラスへと飛び込んだリュウガはそれへと溶け込んでいくかのように虚構の鏡合わせのように反転している世界へと入りこんでビルの中を駆けていく。

 

これがリュウガとしての個性として最も異常とも言われる能力、鏡だけに限らずガラスや窓など姿が映るものであれば自由に行き来することが可能であるという余りに常識離れした超人社会でも異常と称される能力。根津をして人知を超えているリュウガの固有能力と称する力。

 

鏡の世界、リュウガはそれをミラーワールドと称しており、そこは完璧に現実の世界と全く同じ。強いて言うならばそこにいるのはリュウガのみで他の生命体は存在しておらず、全ての物が鏡に映るように反転している事がその世界の特徴。そしてこの能力を使用すれば、ミラーワールドから現実の世界を覗き見る事が出来、安全に情報収集などを行い、ヴィランの現在位置や人質の位置などを正確に割り出す事が出来る。

 

「はぁはぁはぁっ……」

「大丈夫かいリュウガ君?疲れたなら少しぐらい……」

「いえ、大丈夫です……!まだ、やるべきことが残ってるので……!!」

 

コングが膝を付きながら荒い息をしている彼を心配する、明らかなほどに彼は疲労している。ミラーワールドに入るだけならば、彼に負担は皆無に近いのだがその中で長時間活動するのは相当身体に負荷がかかるらしくリュウガは次第に疲労を募らせていた。それでもリュウガは休むことなくミラーワールドへと入り、不測の事態に備える為に待機する事になった。

 

「シャ、シャチョー……リュウガ君の疲弊の様子は明らかに異常ですよ。これで5件目の出動ですけど、既に彼は限界が近いように思えるんですが……」

「当然だ。リュウガのあの能力にも代償がある、これはあいつがそれに耐える為の訓練でもある」

 

ミラーワールドでの活動、リュウガにも限界が存在しており今のところの限界は最長で5分程度。それ以上残ろうとすると体力を大幅に持っていかれていってしまう。最終的にはミラーワールドから弾き出されてしまうのだが、全身疲労で一日はまともに動けなくなってしまう事が分かっている。既にリュウガがミラーワールドでの活動を行って累計で15分を超えているだろうか、一体どれだけの疲労がリュウガに蓄積されている事だろうか……。

 

コングがリュウガへの心配を募らせている中、包囲されていたビルから王蛇がゆっくりと出てきた。頬についている返り血が内部であった戦いを物語っているかのよう、王蛇は笑いながら無事に鎮圧して事件を収束された事を報告する。

 

「生きてるんだろうな……」

「半殺しで止めておいてある、まあ腕と足を全員一本ずつ折ってはある。今頃激痛でもがき苦しんでる頃だ」

「うへぇっ……」

 

恐らく王蛇の語り方からして単純に腕と足を折っただけではないだろう、この後確認しに行く自分達の事も考えて欲しい物だ。余りにも凄惨過ぎる現場だとハッキリ言って自分も気分が悪くなりかねない、そう思っている王蛇が悪そうな笑みを浮かべながらこちらを見る。

 

「何甘い事考えてんだ、あのヴィラン共は善良な一般市民を人質に取った上に数人の骨を折ってやがったクズだぞ。そんな連中に遠慮なんかいらねぇだろ、これ以降同じことをするならば同じかそれ以上の事をされるっていい教訓になった事だろうよ」

「……ヴィラン顔負けのアンタがそれ言うかよ」

「聞こえねぇなぁ……じゃあなオルカ、俺は飯食いにいって来る」

「はぁっ……勝手にしろ。面倒事は起こすなよ」

「わぁってる。面倒な事になるとテメェがうるせぇからな……」

 

そう言うと王蛇はバイクに乗るとそのまま去っていってしまう、ギャングオルカはそれを黙って見送ると溜息を吐きながら現場確認の為に向かう警官に護衛としてサイドキックを数名付けて行かせる。

 

「シャチョー、前々から聞きたかったんですけど……なんで王蛇はシャチョーだけには従うんですか」

「あいつとは昔からの腐れ縁でな……対等な関係だったからだと思う」

 

まさかの幼馴染、という訳ではないらしい出がそれでもギャングオルカと王蛇は同期であるらしい。そのせいなのかギャングオルカは王蛇のかじ取りの仕方を心得ており、王蛇もギャングオルカに下手に逆らうと面倒事になると理解しているから一応従っているらしい。

 

「よくまああんなのと付き合ってられますね……」

「俺以外にあいつとまともに話す奴もおらんかったからな……」

「そりゃそうでしょあんな奴と……」

「も、戻りましった……」

 

近場の鏡からリュウガが姿を現すが既に言葉に込める力もないのか、ヘロヘロになった状態で這い出てきた。鏡から出るとすぐさま個性が解除されてしまったのか元の姿に戻ってしまった。ミラーワールドで活動するだけで殆どの力を使い果たしてしまい、もうまともに立っているのもやっとなようにも見える。

 

「お前はもう邪魔になる、事務所に戻り事務作業の説明でも受けておけ」

「ちょっとシャチョーそんな言い方ないでしょ!?こんなに頑張ってくれたリュウガ君に対して……」

「解りました、この後事務所に戻るサイドキックの皆さんと一緒に戻ります……」

 

そう言うと移動用の車両に乗り込んだリュウガはぐったりしながらも端末を開きながら自身の活動報告をレポートに書き込んでいく。コングはギャングオルカの指導方針に嫌な顔一つせずに従っているリュウガに一種の畏敬の念を覚えつつも、厳しすぎるだろとギャングオルカに複雑そうな視線を送るのであった。




ギャングオルカの内心。

「(すまん龍牙、すまん……!!本当は、褒めてやりたいんだ、だけどすまん……!!)」

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