僕のヒーローアカデミア~ビヨンド・ザ・リュウガ~   作:魔女っ子アルト姫

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保須でパトロールをする黒龍

「という訳で君たち二人は俺が受け持つ事になったんだけど……アクセル君、君に聞いておきたいのはお兄さんがやられた事で相手に復讐したいとか思ってないよね」

 

保須市での活動チームの振り分けの結果、リュウガはコングがチームリーダーを務めるチームに入る事になった。チームメイトはインゲニウム・アクセルこと飯田になる事になった。ギャングオルカの采配でこのようなチームになったのだが、なんだかんだでパワーコングは事務所内では未だに新人扱いを受けているが、サイドキック内では王蛇を除外した場合のランキングでは上から6番目に数えられる実力者。そんな彼が飯田にある事を聞いた。それを聞いた飯田は少しだけ顔を曇らせるが、少しだけ深呼吸をすると答えた。

 

「何も思わないと言ったら嘘になります。兄の敵を討ちたい、と言えばそう答えるでしょう。ですが仮に俺がヒーロー殺しを討ったとしても兄は喜んではくれません、寧ろ私情で先走って危険を冒した俺を叱咤します」

「良く分かってるじゃないか」

「復讐はヒーローがしてはいけない行為の一つだと思っています、俺がすべき事なのは―――兄さんが守りたいと強く願った人たちを俺が守る事です!!」

 

そんな風に強く答えるアクセルにコングは背中を強く叩きながらそんな意気込みを大きく称賛する。まだまだ若さ故の真っすぐすぎる面も見えるが、だからこそいい。真っ直ぐな強い思いなほど崩しにくい物になっていく、自分はそれを上手く導いてその強さを更なるものに昇華させてあげる事。

 

「では―――これより保須市でのパトロール活動を行う、アクセルには言うまでもないがパトロールはヒーロー活動としては基本にあたる。ヴィランへの警告並びに市民の皆様に自分達が居るからという安心感を与える重要な役目だ。故に目を光らせる事と笑顔を忘れずに!っとアクセルには言う必要なかったかな?」

「そうか、笑顔が必要ならばヘルメットは外さなければ……!!では脇に抱えて笑顔でいます!!」

「真面目か!!?」

 

そんなこんなでパワーコングチームの保須市でのパトロールが行われる事になったのである。矢張りヒーロー殺しの影響で同じようにパトロールを行っているヒーロー達は酷くピリピリしている。

 

「コングさん、一つ聞いていいですか」

「何だいリュウガ君」

「あの……今回王蛇って何をするんですか……?」

 

リュウガが一番気になっているのは目を付けられてしまった王蛇、僅かな会話と軽い手合わせしかしていないがそれだけでも王蛇の人柄や行動指針なんかは完全に理解出来ているつもり。既にヴィランが事件を起こしている現場なら良いだろうが、今回のようにヴィランがどこに潜伏しているのか分からない今回の場合は一番扱いに困るのでは……とリュウガは思っている。

 

「王蛇ならほれっそこでパトロールしてる」

「え"っ」

 

視線の先では気だるげにしつつも確りとパトロールを行っている王蛇の姿があった。どちらかと言ったら目的もないのに買い物に来てしまった感があるのだが……視線は細かく裏路地やらヴィランが狙いそうな所にピンポイントに向けられているのでかなり確りとパトロールを行っているのが分かる。

 

「あの人もヒーローなのかリュウガ君」

「ああうん……ギャングオルカのサイドキックなんだけど……あの人パトロールするんだ……」

「どっちかと言ったら獲物を探してる蛇ってかな……」

「ああ成程……パトロールじゃなく、索敵なのね……」

 

そう言われて素直に納得する。下劣非道上等の外道ヒーロー・王蛇、そんな風に呼ばれる彼だがなんだかんだでヒーローとしての活動自体は確りしている。まあその内容の全ては自身のストレスを合法的にヴィランで発散する為に帰結するのだが……。結果的に平和に貢献するならばそれも善とされるのだから困ったものである。

 

「何か起きたとしても多分大丈夫だろう、あれなら何が起きたとしても……」

「キャアアアアアッ!!!」

 

その時だった、大通りに巨大なヴィランが出現した。全身が鈍い銀色に輝くような肌をしつつも頭部にはサイを模している巨大な角を持った余りにも巨漢なヴィランが車をひっくり返して大暴れを行っていた。コングはそちらに身体を向けた瞬間、そばを通り過ぎる紫色の影を見た。それは―――個性を発動させ、戦闘態勢に入った王蛇の姿だった。王蛇はそのヴィランの前に立つと首を回しながら声を出す。

 

「ぁぁっ~……漸く相手が見つかった……」

「何だお前はぁ……!!まあいい、どんな奴だ折るがこのライノ様がぶっ潰してやるだけだ!!」

「いいぜぇっお前みたいに血気盛んな奴とやるのは嫌いじゃねぇ……来いよ」

 

ライノ、そう名乗るヴィランは凄まじい勢いで突進を行い距離を詰めていく。3メートル近い巨体での突進、それだけでも十分過ぎる武器になるのに装着していると思われるアーマーが更なる凶悪な凶器へと変貌させる。途中に連なる車などは容易く吹き飛ばしながら粉砕する異常な力、それを見ても王蛇は焦る所か益々嬉しそうな声を漏らしながら突進してくるライノを見つめ続ける。

 

「フッはぁっ!」

「ぐわぁっ!?」

 

軽く跳躍すると王蛇はライノの首筋に正確にキックを叩きこみ地面へとめり込ませる。突進の勢いのままに地面を削りながらも漸く体勢を立て直すライノだが、怒り心頭と言った様子で更に勢いを付けて王蛇へと突進を繰り返していく。だがそんな時である、再び迎え撃とうとした王蛇が何かに吹き飛ばされた。

 

「なんだぁ……新しい客かぁ……?」

 

そんな風に鎌首を擡げた王蛇が目にしたのは、脳が丸見えになっているヴィランだった。それは王蛇にも目もくれずにリュウガ目掛けて一気に襲い掛かってきた。

 

「こっちに来る!?」

「くそっヒーロー殺しの事でも大変なのに、面倒事が多いな!!気を付けろリュウガ君にアクセル!!」

「「はいっ!!」」

 

長い、保須の一日が始まろうとしていた。


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